何が発表されたか

Rakuten Medical, Inc.(本社:米国カリフォルニア州サンディエゴ)は、2026年10月23日午前8時(中央ヨーロッパ時間)、スペイン・マドリードで開催中の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026年年次総会において、再発または転移性の頭頸部扁平上皮がんを対象にASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)とペムブロリズマブの併用療法を評価した第Ib/II相臨床試験(ASP-1929-181試験、NCT04305795)の長期追跡結果をポスター発表した。演題は「Long-Term Results of ASP-1929 Photoimmunotherapy with Pembrolizumab in Patients with Recurrent/Metastatic Head and Neck Squamous Cell Carcinoma」。

データカットオフは2026年2月10日。本試験には19例の再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者が登録され、このうち有効性評価が可能であった17例について長期追跡解析が行われた。

主な結果は以下のとおり。全生存期間(OS)中央値は28.2ヵ月。推定生存率は36ヵ月時点で47.1%、48ヵ月時点で35.3%。完全奏効(CR)を達成した5例(29%)のうち、4例は42ヵ月超から60ヵ月超の追跡期間時点で生存していた。奏効期間(DOR)中央値はデータカットオフ時点で44.3ヵ月。奏効患者のうち4例は、治験治療終了後も追加の抗がん治療を受けることなく経過した。新たな安全性シグナルは認められなかった。

あわせて、ベースライン時のHPVステータス、PD-L1発現CPS、腫瘍サイズ別の探索的サブグループ解析も報告され、有効性および安全性に大きな差異は認められなかったとしている。

これまでの経緯

ASP-1929-181試験については、これまでに有効性・安全性の解析結果が発表されており、追跡期間中央値31.7ヵ月時点で、持続的な臨床活性と管理可能な安全性プロファイルが示されていた。今回の解析は、追跡期間をさらに21.4ヵ月延長し、追跡期間中央値53.1ヵ月時点のデータをまとめたものにあたる。

ASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、楽天メディカルがアルミノックス®プラットフォームを基に開発した最初の薬剤で、抗EGFR抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体である。ASP-1929が標的がん細胞に集積した後、専用のレーザ照射システムで波長690 nmのレーザ光を照射することで局所的に励起され、光化学反応により細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられている。アルミノックス®プラットフォームは、米国国立がん研究所の小林久隆氏らが開発したがん光免疫療法が基となっている。

日本では、先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、条件付き早期承認制度の適用のもと申請が行われ、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得している。日本以外の規制当局による製造販売承認は受けていない。

第III相試験と申請計画

楽天メディカルは現在、局所再発頭頸部扁平上皮がんに対するファーストライン(一次)治療として本併用療法をさらに検討する国際共同第III相臨床試験(ASP-1929-381試験、NCT06699212)を実施している。同社は、この第III相試験の結果をもとに、2028年に米国でASP-1929の申請を行うことを目指すとしている。

意味するところ

今回示された数字のうち、DOR中央値44.3ヵ月、48ヵ月時点の推定生存率35.3%、そしてCR5例中4例が42ヵ月超から60ヵ月超の時点で生存していたという点は、再発・転移性の頭頸部扁平上皮がんという領域において、奏効がどの程度持続しうるかを長い時間軸で示したデータといえる。奏効患者のうち4例が治験治療終了後に追加の抗がん治療を受けずに経過したという記述も、治療後の経過を考えるうえでの材料になる。

ただし、会社側自身が断っているとおり、本ポスター発表の結果は探索的なものであり、症例数が少ないこと、一部のサブグループ解析では患者数が限られていることなど、試験の限界を踏まえて解釈する必要がある。有効性評価が可能であった症例は17例にとどまる。HPVステータスやPD-L1発現CPS、腫瘍サイズ別で大きな差異が認められなかったという所見も、この症例数の制約のなかで読む必要がある。

そのうえで会社側は、これらの結果がASP-1929-381試験で本併用療法を引き続き評価する意義を示すものだと位置づけている。日本では2020年9月に単剤での承認を得ている一方、日本以外では承認がない。併用療法を一次治療として検証する第III相試験と、2028年の米国申請という目標が、今後の評価軸になる。