米アムジェンの二重特異性抗体タルラタマブ(米国の製品名Imdelltra、日本の製品名イムデトラ)を使った第3相試験DeLLphi-305の結果が、2026年10月24日に欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の会長シンポジウムで発表され、同日に米医学誌NEJMに論文が掲載された。進展型小細胞肺がんの1次治療の後の維持療法で、デュルバルマブ(製品名イミフィンジ)にタルラタマブを上乗せしたところ、全生存期間(OS)の中央値は21.1か月となり、デュルバルマブ単独の12.7か月を上回った。死亡のハザード比は0.42であり、死亡率を58%引き下げたことになる。
XなどSNSでも多く引用されて話題となっており、業界誌によれば会場ではスタンディングオベーションが起きたとされる。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2609482
タルラタマブは、がん細胞の表面にあるDLL3と、T細胞の表面にあるCD3の両方に結合する抗体で、二重特異性T細胞誘導抗体と呼ばれる。アストラゼネカによると、DLL3は小細胞肺がんの患者の約85〜96%で発現しており、小細胞肺がんは肺がんの13〜15%を占めている。アムジェンによると肺がんは世界で年260万人以上が新たに診断されているが、広い範囲に広がった進展型では化学療法と免疫チェックポイント阻害薬による1次治療を受けてもOSの中央値は約12〜13か月とされる。
https://www.astrazeneca-us.com/media/press-releases/2026/IMFINZI-durvalumab-plus-tarlatamab-dlle-reduced-the-risk-of-death-by-58-percent-in-1st-line-extensive-stage-small-cell-lung-cancer-in-the-DeLLphi-305-Phase-III-trial1.html
https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2026/09/imdelltra-in-combination-with-imfinzi-demonstrated-landmark-improvement-in-overall-survival-in-first-line-extensive-stage-small-cell-lung-cancer
米国では2024年に、化学療法の後に再発した小細胞肺がんで迅速承認を受け、2025年に2次治療の第3相試験DeLLphi-304の結果をもとに本承認となった。日本では2024年12月27日に承認され、2025年4月に販売が始まっている。効能・効果はがん化学療法後に増悪した小細胞肺癌で、DeLLphi-304(日本人35人を含む509人)では、OSの中央値は13.6か月対8.3か月(ハザード比0.599)で、対照の標準治療は日本ではアムルビシンだった。アムジェンの四半期報告書によるとタルラタマブの2026年4〜6月期の売上は2億8,800万ドルで、前年同期の1億3,400万ドルから順調に増加している。
https://www.fiercepharma.com/pharma/amgen-dll3-targeted-imdelltra-scores-overall-survival-win-first-line-small-cell-lung-cancer
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/4291477D1029 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0000318154/000031815426000126/amgn-20260630.htm
DeLLphi-305はアムジェンが主導しアストラゼネカが資金の一部とデュルバルマブを提供した国際共同の非盲検試験で、対象はプラチナ製剤とエトポシドによる化学療法を4サイクル受け、そのうち3サイクル以上でデュルバルマブを併用し、病勢が進行していない成人の進展型小細胞肺がんの患者。563人をタルラタマブ+デュルバルマブ(282人)とデュルバルマブ単独(281人)に1対1で割り付けており、29か国175施設が参画している。
タルラタマブは1日目に1mg、8日目と15日目に10mgを投与し、その後は2週ごとに10mgを60分かけて点滴した。主要評価項目はOS、主な副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、いずれも維持療法の開始時点から数えている。
日本からは国立がん研究センター中央病院の吉田達哉先生(第2著者)と九州大学病院の大坪孝平先生が著者に入っている。
追跡期間の中央値は併用群15.9か月、単独群16.1か月で、OSの中央値は21.1か月(95%信頼区間20.8〜推定不能)対12.7か月(同11.2〜14.8)、ハザード比は0.42(同0.32〜0.54、p<0.001)だった。生存していた患者の割合は、6か月時点で91.5%対74.6%、12か月時点で79.4%対53.3%、18か月時点で67.1%対42.4%。PFSの中央値は7.4か月対1.9か月で、ハザード比は0.34(同0.28〜0.42)だった。

併用群で観察された最も長いOSは22.5か月で、中央値の21.1か月は観察期間の終わりに近いため、論文は中央値は追跡を続けると変わりうるとしている。
有害事象は併用群の99.6%、単独群の92.8%に起きており、グレード3以上は46.8%対40.6%、重篤な有害事象は41.8%対31.7%、有害事象による入院は43.3%対32.0%。死亡に至った有害事象は4.6%対4.7%で、治療に関連する死亡は併用群でゼロ、単独群で2人(0.7%)だった。

タルラタマブに特有の副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)は、併用群の49.6%に起きた。グレード1が41.8%、グレード2が7.4%、グレード3は1人(0.4%)で、グレード4以上はなかった。
日本からは50人が参加し、トルコ(108人)、中国(102人)に次いで3番目に多かった。補足資料の治験責任医師の一覧には日本の13施設が載っており、jRCTには、国立がん研究センター中央病院・東病院、がん研究会有明病院、九州大学病院など19施設が登録されている。
