2026年9月28日、イーライリリーはGLP-1治療薬を低・中所得国に広げる新たな構想「Lilly Change the Course Commitment」を発表した。現在高所得国で同社の糖尿病・肥満治療薬を使える人が4人いるのに対し、低・中所得国では1人にとどまるとして、この差を2040年までに解消するという目標となっている。
この構想の目標は治療を受ける患者数の同数化で、現在、高所得国でリリーの糖尿病・肥満治療薬を使える人が4人いるのに対し、低・中所得国でそれを手にできるのは1人だけとなっており、それの格差解消を目指す。
ここでいう低・中所得国は、世界銀行の分類に基づいており、2025年の1人あたり国民総所得(GNI)が1,175ドル以下の国が低所得国、1,176〜4,635ドルが中所得国、4,636〜1万4,375ドルが上位中所得国となっている。
https://www.fiercepharma.com/pharma/lillys-new-initiative-will-take-glp-1s-lower-income-nations
構想は3つの柱からなっており、第一の柱は、薬の開発段階から資源の限られた地域を考慮すること。臨床試験、製剤の形態、コールドチェーン(冷蔵での保管・流通)の要否などを踏まえ、開発の早い段階から、こうした地域で暮らす人に合わせた開発を目指す。
第二は、承認申請と普及の早期化。GLP-1を含む糖尿病・肥満治療薬を、より多くの低・中所得国で承認申請し、各国の規制当局や医療制度と協力してアクセスを早めるとしている。重点地域とされているのはアフリカ、中南米、アジアとなっている。
第三は、医療体制の強化。国際的な保健機関と協力し、地域の保健医療従事者の育成、デジタル技術の活用、病気の認知・予防・診断・治療の改善を通じて、プライマリ・ケアを強化するとしている。

今回の構想は、リリーが2016年に掲げたLilly 30×30という取り組みの後継にあたる。これは資源の限られた地域で年間3,000万人の医療へのアクセスを改善するというものだったが、2025年に4,000万人に達し、予定より5年早く目標を超えて完了している。
この構想の背景として、糖尿病の成人の5人に4人、肥満の成人の10人に7人が低・中所得国に住んでおり、その割合は増え続けていることがある。そのうえで低・中所得国と高所得国ではアクセスに格差があり、FiercePharmaによれば新しい薬が低所得国で発売されるまでの期間は高所得国の約3倍で、患者のアクセスが最大10年遅れるとされている。

今回の構想の実現の手段としては室温で保管できる経口薬であるFoundayo(オルフォルグリプロン)がより多くの低・中所得国への流通と普及の拡大を促進すると述べられている(注射のGLP-1製剤は冷蔵での保管が必要) 。
一方で、今回の構想では具体的な各国での承認申請や発売スケジュールは述べられていない。また、現在多くの議論が起きている価格についても触れていない。