日本のMR(医薬情報担当者)が医師から受ける問題行動を扱った論文が、2026年6月にBMC Health Services Research誌に掲載された。

著者は伊藤啓先生ほか4名で、筑波大学・順天堂大学・京都大学・島根の飯南病院のご所属となっている。試験デザインはウェブでの横断調査、回答者は98名(年齢中央値40歳、女性15.3%、MR経験中央値15年)となっている。

中心となる調査項目は下記の3つ。
①医師による問題行動(problematic communication)
②医師からのセクハラ
③面会前1時間超の待機(prolonged waiting before meetings)

主要結果は、何らかのProblematic communicationが88.8%(最多は「業務関連事項への応答拒否」58.6%)、セクハラ14.3%、長時間待機38.8%。
セクハラは若年・女性で、長時間待機は若年・低経験・高学歴で多かったとされる。
調査の背景としては、院内の看護師や医療スタッフを対象にした医師のproblematic communicationに関する研究は数多いが、MRという外部ステークホルダーを対象とした研究はほとんど空白だったとのこと。
そして本研究はあくまで「探索的・仮説生成的」であるため多変量解析は行われていない。

回答者となったのは98人のMRであり、いずれもDoctor's Prime Academiaというプラットフォームに登録されており任意協力に応じた方々となる。
対象MRの総数(分母)も回答率もわからないので、母集団に対する代表性は不明であり、ネガティブな経験をした人ほど回答している可能性はある。

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88.8%の中で最も多いのは「業務関連事項への応答拒否」58.6%だが、これは医師がMRの面会要請や営業アプローチに多忙のため応じないなどの正当な拒否も含む。同様に、長時間待機についても、著者自身が「臨床負荷などの反映であり、非専門的行為の直接証拠ではない」と但し書きしている。
実際、回答者の68.4%が大学病院担当となっているため、通常診療だけでなく当直や救急対応、研究などで多忙な医師がMRのコミュニケーションに対応できなかったり、長く待たせてしまっているなどのバイアスの可能性もある。

以上をまとめて、「日本の医師/MRコミュニケーションの実態」というよりも、「特定プラットフォームに集まった98人のMRの自己申告に基づく探索的なスナップショット」と表現した方が正しいように思われる。
とはいえ、過去になかなかなかった検証の切り口であるため、大変興味深い。