何が起きたか

日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:カーラ・アルカサル)は2026年10月30日、抗エストロゲン剤/抗悪性腫瘍剤「イムルリオ®錠200mg」(一般名:イムルネストラントトシル酸塩)を新発売した。

効能・効果は「内分泌療法後に増悪したESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」。用法・用量は、通常、成人にイムルネストラントとして1日1回400mgを空腹時に経口投与し、患者の状態により適宜減量する、とされている。1錠200mgであるため、通常用量は1日2錠に相当する。

製造販売承認の取得日は2025年12月22日、薬価収載日は2026年10月14日。薬価はイムルリオ錠200mg 200mg1錠で27,551.80円。製造販売元は日本イーライリリー株式会社である。

承認の根拠となった試験

承認は、国際共同第III相試験(EMBER-3試験)の有効性および安全性の結果に基づく。同試験は、アロマターゼ阻害剤を含む内分泌療法歴のあるHR陽性かつHER2陰性の局所進行又は遠隔転移を有する乳癌患者874例を対象とした無作為化非盲検試験で、本剤単独投与(投与群A)、治験担当医師が選択した治療であるフルベストラント又はエキセメスタン(投与群B)、本剤とアベマシクリブの併用投与(投与群C)を比較した。

投与群Aは本剤400mgを1日1回、投与群Bはフルベストラント500mg(1サイクル28日間として第1サイクルの1日目および15日目、第2サイクル以降は1日目)又はエキセメスタン25mgを1日1回、疾患進行等が認められるまで継続投与した。男性および閉経前の女性にはLH-RHアゴニストの使用下で投与された。

主要評価項目である治験担当医師判定による無増悪生存期間(PFS)について、ESR1遺伝子変異陽性集団の解析では、投与群A 138例(日本人11例)、投与群B 118例(日本人6例)で、イベント発現例数はそれぞれ109例、102例。PFS中央値は投与群Aが5.49カ月(95%信頼区間3.91-7.39)、投与群Bが3.84カ月(同3.68-5.52)で、ハザード比は0.617(95%信頼区間0.464-0.821)、層別ログランク検定(両側)でp=0.0008だった。

安全性対象集団では、投与群A 327例(日本人30例を含む)中160例(48.9%)、投与群B 324例(日本人24例を含む)中104例(32.1%)に副作用が認められた。ESR1遺伝子変異陽性集団では投与群A 137例中78例(56.9%)、投与群B 117例中32例(27.4%)。安全性対象集団で認められた投与群Aの主な副作用は、下痢(12.2%)、悪心(9.5%)、疲労(6.7%)、AST増加(5.8%)、無力症(5.8%)だった。

位置づけと意味

リリーの説明によれば、一部の乳癌患者ではESR1遺伝子変異が起こることでエストロゲン受容体が過剰に活性化され、癌の進行を促進させることが知られている。イムルリオはエストロゲン受容体に結合し、分解することで疾患の進行を抑える。1日1回投与の薬剤であり、同社は「患者に新たな経口剤の選択肢を提供する」としている。

EMBER-3試験の対照群に置かれたフルベストラントは注射剤で、1サイクル28日のうち第1サイクルは1日目と15日目に投与する用法が組まれている。これに対し本剤は1日1回の経口投与であり、投与経路と投与頻度の点で、既存の内分泌療法とは異なる選択肢となる。

適応はESR1遺伝子変異を有する患者に限定されている。すなわち、内分泌療法後に増悪した患者で、遺伝子変異の有無を確認したうえで使うことが前提となる薬剤である。治療耐性の要因となりうる変異を標的に据えた点が、本剤の設計上の特徴といえる。

日本イーライリリー 執行役員 オンコロジー事業本部長のステファン・クーレンコッター氏は、「ホルモン受容体陽性・HER2陰性の乳癌患者さんの中には、ホルモン療法中にESR1遺伝子変異が生じ、それが治療耐性の要因となる可能性があることが知られています」としたうえで、「イムルリオは、そのような治療耐性に対する新たな治療選択肢となる可能性を示してきました」と述べ、今後も適正使用の推進に努めるとしている。

承認取得から薬価収載までは約10カ月、収載から発売までは半月余りという日程となった。