何が決まったか
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ジョンポール・プリシーノ)は2026年9月16日、「ファビハルタ®カプセル200mg」(一般名:イプタコパン塩酸塩水和物)について、成人IgA腎症に対する効能又は効果の追加承認を取得した。承認取得日は2026年9月16日。製造販売元は同社である。
今回の追加により、日本における同剤の効能又は効果は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、C3腎症、IgA腎症の3つとなった。用法及び用量は「通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する」。なお「効能又は効果に関連する注意」および「用法及び用量に関連する注意」の詳細は、電子化された添付文書に記載されている。
ファビハルタは、IgA腎症における糸球体炎症および腎障害の主な促進因子の1つである補体第二経路を選択的に標的とするようデザインされた経口の補体B因子阻害剤であり、同社の発表によれば、日本で承認された最初でかつ唯一の経口補体B因子阻害剤である。補体B因子を阻害することで、持続する補体介在性の損傷を軽減し、疾患の進行を遅らせることを目指す。
承認の根拠となった試験データ
今回の承認は、主に国際共同第III相試験(APPLAUSE-IgAN試験/A2301試験)の結果に基づく。同試験は、生検により確認されたIgA腎症患者477例(日本人28例を含む)を対象に、ファビハルタ200mgを1日2回経口投与したときの有効性および安全性を評価した、多施設共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験である。患者はファビハルタ群またはプラセボ群に1:1の割合でランダム化され、最長24ヵ月間追跡された。
結果として、ファビハルタは24ヵ月で推定した年換算eGFR total slopeにおいて、プラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的にも意義のある腎機能低下の抑制を示した。腎不全への進行リスクは43%低減し、腎機能低下は49.3%抑制された。また、2年間にわたって尿蛋白の持続的な減少を示し、良好な安全性プロファイルが確認されたとしている。
これまでの治療環境
IgA腎症は進行性の自己免疫性腎疾患で、若年でも発症し、患者の最大40%は診断から20年以内に腎不全に進行するとされる。毎年、全世界で100万人あたり約25人が新たに診断されている。腎臓の小さな濾過装置である糸球体の炎症、尿中の過剰な蛋白、推算糸球体濾過量(eGFR)の進行性の低下を引き起こし、進行すると多くの場合、長期の疾患管理の一環として透析や腎移植が必要となる。患者はしばしば精神的および社会的問題にも直面する、と同社は説明している。
これまでIgA腎症に対して病態生理を標的とした治療法はなく、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を含む支持療法による治療が行われてきた。しかし、これらの治療によっても疾患進行を十分に抑制できない患者が存在し、腎不全への進行リスクを抱える患者に対して新たな治療選択肢が求められていた。支持療法は疾患の根本原因を標的としておらず、多くの場合、疾患進行を遅らせることができないため、標的療法の必要性が高まっていたという位置づけだ。
業界にとっての意味
今回の承認の要点は、IgA腎症の治療選択肢に、補体第二経路という作用機序を明示した経口薬が加わったことにある。支持療法が中心だった領域で、発表のとおり病態生理を標的とする薬剤が位置づけを得たことは、治療の組み立て方そのものに関わる変化といえる。
また、ファビハルタは今回の追加でPNH、C3腎症、IgA腎症の3つの効能又は効果を持つことになった。補体経路という共通の機序を軸に、希少疾患から患者数のより多い腎疾患へと適応を広げた形であり、1つの作用機序を複数の疾患に展開する開発のあり方を示す事例となる。
APPLAUSE-IgAN試験には日本人28例が組み入れられており、国際共同第III相試験を根拠とした日本での適応追加という構図も明確である。
プリシーノ社長は「今回のファビハルタの承認は、腎不全への進行リスクを抱える患者さんに新たな治療選択肢をお届けするだけでなく、患者さんのより良い未来につながる重要な一歩でもあります」と述べ、40年以上にわたる腎疾患領域での知見を活かし、医療従事者や患者団体とともに取り組む姿勢を示した。同社は腎疾患のパイプラインについて、疾患の根本治療を標的とし、透析や移植への移行を遅らせる、または防ぐことを目指すとしている。