何が起きたか

Heartseed株式会社(代表取締役社長・福田惠一、コード:219A、東証グロース市場)は2026年10月27日、同社が開発する心筋再生医療HS-005に関する日本国内の治験(EMERALD試験)について、虚血性心疾患を原疾患とする重症心不全に対する第1例目の投与が実施されたと公表した。あわせて、投与後4週間のデータを基に、独立安全性評価委員会が同群における治験継続を承認したことも明らかにした。

HS-005は、他家iPS細胞由来の心筋球を、カテーテル等を用いた方法で投与する製品である。今回の発表で焦点となったのは、この投与方法を用いた第1/2相企業治験における、虚血性心疾患群の最初の1例である。

発表によれば、EMERALD試験は虚血性心疾患群および拡張型心筋症群の重症心不全患者を対象とし、それぞれ7名、合計14名を組み入れる設計となっている。試験の目的は、本剤投与における安全性および有効性を確認することとされている。

なお同社は、本件に関して2026年12月期業績予想の修正はないとしている。

これまでの経緯

今回のリリースでは、EMERALD試験のもう一方の対象群である拡張型心筋症群の進捗にも触れられている。拡張型心筋症群では、第1例目の組み入れ後に独立安全性評価委員会の承認を経ており、その時点の内容は2026年6月12日付の「心筋再生医療HS-005(カテーテル投与)の第1/2相企業治験における第1例目実施に関するお知らせ」で公表されている。その後、同群では複数症例の組み入れが完了しているという。

つまり、カテーテル投与によるHS-005の第1/2相治験は、まず拡張型心筋症群で第1例目から複数症例へと段階を進め、今回、虚血性心疾患群でも第1例目の投与に到達したという流れになる。2つの対象群それぞれについて、第1例目の投与後に独立安全性評価委員会が評価を行い、その承認を経て次の段階に進むという手順が踏まれていることが、今回と6月12日付の2つの発表から読み取れる。

今回の虚血性心疾患群の判断は、投与後4週間のデータを基になされたと明記されている。評価の根拠となった観察期間が具体的に示されている点は、進捗の確認材料として押さえておきたいところだ。

業界にとっての意味

今回の発表が示しているのは、HS-005のカテーテル投与による治験が、設計上の2つの対象群の双方で動き出したという事実である。合計14名という規模の試験において、虚血性心疾患群7名の枠の最初の1例が投与され、かつ独立した委員会が継続を認めたことは、試験全体が次の組み入れ段階へ進む前提条件が整ったことを意味する。

重症心不全の原因疾患は一様ではない。EMERALD試験が虚血性心疾患群と拡張型心筋症群を分けて各7名ずつ設定していることは、原疾患の異なる患者群それぞれで安全性と有効性を確かめる構成になっていることを示す。虚血性心疾患群で第1例目が実施されたことにより、この2群構成の試験が、片方だけでなく両方で実際のデータ取得段階に入った。

また、各群で第1例目の後に独立安全性評価委員会の判断を挟むという運用は、他家iPS細胞由来の細胞製品をカテーテル等で投与するという手法において、段階を踏んだ安全性確認が組み込まれていることを示している。拡張型心筋症群では、この手順を経たうえで複数症例の組み入れが完了している。虚血性心疾患群も同じ関門を通過した形だ。

一方で、今回公表されたのは第1例目の投与実施と、投与後4週間のデータに基づく治験継続の承認までである。有効性に関する結果や、虚血性心疾患群における今後の組み入れ時期については、今回の資料には記載がない。業績面についても、同社は2026年12月期業績予想の修正はないと明示している。現時点で確認できるのは、試験が所定の手順に沿って前進したという一点であり、それ以上の評価は今後の開示を待つことになる。