ネクセラファーマ株式会社(東証プライム・4565)は2026年10月22日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬vamoroloneについて、韓国食品医薬品安全処(MFDS)に製造販売承認申請を行ったと発表した。

申請の事実関係

同社の発表によると、vamoroloneは韓国においてすでに希少疾病用医薬品(Orphan Drug Designation、ODD)および優先審査制度(Global Innovative Products on Fast Track、GIFT)の指定を取得している。この指定取得は2026年6月2日に発表されていた。GIFTは、生命を脅かす重篤な疾患や希少疾患を対象とする革新的医薬品の審査を迅速化する制度で、同社は本剤の審査期間の短縮と患者への早期アクセスを支援することが期待されるとしている。

スケジュールについて同社は、韓国における2027年中の製造販売承認取得、2028年中の上市を目指すとしている。業績への影響については、2026年12月期の通期連結業績への影響はないが、中長期的に事業収益および企業価値の向上に寄与するものと考えている、と記している。

子会社Nxera Pharma Korea Co., Ltd.の代表取締役社長であるMinBok Lee氏は、今回の申請を「韓国のDMD患者とその家族に新たな治療選択肢を届けるための重要なマイルストン」と位置づけ、ODDおよびGIFTの指定取得に続いて計画どおりに承認申請という節目を迎えられたとコメントしている。同氏はまた、DMDが長期的な治療を必要とする重篤かつ進行性の疾患であり、vamoroloneが長期的な安全性プロファイルにおいて優位性が期待される差別化された治療選択肢を提供しうる、との見方を示している。

権利取得から申請までの経緯

同社は2026年1月に、サンセラ・ファーマシューティカルズ・ホールディングから、日本、韓国、オーストラリアおよびニュージーランドにおけるvamoroloneの開発、製造および商業化に関する独占的権利を取得した。対象地域における承認取得に向けた活動、ならびに商業化および製造活動は同社が主導している。vamoroloneは米国、欧州連合、英国および中国ではDMD治療薬として承認・販売されている。

vamoroloneは解離型コルチコステロイドに分類される。グルココルチコイド受容体に選択的に結合し、NF-κBを介した遺伝子転写の抑制を通じて抗炎症作用を発揮する一方、他の遺伝子に対するトランスアクチベーションは抑制されるよう設計されている。また11-β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)の基質ではない。これらの薬理学的特性により、従来の長期コルチコステロイド療法に伴う全身性副作用の低減を図りつつ、抗炎症効果の維持を目指して開発された。

フェーズ2b試験(VISION-DMD試験)では主要評価項目を達成し、24週時点でプラセボに対して床からの立ち上がり速度(TTSTAND velocity)を有意に改善した(p=0.002)。主な副作用はクッシング様徴候、嘔吐、体重増加、食欲増加、易刺激性で、多くは軽度から中等度だった。最長8年間の長期投与データは2026年3月のMuscular Dystrophy Association(MDA)Clinical & Scientific Conferenceで発表され、傾向スコアを用いたマッチド解析において、標準治療コルチコステロイドと同等の持続的有効性を示すとともに、deflazacort投与コホートと比較して椎体骨折の発現率が低く(8.1%対41.9%、p=0.0082)、従来のコルチコステロイドと比べ平均身長で12.17cmの優位性(p<0.0001)、白内障の発現率も低く(p=0.015)、緑内障の発現は認められなかったと報告されている。

何が変わるのか

DMDはX染色体連鎖性の遺伝性希少疾患で、ほぼ男性のみに発症する。炎症が筋肉の線維化を引き起こし、進行性の筋変性および筋力低下として現れ、歩行能力の喪失、自力摂食の喪失、補助換気の開始、心筋症の発症といった症状をたどる。呼吸不全および/または心不全により、平均余命は40歳未満にまで短縮する。長期の治療が前提となる疾患であるだけに、有効性だけでなく長期投与時の安全性プロファイルが治療選択の論点になる。骨折率、身長、白内障といった指標での比較データが提示されていることは、この文脈に沿ったものだ。

今回の申請は、同社が2026年1月に地域権を取得してから、同年6月のODD・GIFT指定、10月の申請という順で進んだ案件である。承認が2027年、上市が2028年という自社計画どおりに進めば、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドを対象とする権利のうち、韓国が先行して収益化の段階に入ることになる。同社は東京、大阪、ロンドン、ケンブリッジ、バーゼル、ソウルに主要拠点を持ち、韓国では子会社Nxera Pharma Koreaが規制当局対応を担う体制をとっている。アジア太平洋地域での商業化を掲げる同社にとって、この体制が実際に承認取得まで機能するかを示す事例となる。