何が起きたか

アステラス製薬は2026年10月27日、閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状(ホットフラッシュおよび発汗、VMS)の治療薬として開発中のVEOZA™(フェゾリネタント45 mg)について、中国国家薬品監督管理局(NMPA)の医薬品評価センター(CDE)から新薬承認申請(NDA)を受理した旨の通知を受領したと発表した。同社の代表取締役社長CEOは岡村直樹氏。

フェゾリネタントは非ホルモンの選択的ニューロキニン3(NK3)受容体拮抗薬で、体温調節に関与するKNDy(キスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィン)ニューロンに結合するニューロキニンB(NKB)をブロックするよう設計されている。この作用機序により、閉経に伴う中等度から重度のVMSの回数や重症度を軽減するとされる。現在、世界50カ国で承認されているが、中国では現時点で承認されていない。

本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2027年3月)連結業績予想に織り込み済みとしている。

申請の根拠となったデータ

今回のNDA受理は、グローバル第III相BRIGHT SKY™プログラム、中国で新たに実施したブリッジング試験、およびこれまで中国で実施した臨床試験から得られたデータに基づく。これらの試験を通じて、フェゾリネタントはおおむね良好な忍容性を示し、最も一般的な有害事象は頭痛、腹痛、下痢、不眠症および腰痛だった。

BRIGHT SKY™プログラムのうち、ピボタル試験であるSKYLIGHT 1™(NCT04003155)とSKYLIGHT 2™(NCT04003142)は、中等度から重度のVMSを有する女性1,000人以上を対象に、欧州、米国およびカナダの180以上の施設で実施された。いずれも投与後12週の二重盲検プラセボ対照期間に続き、40週の継続投与期間を設けている。長期安全性の評価を目的としたSKYLIGHT 4™(NCT04003389)は、同じく欧州、米国、カナダの180以上の施設で、VMSを有する1,800人以上の女性患者を対象とする52週の二重盲検プラセボ対照試験である。

中国を含むアジアでのデータも積み上げられている。中国で実施された第II相二重盲検無作為化プラセボ対照12週間継続投与試験(NCT06812754)は、閉経に伴う中等度から重度のVMSを有する中国の女性150名を、フェゾリネタント45 mg投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付け、12週間における中等度から重度のホットフラッシュおよび寝汗の発生回数を主要評価項目として有効性と安全性を比較した。

MOONLIGHT 1™試験(2693-CL-0305)は、フェゾリネタント30 mgを評価した無作為化プラセボ対照の第III相試験で、中国、台湾、韓国の女性302名が登録され、12週間のプラセボ対照治療期間と12週間の実薬継続投与期間で構成された。MOONLIGHT 3™試験(2693-CL-0307)は、中国の女性150名を登録した単群多施設共同の第III相長期安全性試験で、30 mgを最長52週間投与した後の安全性および忍容性を評価した。

背景と意味

ホットフラッシュや寝汗を特徴とするVMSは閉経に伴う一般的な症状であり、睡眠や日常生活、さらにはQOLに大きな影響を及ぼす可能性があるとされる。中国を含む東アジア地域では、40歳から65歳までの女性の55%が中等度から重度のVMSを経験していると報告されており、アステラス製薬はこの負担の大きさが、より有効性の高い治療選択肢に対する継続的なニーズを示していると説明している。

今回の受理は承認そのものではなく、審査の入口に立ったという段階にとどまる。ただし、すでに50カ国で承認されている製品が、世界最大級の人口規模を持つ市場で審査対象となった意味は小さくない。注目されるのは、グローバル第III相のデータに加え、中国で新たに実施したブリッジング試験と、中国・台湾・韓国の患者を含む一連の試験を積み重ねたうえで申請に至っている点である。東アジアの患者集団に固有のデータを揃える開発設計が、中国でのNDA受理につながった形だ。

また、フェゾリネタントは非ホルモンの作用機序を持つ薬剤であり、KNDyニューロンへのNKBの結合を阻害することでVMSの頻度と重症度の低減を目指している。アステラス製薬は、ウィメンズヘルスへの取り組みを推進し、閉経に伴う中等度から重度のVMSに対するエビデンスに基づく治療選択肢へのアクセス向上に努めるとしている。同社はがん、眼科・泌尿器疾患、免疫などと並ぶ領域としてウィメンズヘルスを掲げており、今回の申請はその方針に沿った動きといえる。

業績面については、同社が通期(2027年3月)連結業績予想に織り込み済みと明示しており、受理の時点で数値の修正要因にはならない。今後の焦点は、CDEによる審査の進展と中国での承認可否に移る。