何が公表されたか

特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute、所在地:東京都港区、代表理事:乗竹亮治)は、政策提言「患者・当事者、市民の視点から考える難病・希少疾患政策の新たな展開―診断前後の医療提供体制の再設計に向けて―」を公表した。プレスリリースの配信は2026年11月2日12時00分。日本語版を先行して公開し、2026年10月28日には英語版を公開したことで、日英両言語で閲覧できるようになった。

提言は次の4点である。

提言1:難病・希少疾患を社会全体の課題として捉え、患者・当事者、市民が協働して難病・希少疾患政策を推進すべき。

提言2:患者・当事者が早期に適切な医療を受けられるよう、診療所から専門の医療機関へ円滑につながる医療提供体制を構築すべき。

提言3:難病・希少疾患の患者・当事者が安心して切れ目なく医療を受けられるよう、地域の連携体制を強化すべき。

提言4:診断の有無や居住地にかかわらず、難病・希少疾患の患者・当事者が必要な支援を受けられるよう、相談支援体制を整備すべき。

HGPIは、これらの提言が、難病・希少疾患とともに生きる患者・当事者が生涯にわたって安心して医療を受け、その人らしい生活を送ることができる社会の実現に向けたものだとしている。

どのようにまとめられたか

本提言は、難病・希少疾患の医療提供体制に注目し、患者・当事者が「心身の違和感に気づいてから、地域で継続的に医療を受けられるようになるまで」の各段階に焦点を当てたものである。

作成にあたっては、机上調査に加え、患者・当事者をはじめとした関係者への個別の聞き取り、そして産官学民の専門家による討議が行われた。これにより、患者・当事者、市民の視点から実態や都道府県の取り組みを明らかにしたとしている。

HGPIは従来から、難病・希少疾患への社会的関心を高め、一段と効果的かつ有機的に対策を進めるため、中長期的に社会が目指すべき難病・希少疾患政策の方向性を整理してきた。今回の提言はその一連の取り組みに位置づけられる。

難病・希少疾患プロジェクトのアドバイザリーボードには、大黒宏司氏(日本難病・疾病団体協議会 代表理事)、北川尚之氏(天沼きたがわ内科 院長)、新田惇一氏(長崎県 福祉保健部長)、野中文陽氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 離島・へき地医療学講座 講師)、野正佳余氏(大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 大阪難病医療情報センター 遺伝診療センター 難病診療連携コーディネーター)、水澤英洋氏(国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長/日本ゲノム医療推進機構 機構長)、横田正明氏(千葉市 保健福祉局次長)、渡部沙織氏(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)が名を連ねた(所属・肩書は参画当時)。

ただしHGPIは、本提言書は各会合での議論をもとに独立した医療政策シンクタンクとして同機構が取りまとめたものであり、専門家や登壇者等の関係者、およびその所属団体の見解を示すものでは一切ない、と明記している。

業界にとっての意味

4つの提言に共通するのは、焦点が「治療薬そのもの」ではなく、患者・当事者が医療にたどり着き、それを継続できるまでの経路に置かれている点である。提言2が「診療所から専門の医療機関へ」の接続を、提言3が地域の連携体制を、提言4が「診断の有無や居住地にかかわらず」の相談支援を掲げていることは、診断がつく前の段階と、診断後に地域へ戻った後の段階の双方を、政策の対象として明示的に取り上げる構成になっている。

希少疾患領域で開発に取り組む企業にとって、診断までの経路や地域での継続的な医療提供体制は、製品が患者に届くかどうかを左右する外部環境である。今回の提言が都道府県の取り組みの実態を明らかにしたとしている点は、地域ごとの体制差がどこにあるかを議論する材料になり得る。

また、提言1が患者・当事者、市民の協働を政策推進の前提に置いていることは、患者参画を政策形成の付随的な要素ではなく、推進主体として位置づける整理といえる。HGPIは2004年設立の非営利・独立・超党派の民間医療政策シンクタンクで、女性の健康、がん対策、認知症、薬剤耐性、再生医療、グローバルヘルスなどのテーマを政策課題として提示してきたとしている。難病・希少疾患の医療提供体制が、そうしたテーマの系列に加えられた形である。日英両言語で公開されたことで、国外の政策関係者が参照できる状態にも置かれた。