武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOの2026年3月期の報酬総額が23億1500万円だったことが、6月17日開示の有価証券報告書で明らかになった。前期から約7%増え、トヨタ自動車の豊田章男会長(21億1300万円)を上回るということで、SNSなどでの論調は“高すぎる”というのが中心かと思う。
23億1500万円の内訳は基本報酬が3億6500万円、業績連動の賞与(STI)が2億4900万円、であり、大半は株式報酬となっている。武田の株式報酬は業績に連動する業績連動株式ユニット(PSU、開示額10億5500万円)と継続勤務を条件とする譲渡制限付株式ユニット(RSU、約6億4600万円)から構成されている。両者を合わせた株式報酬は約17億円で、総額の約7割となっており、固定の基本報酬は全体の2割に満たない。

国内のCEO報酬で比較すると、圧倒的に高い水準に入る。前述の通りトヨタの豊田会長よりも高く、他の国内トップ製薬であるアステラス製薬の岡村CEO(7.3億)、第一三共の奥澤社長 (2.5億)よりはるかに高い。

年度は古いが、報酬を従業員の中央値で割った「ペイレシオ」でも、武田は
192.5倍と、アステラスの41.5倍を大きく上回る。
一方で、比較対象を世界のメガファーマのCEOとすると、高すぎるわけではない。2025年にはリリーCEOが約3650万ドル、J&J CEOが3280万ドル、アッヴィCEOが3250万ドル、ノバルティスCEOが3240万ドル、ファイザーCEOが2760万ドルとなり、上位12社の平均は約2700万ドルに達している。

https://www.biospace.com/business/lilly-j-j-ceos-top-pharmas-highest-paid-list-again
https://www.mmm-online.com/news/big-pharma-ceo-compensation-2025/
ウェバー氏の23億1500万円は、1ドル150円で約1500万ドルなので、主要メガファーマと比較して高い水準ではない。Pay ratioで見ても、米大手はファイザー277倍、J&J293倍、リリー243倍、メルク191〜219倍で、武田の192倍はむしろ低い部類に入る。
次に、達成した成果に対して適切な報酬金額なのかという観点で。ウェバー氏は2019年のシャイアー買収(約6兆円)などの大型M&Aで、売上高約4.5兆円のグローバル創薬企業へ成長させている。在任10年で売上高は約1.8兆円から約2.5倍に拡大し、世界15位圏内に入るようになった。一方で有利子負債は2019年3月末に約5.75兆円(買収前の約6倍、EBITDAの約4.7倍)に膨らみ、その後の多くを資産売却によるデレバレッジを行なっている。資本効率を示すROEは約2%強、株価純資産倍率(PBR)も約1.0倍と、規模に見合う水準とは言い難い。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65623670Z21C20A0DTB000/
https://irbank.net/E00919
https://note.com/pharma_manage/n/nb37275663244
さらに2026年3月期の連結最終損益は、訴訟引当金の計上もあり約1523億円の赤字となった。2027年3月期も純利益は13%減の見通しとなっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL080HF0Y6A600C2000000/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB130Q70T10C26A5000000/
まとめると、国内では突出して高い報酬額だが、世界の大手と比べればそうではない。ただ、足元の成果は報酬の伸びに追いついているかどうかは議論が分かれるところかと思われる。
製薬は成果が出るまでのスパンが基本的に長いため、今後後任の社長が出す成果で評価が決まっていく。