アレクシオンファーマ合同会社は2026年10月23日、希少疾患の診断ラグをテーマにしたストーリーブック”Stories of Silent Days”を刊行したと発表した。診断ラグは、症状が出てから確定診断がつくまでに長い時間がかかることを指し、同書は、患者や家族、医療者、支援者など10人の経験を写真と言葉でまとめたものになっている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000074822.html
https://alexionpharma.jp/-/media/alexionpharma_ajp/healthequity/stories_of_silent_days.pdf
Stories of Silent Daysは診断を待つ期間をSilent Daysと呼び、登場するのは患者や家族として、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、神経線維腫症1型(NF1)、低ホスファターゼ症(HPP)の当事者や患者会の代表の方々など。他にも、名古屋大学医学部附属病院の認定遺伝カウンセラー、NPO法人ASridの理事長、在宅医療やオンライン診療に取り組む医師、読売新聞の医療記者、日本医療政策機構の代表理事、東京大学医科学研究所の研究者の方などが登場する。
語られる診断ラグの形はさまざまで、PNHの患者は黒い尿が一度出たものの原因がわからず、2016年の長男の出産時の血液検査で異常が見つかったのをきっかけに複数の診療科を回り、血液内科でPNHと診断された。最初の異変から診断まで約5年かかっている。HPPのお子さんを持つ父親は、第一子は確定診断まで1年半かかったが、第二子は専門医とのつながりや家族歴があったためすぐに診断がついた経験を紹介している。
巻末では、同社の濱村社長が、医療人類学者アーサー・クラインマンの「Disease(疾患)」と「Illness(病)」の区別を引き、2025年5月に作成された希少疾患白書では伝えきれなかった患者や支える人々の経験を、写真と当事者の言葉で届けることがこの本の出発点だと記している。
同社の希少疾患白書は日本の希少疾患の患者が置かれた状況、診断ラグの実態、早期診断を妨げる課題、6つの提言、国内外の事例を載せている。
その中でJMDCとアレクシオンが2025年1〜3月に行った共同調査では2005年から2024年4月までのレセプトデータを使い、指定難病受給者証の所持者数が多い上位20疾患の患者8,089人を分析している。

その中で、それぞれの疾患の関連症状や診断前に間違われやすい症状を前駆症状として定め、た。確定診断前の10年間に前駆症状が2種類以上記録されている患者を診断ラグがあると定義している。
前駆症状による受診から確定診断までの期間は平均41.3か月(3.4年)だった。1年未満で診断された患者は44%で、3年以上が46%、5年以上が35%、9年以上も13%おり、ストーリーブックの冒頭はこのデータを持って5年以上の診断ラグが約3人に1人と表現している。

JMDCは2025年5月23日にこの調査の速報を発表し、12月15日には追加の分析結果を公表している。追加分析では、診断ラグが9年以上だった患者が専門医にたどり着くまでに約8.2年かかっていたことや、診断ラグが1年未満の患者と比べた1人当たりの医療費の差が551万円だったことを示している。
https://newscast.jp/smart/news/2279671

白書は、日本製薬工業協会(製薬協)が2022年10月に行った患者向けのインターネット調査(N=438)も引用している。発症の時期の困りごととして、「何の病気か分からず不安だった」が67.1%、「症状がどんどん悪化して辛かった」が65.2%、「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労した」が57.5%、「どの病院・どの診療科を受診すべきか分からなかった」が49.5%だった。
白書は、患者、行政、企業、研究者、医療機関が協力して取り組む項目として6つを提言している。
- 新生児マススクリーニングの対象疾患を広げ、重症の新生児に全ゲノム検査を保険適用で行える環境をつくること
- 医師が早く疾患に気づけるよう、SaMDなどのAI診断支援ツールの利用を進めること
- 希少疾患の分野ごとに専門の医療機関を結ぶ拠点(Center of Excellence、CoE)をつくり、専門医と専門医ではない医師のつながりを強めること
- 患者のデータが早期診断に使われるよう、データの標準化などを進めること
- 患者団体の意見を政策に反映させる仕組みと、その資金の基盤を強めること
- 政府が進める医療DXやゲノム医療などの中核的な施策に、診断ラグの解消策を組み込むこと
具体策として遺伝カウンセラーの国家資格化、遺伝情報による差別を防ぐ具体性と実効性のある法整備、SaMDの試験的な保険償還と実臨床データによる価格の見直し、診療ガイドラインへのSaMDの記載、2025年4月に始まったかかりつけ医機能報告へのSaMD導入状況の追加、寄付税制の強化などを挙げている。