2026年7月21日、Novo Nordiskがニュージャージー州連邦地裁にEli Lillyを提訴した。争点は、テレビとSNSで大規模に展開されたLillyの比較広告が、連邦Lanham Act(ランハム法)違反の「虚偽広告」にあたるかどうかだ。さらに3日後の7月24日、Novoは予備的差止命令を8月17日までに申し立てる方針を裁判所に通知している。

https://www.fiercepharma.com/marketing/novo-turns-heat-lilly-false-advertising-suit-seeking-preliminary-injunction-stop-rivals

争点になっているCMは“Watch This: Head-to-Head”というもので、下記から視聴できる。

この広告の根拠は2024年に結果が公表されたLilly主導のhead-to-head試験Surmount-5になっている。この試験ではZepbound(10mgまたは15mg)とWegovy(1.7mgまたは2.4mg)を比較し、72週間でZepbound群が平均50ポンド(体重の20.2%)、Wegovy群が平均33ポンド(体重の13.7%)減量したという結果を示している。

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一方でNovo側の主張によれば、2026年3月にFDAはWegovyの新たな高用量7.2mgを承認しており、この用量を検証した別の試験(STEP UP試験)では、72週間で平均19%(約47ポンド)の減量効果が確認されている。Novoは、この47ポンドとZepboundの48ポンド(別の試験)が臨床的に一貫した(clinically consistent)水準であり、Surmount-5に基づく優位性の広告メッセージは、もはや正確ではないと主張している。一方で、Zepboundと新用量のWegovyを直接比較したhead-to-head試験は存在していない。

https://www.statnews.com/wp-content/uploads/2026/07/Novo-v-Lilly-deceptive-advertising-suit.pdf

ちなみに同成分である糖尿病治療薬Mounjaroの広告についても触れられている。Lillyの広告は2021年実施のSurpass-2試験を根拠に、MounjaroがOzempicよりHbA1Cを著しく低下させると訴求してきた。ただこの試験が比較したのは、Mounjaroの複数用量(5mg、10mg、15mg)に対し、Ozempicは1mgの単一用量のみとなっている。その翌年の2022年、FDAはOzempicの高用量2mgを承認しているため、構図としては肥満症領域と似ている。

Novo社の法務顧問は「Lillyのキャンペーンが流れるたびに、患者はZepboundとMounjaroへ誘導され、WegovyとOzempicが劣っているという誤った印象が定着し、Novo Nordiskが何十年もかけて築いてきた信頼が損なわれる。金銭的な賠償では、その損害を元に戻せない」と法廷文書で述べている。同社は消費者調査を引用し、Zepbound広告を見た人の30%超が「ZepboundはWegovyより著しく減量効果が高い」という誤ったメッセージを受け取ったと回答したとしている。
対するLillyの広報担当者は「Head-to-head臨床試験は、薬剤比較における最も強力なエビデンスだ。SURMOUNT-5とSURPASS-2は、tirzepatideとsemaglutideを直接比較した唯一のhead-to-head無作為化試験であり、Novo Nordiskはその結果の共有を止めさせようとしている」と反論している。「Novo Nordiskは、自社の最高用量セマグルチドとLillyのtirzepatide製剤を、どの臨床試験でも比較したことがない。訴訟を使って、試したことのない比較を進めようとしているにすぎない」と付け加えた。Lillyは広告に小さな注記を追加し、Wegovyの高用量が「その後承認された」旨を明記しているが、Novoはこれでは不十分だとしている。

つまり、Head to head試験を用いたプロモーションをLilly側は続けているが、それにはNovo社が新たに承認を得た高用量製剤が含まれていない。ただ、その製剤の承認は試験が終わった後になっている。そのため、比較対象が古くエビデンスとしてはもう正しくないため広告がミスリーディングになるというノボ社の主張と、科学的な比較的エビデンスとしてはCMで使われているものが最新なのでそれを使い続けることは正しいというLilly社の主張による法廷闘争となる。

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この訴訟は、まだ始まったばかりで、Novoが8月17日までに申し立てるとしている予備的差止命令の動議が認められればLillyは該当広告を一時的に止める必要がある。最新の直接比較エビデンスを是とするのか、最新の用量が発売されていること(市場環境)を是とするのか、法的判断が注目される。

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