何が発表されたか
UCBは2026年9月30日午前7時(CET、ブリュッセル)、中等症から重症の化膿性汗腺炎(HS)を対象としたビメキズマブ(製品名BIMZELX)の新しいデータを発表した。診断からの期間が短い患者ほど3年時点の炎症性病変の完全消失率が高く、生物学的製剤未治療(バイオナイーブ)の患者では排膿性トンネルの完全消失率が高いという内容で、いずれもBE HEARD試験の事後解析である。データはオーストリア・ウィーンで9月30日から10月3日まで開かれる欧州皮膚科・性病科学会(EADV)2026年次集会で、HS関連の9演題の一部として発表される。
主な数値は次のとおり。診断からの罹病期間が最も短い四分位群(2.38年未満、n=97)では、3年時点のIHS4-55/75/90/100達成率がそれぞれ89.7%、79.4%、62.9%、47.4%。最も長い四分位群(10.74年以上、n=81)では91.4%、70.4%、53.1%、33.3%だった。IHS4-100は炎症性病変の完全消失に相当する。
排膿性トンネル(DT)については、バイオナイーブ患者の平均DT数がベースラインの3.3本から3年時点で0.8本に、生物学的製剤既治療患者では5.6本から1.3本に減少した。ベースラインのDT数が1〜2本、3〜5本、5本超の各群で3年時点にDT=0を達成した割合は、バイオナイーブで78.8%、69.1%、48.3%、既治療で80.0%、42.1%、35.5%。1年時点ではバイオナイーブが66.7%、50.8%、36.8%、既治療が50.0%、37.0%、14.3%だった。
さらに、排膿の有無を問わない総トンネル数(TT)の解析では、BKZ Total群868例のベースラインでTT=0が14.5%、DT=0が27.0%。1年を完了した613例では、TT=0が30.7%、DT=0が56.6%に達した。TTに占めるDTの割合は16週時点の37.3%から1年時点で31.3%に低下した。
背景にある試験とデータの性質
これらは、中等症から重症のHS成人患者を対象とした第3相BE HEARD I・IIと、その継続試験であるBE HEARD EXTに基づく。48週のBE HEARD I・IIを完了した患者はBE HEARD EXTに登録でき、36・40・44週のHiSCR90反応の平均に応じて、非盲検でビメキズマブ320 mgを2週ごと(Q2W)または4週ごと(Q4W)投与された。Q4W群のうち一定の改善を維持できない患者は、治験責任医師の判断でQ2Wへ増量が可能だった。3年目のプロトコル改訂承認後は、BE HEARD EXTの全患者がQ4Wを受けた。承認されている用法・用量は、320 mgの皮下注射を16週までQ2W、その後320 mgをQ4Wである。報告値はobserved case(OC)ベースで、3年データはBE HEARD I・IIでビメキズマブに割り付けられ148週まで完了した患者(BKZ Total群、N=367)に基づく。BE HEARD I・IIの1年を完了してBE HEARD EXTに入った患者は556例である。
QOLに関しては、DLQI総スコア平均がベースライン11.0から3年時点で4.5に低下し、DLQI 0/1達成が38.1%、0〜5達成が71.7%。HiSQOL総スコア14以下の割合は24.1%から76.4%に増えた。HSSQの皮膚の痛み、かゆみ、におい、排膿・滲出の平均スコアは、ベースラインの5.8、4.9、4.6、5.1から3年時点で2.0、2.4、2.1、2.1へ低下した。
安全性は、BE HEARD I・IIとEXTでビメキズマブを1回以上投与された995例、曝露2,118.6患者年(PY)の解析で、いずれかの治験下発現有害事象(TEAE)のEAIRは243.3件/100 PY。頻度の高いTEAEは化膿性汗腺炎19.6、コロナウイルス感染14.1、口腔カンジダ症9.3(いずれも100 PY当たり)。真菌感染のEAIRは22.4/100 PY、うちカンジダ感染は13.5/100 PYで、口腔カンジダ症9.3、外陰腟カンジダ症2.1だった。UCBは、3年までの曝露延長で新たな安全性シグナルやリスク上昇は認められなかったとしている。ビメキズマブは、IL-17Aに加えIL-17Fを選択的に阻害するよう設計された初めての、かつ唯一の承認薬である。
業界にとっての意味
今回の訴求点は「早期介入」である。罹病期間の短い群と長い群で、IHS4-55の達成率は89.7%対91.4%とほぼ差がない一方、最も厳しいIHS4-100では47.4%対33.3%と開く。つまり、一定の改善はどの段階でも得られるが、完全消失という高い基準では診断からの時間が結果を左右する、という読み方になる。生物学的製剤未治療群でDT消失率が高い点も同じ方向を向く。
もう一つは、評価指標の拡張だ。これまでHSの評価は排膿性トンネルが中心だったが、今回は排膿していないトンネルを含む総トンネル数が指標として示され、1年時点でTT=0が30.7%に達したと報告された。Zucker School of Medicineの皮膚科初代主任であるAmit Garg教授は、これをHS治療が総トンネル数を減らすことを示す初めてのエビデンスであり、疾患進行への影響の可能性を示唆するものだと述べている。構造的損傷を不可逆的なものとして扱うか、介入の対象として扱うかは、臨床試験のエンドポイント設計にも関わる論点になる。
UCBはEADV 2026で計23演題を発表する。内訳はビメキズマブがHS、乾癬、乾癬性関節炎、体軸性脊椎関節炎にまたがる21演題、アトピー性皮膚炎を対象とするガルボキミグが1演題、HS患者のアンメットニーズに関するものが1演題。ガルボキミグはアトピー性皮膚炎、COPD、非嚢胞性線維症性気管支拡張症で臨床試験中であり、世界のいずれの規制当局からも承認されていない。UCBの最高医学責任者Donatello Crocetta氏は、早期介入が疾患進行の予防につながる将来を支えるデータだとコメントしている。なお、今回の有効性データはいずれも事後解析である点は、読む側が踏まえておく必要がある。