厚生労働省保険局医療課は、令和8年10月28日の中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会(第81回)に資料「費-1 令和9年度薬価改定に向けた費用対効果評価制度の見直しに関する検討(その1)」を提出し、あらかじめ整理された4つの論点のうち、まず「議論の透明性やプロセスの改善」などを取り上げる形で検討を開始した。
示された論点と議論の振り分け
資料では、令和9年度薬価改定に向けた見直しの論点として、(1)議論の透明性やプロセスの改善、(2)新規の重要な知見が得られた際の対応、(3)対象品目や価格調整の範囲の拡大、(4)診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及 等——の4項目が挙げられている。このうち(1)(2)が「その1で議論」、(3)(4)が「その2以降で議論」と整理されている。
今回の「その1」では、このうち「議論の透明性やプロセスの改善について①」として、製造販売業者の専門組織への出席機会に関連する部分が取り上げられた。
現行の手続きとして資料に示された内容
資料には、費用対効果評価の分析と評価の流れが時系列で示されている。中医協での品目指定の後、分析前協議を経て費用対効果評価専門組織が分析の枠組みを決定し、企業分析、公的分析によるレビュー、総合的評価案の策定、価格調整と進む。標準的な期間として、企業分析に270日、公的分析に90日又は180日、その後の段階に2〜3月程度が示されている。また、分析前協議は3月程度、企業分析結果の報告は6月程度とされ、「分析前協議」と「分析の枠組みに基づく企業分析」の合計期間は270日を上回らないこととする、との注記が付されている。分析前協議については、企業から分析の枠組み案を提出し、提出案に基づき協議して論点を整理すること、協議内容は文書で記録することが明記されている。
参考資料として引用された「医薬品、医療機器及び再生医療等製品の費用対効果評価に関する取扱いについて」(令和8年2月13日)では、専門組織が分析枠組みを決定する際に、製造販売業者及び国立保健医療科学院からの報告を踏まえ、分析前協議の内容及び分析中に協議が必要な事項、分析枠組み案の科学的妥当性、追加検討の要否及びその方法、薬価算定組織で対象となった品目の有用性系加算等を含めた評価——を専門的見地から審査するとされている。分析対象集団の規模が小さくなる場合に理由を明らかにしたうえで一部を分析対象から除外できること、製造販売業者が別紙様式1の分析不能理由書により分析不能を申し出られること、その理由と根拠の正当性やデータ提出見込みの有無に応じて、引き続き分析を行わせる・提出データに基づき公的分析を行わせる・評価を中止とする、という三つの対応が定められていることも示された。さらに、製造販売業者のうち希望する者は専門組織に出席し、定められた時間の範囲内で分析枠組み案について意見を述べ、委員と質疑応答ができること、枠組み案の策定に関係した者が同行して意見を述べられることが規定されている。
背景と、業界にとっての意味
今回の検討は、令和8年9月30日の資料「費-2 費用対効果評価制度の見直しに向けた今後の議論の進め方」で示された段取りに沿ったものである。そこでは、「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」と「経済財政運営と改革の基本方針2026(令和8年7月)」に基づき、令和8年度制度改革後に行われた技術的な検証のとりまとめを踏まえた論点を検討すること、あわせて「大臣折衝事項(令和7年12月)」で合意された論点についても検討すること、これらを10月以降に費用対効果評価専門部会で検討することが提案されていた。
進め方の提案には、今回の議論で取り扱わなかった論点は、「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」や業界ヒアリングを踏まえ、令和10年度費用対効果評価制度改革に向けた議論の中であらためて検討する、とも記されている。つまり、令和9年度薬価改定に向けて決着させる範囲と、次の制度改革に送る範囲があらかじめ線引きされた形になっている。
製薬企業にとって当面の焦点は、対象品目の拡大といった範囲の話より先に、分析枠組みの決定過程における自社の関与の仕方——専門組織への出席機会や協議内容の記録といった手続き面が議題に上っている点にある。企業分析270日という期間の起点となる分析前協議の運用は、評価全体の所要期間にも直結する。範囲拡大や医療現場での普及は「その2以降」とされており、今後の部会での提示を待つことになる。