田辺ファーマ株式会社は10月29日、ロンカスツキシマブテシリン(MT-2111)について、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を適応症として厚生労働省に医薬品製造販売承認申請を行った。あわせて10月22日、日本新薬株式会社と本剤の日本における独占的販売に関するサブライセンス契約を締結した。

何が起きたか

申請を行ったのは田辺ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役CEO:原田明久)。申請日は10月29日、適応症はr/r DLBCLである。

サブライセンス契約の相手は日本新薬株式会社(本社:京都市南区、代表取締役社長:中井亨)。締結日は10月22日で、内容は本剤の日本における独占的販売に関するものだ。なお、今回の承認申請に係る本剤の開発および承認取得については、引き続き田辺ファーマが推進するとしている。つまり、開発・承認取得は田辺ファーマ、国内販売は日本新薬という役割分担になる。

本剤はファースト・イン・クラスの抗CD19抗体薬物複合体(ADC)。ADCT社製品名はZYNLONTA®、一般名はloncastuximab tesirine-lpylである。がん細胞の細胞膜上に発現するCD19に結合すると細胞内に取り込まれ、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)の遊離によって抗腫瘍効果が期待できる薬剤と説明されている。

これまでの経緯

本剤を開発したのはスイス・ローザンヌに本社を置くADC Therapeutics SA(ADCT社)。同社は2021年4月、米国食品医薬品局(FDA)から、2つ以上の全身療法を受けた成人のr/r DLBCL患者に対する単剤療法として米国で迅速承認を取得している。米国の承認対象には、DLBCL・非特定型(DLBCL, NOS)、低悪性度リンパ腫からの形質転換DLBCL、高悪性度B細胞リンパ腫が含まれる。

米国の承認は海外第2相試験の成績に基づく。同試験には、1次治療に難治の患者、前治療すべてに難治の患者、ダブルヒット/トリプルヒットのDLBCL患者、本剤投与前に造血幹細胞移植およびCD19を標的としたCAR-T療法を受けた患者など、広範な患者が組み入れられ、前治療歴の中央値は3だった。この適応は、FDAでは迅速承認、EUでは条件付き承認であり、検証試験における臨床的ベネフィットの評価が条件となっている。

田辺ファーマは2022年1月、本剤の日本における開発および商業化に関するライセンス契約をADCT社と締結した。今回の国内申請は、日本人のr/r DLBCLを対象としたMT-2111-A-101試験の結果および海外試験結果に基づくものである。

MT-2111-A-101試験は、国内多施設共同、オープンラベル、単群の第1/2相試験で、第1相パートと第2相パートで構成される。第1相パートでは、2つ以上の全身療法を受けた成人のr/r DLBCL患者を対象に、単剤療法における忍容性、安全性および薬物動態を評価。第2相パートでは同じ患者集団を対象に有効性および安全性を評価した。第2相パートの主要評価項目は独立中央判定による奏効割合で、副次評価項目には完全奏効割合、奏効期間、無増悪生存期間などが含まれる。第2相パートには43名の患者が登録された。

この契約が意味するもの

今回の発表で注目されるのは、承認申請と同じタイミングで国内販売を他社に委ねる形を選んだ点である。田辺ファーマは、本剤の国内での承認申請を機に、日本における本剤の価値最大化と、承認後の患者への着実な提供を見据えて日本新薬とサブライセンス契約を締結したと説明している。狙いとして挙げているのは、日本新薬が有する血液がん領域における知見や事業基盤の活用であり、これによって本剤をより多くの患者に届けることをめざすとしている。

もう一つ、同社が明示しているのが財務・戦略面での効果だ。本契約は「田辺ファーマの財務面および戦略面における柔軟性の向上にもつながる」と位置づけられている。自社で販売体制を構築するのではなく、領域に強みを持つ企業に販売を任せることで、開発・承認取得という上流に資源を集中させる構図である。

田辺ファーマは「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」をMISSIONに掲げ、希少疾患を含むアンメット・メディカル・ニーズに応える医薬品を、自社開発や他社等とのパートナリングを通して届けることをめざすとしている。1678年の創業以来340年以上の歴史を持つ日本を事業基盤とする製薬企業であり、今回のケースは、導入品について「開発は自社、販売はパートナー」という組み合わせを実際に選択した例となる。

なお、ZYNLONTA®は現在、他の抗悪性腫瘍薬との併用療法で、他のB細胞性リンパ腫および早期治療ラインの治療選択肢としても開発が進められている。国内で承認された場合、その後の適応拡大の動きも含め、両社の協業範囲がどう展開するかが論点となる。