何が起きたか
参天製薬株式会社(本社:大阪市)は2026年11月2日、近視の進行抑制を目的とする点眼剤STN1012700(Ryjusea 0.25mg/mL点眼液)について、韓国における販売承認を取得したと発表した。
同社の発表によれば、今回の承認は、Santenのアジア事業地域(日本と中国を除くSantenのアジア太平洋地域における事業領域)においては、フィリピンに次いで2ヵ国目の販売承認となる。
本剤は、日本では「リジュセア®ミニ点眼液 0.025%」の名称で2025年4月から販売されている製品である。主に小児を対象に投与することから、安全性を考慮し、防腐剤を含まない一回使い切りタイプの点眼剤として設計されている。有効性の根拠となっているのは、日本で実施された第Ⅱ/Ⅲ相プラセボ対照二重遮蔽比較試験(ORANGE STUDY)の結果である。
発表文には、承認取得日そのものの記載はなく、「このほど」取得したとされている。韓国での発売時期や価格に関する記載も、今回の発表には含まれていない。
背景にある近視の広がり
参天製薬は発表のなかで、近視が世界的に増加している状況を説明している。引用されている文献(Holden B et al, Ophthalmology 2016)によれば、近視の有病率は2030年には世界人口の39.9%、2050年には49.8%に達すると予想されている。
近年の近視増加の要因としては、子供たちの屋外活動時間の減少と、読書、勉強、デジタル機器の使用といった近業作業(近くを長時間見る作業)の増加が組み合わさったライフスタイルの変化が挙げられている(Morgan IG et al, Lancet 2012/Haarman A et al, Invest Ophthalmol Vis Sci 2020)。
今回の承認先である韓国については、韓国教育部が公表した2025年調査(2025年学生健康診断標本統計結果)の数字が示されている。眼鏡などにより視力矯正を行っている、または裸眼視力が左右いずれか一方が0.7以下の人の割合は、小学校1年生で30.41%、中学校1年生で66.38%、高等学校1年生で74.45%だった。学年が上がるにつれて割合が大きく高まる構図が、公的統計として示されている形だ。
参天製薬は、目の健康の向上に取り組むとともに、小児近視の患者の視力を守ることに貢献しているとし、韓国をはじめとするアジア各国の近視患者に新たな治療方法を提供できるよう、引き続き注力する考えを示している。
この承認が意味すること
今回の発表から読み取れる第一の点は、日本で2025年4月に発売された製品が、日本国内で実施された臨床試験の成績を根拠として、アジア市場へ段階的に展開されつつあるということだ。発表では、本剤の有効性がORANGE STUDYという日本での第Ⅱ/Ⅲ相試験に基づくと明記されている。国内で得られたデータが、そのまま海外当局の承認判断の土台となった構図である。
第二に、アジア事業地域でフィリピンに次ぐ2ヵ国目という位置づけが示されたことで、この製品が単発の国内製品ではなく、地域展開を前提としたポートフォリオの一角として扱われていることがうかがえる。参天製薬は眼科領域に特化した企業で、緑内障、ドライアイ、感染症、アレルギー、加齢黄斑変性、近視などの疾患領域に対応する製品を持ち、製品とサービスは世界60以上の国・地域で提供されているとしている。近視進行抑制という領域が、そのなかで国をまたいで広げていく対象に加わったことになる。
第三に、韓国という市場の性格である。教育部の2025年調査が示す数字は、高校1年生で74.45%という水準に達している。小児を主な対象とする製剤にとって、対象となりうる層の厚みが公的統計によって裏づけられている市場ということになる。防腐剤を含まない一回使い切りタイプという剤形の選択も、小児への投与を前提とした安全性配慮として発表文に明記されており、この患者層を正面から想定した製品設計であることがわかる。
ただし、今回の発表は承認取得の事実を伝えるものであり、韓国での発売スケジュール、薬価、販売体制、アジア事業地域における次の申請国といった点については触れられていない。承認がどのように実際の供給につながるかは、今後の発表を待つ必要がある。