富士フイルム富山化学が2026年5月8日、半月板損傷に対する再生医療等製品「セイビスカス®注」の製造販売承認を取得した。半月板損傷を適応とする再生医療等製品としては国内初である。
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/13571
セイビスカス注は患者数が比較的多い半月板切除術が適応となる半月板損傷を対象としている。日本では半月板手術は年間約5万件実施されており、そのうち約5割が半月板の切除術である。短期的には症状の改善が認められるものの、長期的には変形性膝関節症の進行リスクが高まることが指摘されており、半月板を温存するという考え方が近年の整形外科領域で広く浸透している。
そこでセイビスカス注は、患者自身の膝の内部から採取した滑膜組織から自家滑膜間葉系幹細胞を分離・培養して投与することで損傷部の修復を促進する。
富士フイルムが整形外科領域で画像診断と治療を統合する戦略を進めており、3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」の「膝関節解析ソフトウエア」を提供している。診断(画像解析)→治療(細胞治療)→術後管理(画像追跡)という整形外科向けエコシステムを構築していく方向性。
再生医療等製品全体を俯瞰すると、2014年の薬機法改正で再生医療等製品の承認カテゴリーが新設されてからこれまで、承認されている製品は23品目となった。2026年はiPS由来製品2製品も承認されたため、合計3製品が承認されている。

23品目をモダリティ別に見ると、ヒト体細胞加工製品(CAR-T等)が9品目、ヒト体性幹細胞加工製品(間葉系幹細胞等)が8品目、ウイルスベクター製品(遺伝子治療)が4品目、ヒト人工多能性幹細胞加工製品(iPS)が2品目という構成になっている。

ヒト体細胞加工製品(CAR-T等、9品目)ではCAR-T療法(キムリア・イエスカルタ・ブレヤンジ・アベクマ・カービクティ)が血液がん領域でレッドオーシャンになっている。

ヒト体性幹細胞加工製品(間葉系幹細胞等、8品目)
間葉系幹細胞(MSC)を使った製品が中心で、整形外科(セイビスカス注、新規)、神経領域(アクーゴ、ステミラック注)、眼領域(ネピック、オキュラル、サクラシー)などが適応になっている。

ウイルスベクター製品(遺伝子治療、4品目)

AAV(アデノ随伴ウイルス)等のベクターを使った遺伝子治療製品で、いずれも超希少疾患を対象とする。1回投与で持続的な効果を狙う「one-shot therapy」の設計で、薬価が極めて高額になる傾向がある(ゾルゲンスマは1億6,707万円)。
ヒト人工多能性幹細胞加工製品(iPS、2品目)

両製品とも2026年3月6日承認。iPS細胞研究の発祥地である日本で、初めての本格的なiPS由来製品の上市となる。
一方で、条件及び期限付き承認となったものの市販後の有効性検証で承認失効に至った製品もある。テルモのハートシート(自家骨格筋芽細胞シート、重症心不全)は2015年に世界初の細胞シート製品として条件期限付き承認を取得したが、2024年に最終的な有効性が確認できず承認失効となった。アンジェスのコラテジェン筋注用(HGFプラスミドDNA、慢性動脈閉塞症)も2019年の条件期限付き承認後、本承認に至らず2024年に承認失効した。
これらの撤退事例は、患者数が極めて少ない希少疾患領域で十分な治験症例数を集められないこと、対照群を設定しにくいこと、長期効果の検証に時間がかかることなどが背景にある。富士フイルムのセイビスカス注は単群多施設共同試験19例での承認だが、市販後の有効性追跡が今後どうなるか注目される。