欧州・米国・日本の三極で希少疾病用医薬品の指定が揃う
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長COO:滝野十一)は、sapablursen(ONO-0530)が真性多血症(PV)を対象として、2026年10月に欧州においてOrphan Medicinal Product Designationの指定を取得したことを発表した。発表は2026年11月5日付である。
sapablursenは、これに先立ち米国で複数の指定を受けている。米国食品医薬品局(FDA)からは、2024年1月にFast Track Designation、2024年8月にOrphan Drug Designation、2025年5月にBreakthrough Therapy Designationの指定をそれぞれ取得した。日本でも2026年9月に希少疾病用医薬品の指定を取得している。今回の欧州での指定により、欧州・米国・日本の三極で希少疾病用医薬品の指定を取得した形となる。
あわせて同社は、米国子会社のDeciphera社が実施しているsapablursenのPV患者を対象としたグローバル第3相臨床試験(INTREPID試験)の試験デザインを、第68回米国血液学会年次総会でポスター発表することを明らかにした。同総会は12月12~15日にルイジアナ州ニューオリンズで開催される。
INTREPID試験のデザインを米国血液学会で発表
ポスター発表の演題は「Trial in Progress: INTREPID: A global, randomized, double-blind, placebo-controlled Phase 3 study of sapablursen in patients with phlebotomy-dependent polycythemia vera」。演題名が示すとおり、瀉血依存性の真性多血症患者を対象とした、グローバルな無作為化・二重盲検・プラセボ対照の第3相試験である。
発表者は、University of Alabama at BirminghamのO'Neal Comprehensive Cancer CenterでAssociate Professor of Medicineを務めるPankit Vachhani, M.D.。発表形式はポスター発表で、発表日時は2026年12月13日(日)午後6:00~8:00(米国中部時間)、ポスター番号は3771である。
TMPRSS6を標的とするアンチセンス核酸医薬
sapablursenは、Ionis社によって創製・開発された、TMPRSS6を標的とするアンチセンス核酸医薬である。TMPRSS6はヘプシジン産生を負に調節する因子であり、sapablursenはTMPRSS6の産生を抑制することで、鉄恒常性の主要な調節因子であるヘプシジンの産生を増加させる。ヘプシジンの発現を増加させることにより、sapablursenはPVを始めとして様々な血液疾患の治療薬となる可能性があるとされる。
対象疾患であるPVは、赤血球の過剰産生を特徴とする希少な血液疾患で、生命を脅かす可能性がある。特に肺、心臓、脳などの重要な臓器で重篤な血栓のリスクが大幅に増加する。治療の主な目標は、血中ヘマトクリット値を45%未満に維持して血栓性イベントを防ぐことに加え、重度の疲労、集中力の低下、夜間の発汗、かゆみといった症状の負担を軽減することにある。資料では、現在の治療法では重度の症状や血中ヘマトクリット値のコントロールが不十分な患者が存在する点が課題として挙げられている。
INTREPID試験が瀉血依存性のPV患者を組み入れている点は、この未充足のニーズに対応する設計といえる。ヘマトクリット値の管理を瀉血に頼らざるを得ない患者層に対し、鉄代謝の調節という作用機序でアプローチする点が、既存の治療選択肢との違いになる。
開発体制と今後
試験を実施するDeciphera社は小野薬品のグループ会社で、本社をマサチューセッツ州ウォルサムに、研究施設をカンザス州ローレンスに置くバイオ医薬品企業である。先進的なキナーゼ阻害薬を始め、データ分析やAIを活用した創薬技術などの最先端技術を活用し、小野薬品の重点領域であるがん、免疫・炎症、神経領域の医薬品研究および開発を加速させているとされる。同社は米国および欧州での小野薬品の事業拡大を主導し、製品のグローバル販売とパイプラインの臨床開発の推進を図る役割を担う。
今回の一連の発表を整理すると、規制面では主要三極での希少疾病用医薬品指定が出揃い、開発面ではグローバル第3相試験が進行中であることが国際学会の場で示される、という段階にある。Ionis社が創製した核酸医薬を、小野薬品が米国子会社を通じてグローバル開発する構図であり、同社が米欧での開発・販売体制をDeciphera社に集約していることが、具体的な開発品の進捗として表れた事例といえる。