何が議論されたか

第219回社会保障審議会医療保険部会が令和8年11月5日10時00分から12時00分まで、航空会館大ホールで開かれた。議題は「後期高齢者保険料について」(資料1)と「先行バイオ医薬品の保険給付の在り方について」(資料2)の二つで、いずれも厚生労働省保険局が資料を提出した。

製薬業界にとっての焦点は資料2である。先行バイオ医薬品の保険給付の在り方は、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定)で「先行バイオ医薬品について、バイオ後続品の普及促進に向けた環境整備の状況を踏まえ、保険給付の在り方の見直しを検討する」とされた事項であり、今回の部会はその検討の場にあたる。

バイオシミラーの置き換えは目標に届いていない

資料2に引用された令和7年11月6日・第202回医療保険部会の論点資料によれば、バイオシミラーへの置き換え率は金額ベースで33.7%(令和6年薬価調査)にとどまる。数値目標は「新経済・財政再生計画改革工程表2023」(令和5年12月21日経済財政諮問会議)で設定されたもので、2029年度末までにバイオシミラーに80%(数量ベース)以上置き換わった成分数を全体の成分数の60%(成分数ベース)以上とする内容である。現状(2024年度)では、バイオシミラーに80%以上置き換わった成分数は22.2%(=4成分/18成分)であり、目標には達していない。

同じ論点資料は、バイオ医薬品固有の事情も整理している。低分子医薬品と比較してバイオ医薬品は薬価が高く、製造工程が複雑なため製造体制の確保に時間を要する。バイオシミラーは先行バイオ医薬品と同等・同質の品質、安全性・有効性が臨床試験等で検証されている一方、有効成分が同一ではないため切り替えには医師の判断が必要で、変更調剤ができない。また、低分子医薬品では先発品と後発品に共通の一般名があるのに対し、バイオ医薬品には先行品と後続品に共通の一般名が存在しない。後発医薬品には一般名処方加算(医科)や後発医薬品調剤体制加算(調剤)があるが、バイオシミラーには一般名処方加算やバイオシミラーを調剤できる体制を評価する点数がない――という違いである。

こうした環境整備については、令和8年度診療報酬改定で、一般名処方加算の対象拡大、医療機関における使用体制加算の見直し、薬局におけるバイオ後続品の調剤・説明体制の評価といった対応が行われたことが資料2に記載されている。

委員意見は選定療養の導入をめぐり分かれる

資料2には、令和7年11月6日の部会で出された主な意見(文責・事務局)が掲載されている。置き換えが一定程度進んでいる先行バイオ医薬品は選定療養の対象とすべきとの意見、選定療養制度の導入の検討に加えて一般名処方を可能とすることや診療報酬上の加算要件の見直しを求める意見があった一方、「バイオシミラーは後発医薬品と違って、選定療養の活用という段階ではない」として、置き換え状況の差をより詳細に分析したうえで議論を進めるべきだとする意見も記録されている。

さらに、先行品を継続使用している患者の置き換えよりも、処方を変更する時点や新規処方の時点で医師と薬剤師が在庫状況も含めて連携する必要があり、そのための体制評価がなければ進みにくいとの指摘、医師や患者の不安を踏まえて「拙速な推進にならないようにする必要がある」との指摘もあった。

後期高齢者保険料は全国平均で年額95,875円

資料1は後期高齢者医療の保険料の仕組みと水準を整理したものだ。保険料は条例により後期高齢者医療広域連合が決定し、毎年度個人単位で賦課され、保険料率は2年ごとに改定される。2026年度(令和8年度)から子ども・子育て支援金制度が施行されたことにより、医療分とは別に子ども分の保険料率が設定された。

令和8・9年度の全国平均保険料率(医療分)は、均等割が年額56,083円、所得割が10.17%。1人当たり平均保険料額(医療分)は年額95,875円(月額7,989円)、賦課限度額は医療分85万円である。子ども分(令和8年度)は均等割が年額1,351円、所得割が0.25%、1人当たり平均保険料額が年額2,333円、賦課限度額が年額2.1万円。均等割総額と所得割総額の比率は48:52とされている。

軽減措置としては、世帯の所得が一定以下の場合に均等割の7割/5割/2割が軽減される。医療分に限り、令和8・9年度は広域連合の判断でさらに0.2割の軽減が可能とされている。元被扶養者については、75歳到達後2年間に限り所得にかかわらず均等割が5割軽減され、所得割は賦課されない。

資料1は負担をめぐる状況として、高齢者の就業率が上昇傾向にあり後期高齢者の所得も増加している一方、75歳以上個人の収入額の分布(2024年)では150万円未満の層が約半分を占め、高齢者間のバラツキが大きいことを示している。後期被保険者1人当たり所得額は105.8万円まで上昇している。世帯主が75歳以上の世帯の貯蓄金額の分布では、4割以上が1,000万円以上である一方、貯蓄がない世帯も11.5%存在する。

業界にとっての意味

資料2の構成からは、議論の軸が「バイオシミラーをどう使ってもらうか」から「先行バイオ医薬品の保険給付をどう扱うか」へと一段進んでいることが読み取れる。令和8年度改定で一般名処方加算の対象拡大など供給側の環境整備が一巡した以上、次は骨太2026が求める給付の在り方そのものの見直しが論点になる。

ただし、置き換え率33.7%、80%以上置き換わった成分は18成分中4成分という数字は、長期収載品と同列に扱える状況ではないことも同時に示している。部会で選定療養の導入をめぐる賛否が並記されたのは、この落差を反映したものといえる。先行バイオ医薬品を抱える企業にとっては、成分ごとの置き換え状況の差がどこまで詳細に分析され、どの線で制度の対象が切られるかが当面の関心事になる。