何が決まったか
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は2026年10月28日(令和8年10月28日)、ゾルゲンスマ点滴静注について5年間のデータ収集終了を受けて費用対効果評価の分析を再開する方針を示したほか、新規医療機器・臨床検査の保険適用、医療経済実態調査および訪問看護経営実態調査の実施検討、歯科用貴金属価格の随時改定を審議・報告した。
事実:ゾルゲンスマの分析再開
ゾルゲンスマ点滴静注は、令和2年5月に中医協総会で費用対効果評価の対象品目「H3(著しく保険償還価格が高いもの)」に指定された。適応である脊髄性筋萎縮症は指定難病だが、著しく保険償還価格が高いものとして総会が指定したものだ。
令和3年10月の費用対効果評価専門組織では、製造販売業者が提出した分析データ等および公的分析結果について「一定の科学的妥当性はある」としつつ、薬事承認時等のデータでは長期有効性に関するデータが不足しているとして、必要なデータ収集を行うため分析中断とする決定案が策定された。同年12月には追加データの収集計画案が策定され、既存の海外臨床試験と同程度以上の日本人長期データが必要との考えから、年間10〜20例、5年間のデータを収集するとして、令和8年5月までのデータ収集が計画された。分析中断は令和4年1月の中医協総会で承認され、以降、製造販売業者は年1回、専門組織で進捗を報告してきた。
データ収集の終了に伴い、令和8年9月25日に費用対効果評価専門組織が開催され、分析再開に係る決定案が策定された。分析枠組みの決定から時間が経過していることを踏まえ、分析前協議からの再開とし、企業分析に係る期間は9か月(分析前協議にかかる期間3か月を含む)、公的分析(企業分析のレビュー)に係る期間は3か月とされた。
事実:医療機器・臨床検査の保険適用
医療機器では、日本ベクトン・ディッキンソンの「PleurXドレナージカテーテル」が令和8年12月1日収載予定として示された。製品名「PleurXドレナージカテーテル」は区分C2(新機能・新技術)で償還価格53,600円、外国平均価格との比0.49。製品名「PleurX吸引システム」は区分C1(新機能)で5,040円、同比0.45。いずれも原価計算方式で、補正加算等はない。
使用目的は、胸腔または腹腔に留置し、原疾患に対する治療抵抗性で再発性および症候性の胸水・腹水を長期にわたり反復してドレナージするための機器で、成人のみを適応とする。関連技術料は「J002 ドレーン法(ドレナージ)(1日につき)2 その他のもの」25点、準用技術料は「K496-5 経皮的膿胸ドレナージ術」5,400点。推定適用患者数(ピーク時・予測年度10年度)は23,774人、本医療機器使用患者数は4,755人、予測販売金額はカテーテル2.55億円、吸入システム4.05億円とされ、ピーク時の市場規模予測が50億円未満であることから費用対効果評価には該当しない。
特定保険医療材料には「249 胸水・腹水ドレナージカテーテル(長期留置型)」の定義が追加され、カテーテルと吸引システムの2区分に分けられる。留意事項案では、関連学会の定める適正使用指針を遵守した場合に限り算定でき、医学的必要性をレセプト摘要欄に記載すること、一連の治療において患者1人につきドレナージカテーテルは1個を限度とすることが示された。吸引システムは在宅医療での交換が想定され、材料価格基準の別表Ⅰ・別表Ⅷにも追加される。
臨床検査では、令和8年11月1日収載予定として「ベンタナ OptiView FOLR1(FOLR1-2.1)」(免疫組織化学染色法)がE3(新項目)で示され、参考点数は「N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製 6 ALK融合タンパク」2,700点。
事実:2つの経営調査と歯科用貴金属
第26回医療経済実態調査について、調査設計に係る議論のため調査実施小委員会を開催し、調査項目の見直しと有効回答率の向上策を論点に議論を開始する案が示された。スケジュール案は、令和8年10月から小委で検討、令和9年6〜7月が調査月、令和9年11月中旬に小委・総会へ結果報告。令和8年臨時調査の報告は令和8年12月頃を想定する。医療経済実態調査は昭和42年から実施され、昭和63年の全員懇談会の申し合わせにより2年に1度実施することとされている。
訪問看護経営実態調査は新規実施案。令和8年度診療報酬改定の答申附帯意見で、同一建物居住者への訪問看護の評価の見直しや1日あたり包括評価の新設を踏まえた経営状況等の把握・改定の検証、精神科訪問看護の実態を踏まえた評価の在り方の検討が求められたことを踏まえたもので、スケジュールは医療経済実態調査と同様とされた。
歯科用貴金属価格は令和8年12月の随時改定の告示価格案が示された。歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品)は令和8年9月随時改定の5,232円に対し4,900円、歯科鋳造用14カラット金合金インレー用(JIS適合品)は15,871円に対し14,990円などとなった。随時改定は変動幅にかかわらず、平均素材価格に応じて3月、6月、9月、12月に見直しを行う仕組みだ。
意味
ゾルゲンスマの件は、費用対効果評価制度において「データ不足による中断」から「収集完了による再開」までの一巡が実際に動いた事例となる。分析前協議からの再開とされ、企業分析9か月・公的分析3か月という期間が明示されたことで、今後の手続きの見通しが立った。高額な再生医療等製品等について、日本国内の長期実態データをどう評価に取り込むかという運用の先例になる。
調査面では、医療経済実態調査に加えて訪問看護経営実態調査が新規に立ち上がる。訪問看護の収支構造を独立した調査で把握する枠組みができれば、次期改定の議論の基礎資料が厚くなる。両調査とも令和9年6〜7月が調査月、同年11月中旬に結果報告というスケジュールで足並みがそろう。
PleurXドレナージカテーテルの保険適用では、長期留置型の胸水・腹水ドレナージという新しい機能区分が設けられ、吸引システムが在宅医療での交換を前提に調剤点数表側の別表にも追加される。算定に適正使用指針の遵守と摘要欄記載を求める設計は、新規材料の導入時に使用実態をコントロールする手法として定着しつつある形だ。