厚生労働省が令和7年度の販売情報提供活動調査事業の報告書を公表した。モニター医療機関からの疑義報告のうち、違反が疑われた医薬品は延べ6件、項目は延べ11件となり、この事業が始まった平成28年度以降で最も少ない数字となった。である。事業10年目の節目にあたる今年度、報告書は「不適切な販売情報提供活動に関する報告件数が大きく減少した」と記した。だが同じ報告書は、残った6件のうち複数が製薬企業主催の講演会で生じており、それが薬機法第68条に直接抵触するものだったとも指摘している。本稿は10年分の報告書を並べ、何が減り、何が残ったのかを追う。
▸ 出典:(プロジェクト添付)厚生労働省「令和7年度 医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業報告書」および平成28年度以降の各年度報告書・概要(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
▸ 出典:令和7年度販売情報提供活動調査事業の報告(ミクスOnline) https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=80796/医薬品等の広告規制について(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
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事業の出発点は、大手製薬企業による臨床研究データの不正利用で、これを受けて厚生労働省は平成28年度から医療用医薬品を対象とした広告監視の仕組みを開始している。
仕組みは全国から選定されたモニター医療機関が製薬企業等による販売情報提供活動のうち適切性に疑義があるものを事務局に報告し、さらに令和元年10月からはモニター以外の医療機関等からも一般報告を受け付けており、さらに医学専門誌や製薬企業ホームページ、医療関係者向け情報サイトを対象とした調査も行われている。報告された事例は有識者等で構成される事例検討会で評価され、法令違反に該当するかどうかを厚労省が判断している。
まず違反が疑われた延べ項目数の推移を見ると、平成28年度64件、29年度67件、30年度74件と推移し、平成30年度がピークとなった後は令和元年度は57件、令和2年度は17件へと大きく減少してく。その後、令和3年度26件、4年度23件、5年度26件、6年度23件と20件台で推移し、令和7年度に11件となった。
違反が疑われた延べ医薬品数で見ると、平成30年度45件、令和元年度39件から、令和2年度14件へ減少。以降は14件から20件の範囲で推移し、令和6年度18件を経て、令和7年度は6件となった。今年は前年度の3分の1となっている。

ただし、この数字は調査期間が年度により異なっているため、直接比較することはできない。調査期間が年度によって異なるからだ。モニター調査の実施期間は、平成28年度が3か月、29年度が5か月、30年度から令和2年度が8か月、令和3年度以降は9か月となっており、これを補正して比較する必要がある。
そこで、違反が疑われた項目数を調査月数で割ると、平成28年度は月21.3件、29年度13.4件、30年度9.3件、令和元年度7.1件となる。令和2年度は2.1件へ落ち、以降は2.6件、2.6件、2.9件、2.6件と推移し、令和7年度は1.2件となった。
補正しても、過去と比べると減少トレンドにあり、特に昨年度は大きく減少したことがわかる。ただし報告書では、違反が疑われた延べ項目数については、年度ごとに分類上の項目の追加・修正を行っているため、単純な比較はできないと注記している。

報告書は、減少した内訳について、特に、これまで比較的多く見られた他社製品の誹謗・中傷に該当する不適切事例が減少したと述べている。
実際、他社製品の誹謗・中傷は令和3年度に5件(19.2%)、令和6年度に4件(17.4%)と一定数あったが、令和7年度は1件(9.1%)にとどまる。
記事体広告や製品情報概要についても、報告書は「ガイドラインが策定・周知され、記事体広告・製品情報概要での不適切事例は着実に減少した」としている。
事例検討会では、製薬企業のMRを評価する意見も複数挙がっており、「尋ねられる前に自ら積極的にリスクや注意すべき点などについても提供した」「その領域で2番手、3番手で登場してきた医薬品の新薬説明会で、質問していないにもかかわらず、自社製品のデメリットを説明した」「MRによる販売活動とメディカルアフェアーズ(MA)による学術情報活動を明確に分離している」「担当者(部下)が適応外の情報を提供しようとした際、同席していた上司が遮った」などの内容が記載されている。
一方留保として、「説明時間が短いことを理由に有効性のみを説明し安全性に関する情報を一切提供しない企業や、医療従事者からの求めに応じた情報提供のような形式に誘導している企業など、ガイドラインを意識して不適切性が疑われる販売情報提供活動を行っている企業が依然としてある」「MR個人の資質による問題もみられる事例もあったが、組織的な問題とみられる事例もあった」などの事例も報告されている。
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令和7年度の違反事例として目立つのは、製薬企業主催の講演会。報告書に掲載された事例のうち、3件が企業主催の講演会に関するもので、一つは演者の医師が学会の診療ガイドラインで推奨されている使用方法とは異なる内容を積極的に情報提供していた事例。もう一つは、承認された効能効果とは異なる有効性(呼吸器官用薬について適応のないウイルス性疾患への効果に触れたり、ワクチンについて適応症とは異なる認知症や心血管イベントのリスク低下効果に言及)に言及した事例。三つ目は、日本で未承認の未治療患者への適用について、海外ガイドラインの推奨事項を紹介する形で情報提供した事例。
報告書によれば、特に今年度の事例では承認範囲外の効能効果に言及しておりガイドラインに違反するのみならず、医薬品医療機器等法第68条における未承認医薬品の広告の禁止に直接抵触するものであったとのこと。
責任の所在については「講演を行う演者自身は製薬企業の従業員でなくとも、製薬企業が主催する講演会の場で、製薬企業の依頼を受けて講演が行われている場合には、講演の内容に事前審査も含め製薬企業が相当程度、関与していることが通常である。そのため、製薬企業が主催する講演会の場における製薬企業の依頼を受けた講演については、原則として製薬企業による販売情報提供活動・広告行為だとみなされ、製薬企業による違反行為となる場合がある」と指摘している。
今後の課題として報告書が挙げるのは4点で、
1. 医療従事者に対するガイドライン周知が十分でないこと
2. 一般報告窓口の認知度が低いこと
3. 製薬企業担当者個人からのメール配信形式への対応
4. そして製薬企業におけるガイドライン普及啓発のさらなる取組
となっている。