厚生労働省が令和8年版の厚生労働白書を公表した。今年の特集テーマは「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」で、2部構成となっている。第1部が年ごとに設定する特集で、第2部が労働、年金、医療、介護、健康など各分野の施策の報告にあたる。

白書は冒頭で、医療・介護・障害福祉の現場が人手不足や物価上昇の影響に直面していること、2040年頃に高齢者人口がピークを迎える一方で生産年齢人口は大きく減ると見込まれることを挙げている。
実際の数字で見ると、労働者人口は医師約33万人、看護職員約175万人、介護職員約213万人、障害福祉サービス等事業所の職員約132万人で、全就業者に占める医療・福祉の就業者の割合は2005年の8.7%から2025年には13.9%に上がっている。

しかし、2025年度の有効求人倍率は、看護関係職種が2.10倍、介護関係職種が3.98倍、障害福祉関係職種が3.28倍で、全職業の1.10倍を大きく上回っており人手が足りていないことを示している。
看護師学校養成所の入学者も2018年の54,483人をピークに減り続けており2025年度は48,424人、介護福祉士養成施設の入学者は2010年の15,771人から2025年度は7,970人に減っている。定員充足率は58.6%で、その半数以上を外国人留学生が占める。

有効求人倍率と養成課程の入学者数(令和8年版厚生労働白書をもとに筆者作成)
有効求人倍率と養成課程の入学者数(令和8年版厚生労働白書をもとに筆者作成)

さらに医療機関の経営も厳しく、2024年度に医業利益が赤字だった病院は全体の67.2%で一般病院では72.7%にのぼっている。

この人手不足に対してテクノロジーの活用による生産性の向上が述べられており、テクノロジーの導入や活用が、単に機器やシステムを導入することによって自動的に成果をもたらすものではなく、現場における主体的な工夫と一体となってはじめて効果を発揮すると記載されている。

白書が成果として明記したものには、結核が罹患率が低まん延国の水準を達成し2024年の罹患率は8.1まで下がったこと、脳死下での臓器提供者が2025年度に155名で過去最多となったこと、障害者の雇用者数が22年連続で過去最高を更新したこと、男性の育児休業取得率が2024年度に40.5%で過去最高となったこと、がん検診が一部のがん種で受診率50%を達成したことなどが述べられている。

続いて製薬に関わる施策について、各トピックごとにまとめる。

■ 後発品:使用割合は目標達成
後発医薬品の使用割合は2005年の数量シェアは32.5%だったが、2025年9月の医薬品価格調査で数量シェア88.8%、金額シェア68.7%だった。全国の数量シェアと金額シェアは、すでに目標の水準を上回っているが、後発品を中心に特定の医薬品で需給のひっ迫が続いていることも指摘されている。

後発医薬品の使用割合と目標(同白書をもとに筆者作成)
後発医薬品の使用割合と目標(同白書をもとに筆者作成)

■ 安定供給:法律改正で責任者を配置
2025年5月に公布された改正薬機法は、医薬品の製造販売業者に、安定供給体制を管理する責任者を置くことを義務付けた。

■ 創薬力とドラッグ・ロス:薬事規制の見直し
日本の創薬力について厳しい認識を示しており、世界の売上上位の医薬品に占める日本起源の品目が減り、世界市場でのシェアも下がっており、ドラッグ・ロスの拡大も課題として挙げられている。
この改善のために薬事規制の見直しが記載されており、小児用・希少疾病用医薬品を中心にドラッグ・ロスの解消を図るため、希少疾病用医薬品の指定要件の運用を見直し、小児用医薬品の開発計画を策定する仕組みを整え、国際共同治験を始める前の日本人第Ⅰ相試験の実施を原則不要とする取扱いを示している。

■ 研究開発とベンチャー支援
AMEDを通じた研究開発には、2026年度に医療研究開発推進事業費補助金等として約481億円が充てられている。それ以外にも、ベンチャーについては2025年度補正予算で革新的医薬品等実用化支援基金を約241億円で造成、医療系ベンチャーの相談窓口MEDISOは2025年末までに1,912件の相談に対応、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心となる臨床研究中核病院は2026年4月1日時点で16病院まで増加。

■ 医療データ:二次利用の法整備
医療データの利活用では、2025年の医療法改正で、公的データベースの仮名化情報の利用・提供を可能にした。次世代医療基盤法のもとでは、2026年3月時点で三つの認定作成事業者が約619万人分の医療情報を収集し、114件の利活用につなげている。

■ 薬価制度
2026年度の薬価改定では、市場拡大再算定の類似品に対する適用(いわゆる共連れ)を廃止し、長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却を進める観点から、長期収載品の薬価のさらなる適正化を行った。

■ 再生医療・難病
再生医療等製品は、これまでに23製品が承認されており、難病対策では、指定難病を難病法の施行前の56疾病から348疾病に、小児慢性特定疾病を514疾病から801疾病に広げてきている。