何が決まったか
BioNTech SE(Nasdaq: BNTX)は2026年10月22日、ギリアド・サイエンシズとの臨床試験共同研究および供給契約を締結し、進行中の国際第3相試験「ROSETTA Breast-01」を、開発中の二重特異性免疫調節薬pumitamigとTROP2標的抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(Trodelvy®)の併用を評価する内容へ変更する方針を明らかにした。対象は、PD-L1低発現または陰性の局所進行・転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の一次治療である。
事実:試験デザインの組み替えと役割分担
ROSETTA Breast-01(NCT07173751)は、PD-L1低発現または陰性(CPS<10)の局所進行・転移性TNBC患者を対象に、pumitamigと化学療法の併用を化学療法と比較する、グローバルな二重盲検第3相試験である。国際第2相試験の良好な結果に基づいて開始された。
今回、BioNTechとブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)は、規制当局の承認を前提に、この試験の化学療法をサシツズマブ ゴビテカンに置き換える形で試験を適合させる計画だとしている。目的は、患者が最新の標準治療を受けられるようにすることだと説明されている。
契約上、試験の治験依頼者として実施を主導するのは引き続きBioNTechで、ギリアドは併用試験用にサシツズマブ ゴビテカンを供給する。
pumitamigは、PD-L1とVEGF-Aに協調的に結合するよう設計された開発中の二重特異性免疫調節薬で、BioNTechとBMSが共同開発している。腫瘍細胞上のPD-L1に結合することで、腫瘍微小環境内にVEGF-A阻害を局在化させ、全身曝露を抑えつつ抗腫瘍活性を高める狙いがあると同社は説明する。これまでに臨床試験で4,000人を超える患者に投与されている。
背景:治療標準の変化と開発パイプライン
試験開始時点の状況について、リード治験責任医師でSt. Bartholomew's Hospitalの乳がんセンター所長であるPeter Schmid博士は、「ROSETTA Breast-01を開始した当時、PD-L1陰性の進行TNBC患者にとって化学療法が唯一の選択肢だった」と述べている。そのうえで、化学療法は一次治療の標準の一つであり続けるものの、サシツズマブ ゴビテカンのようなTROP2標的ADCが急速に新たな世界的標準治療になりつつあるとし、化学療法に対して同薬が示した改善をさらに増幅できるかを評価することへの期待を示した。
BioNTech共同創業者で最高医学責任者のÖzlem Türeci博士は、進化する標準治療を反映させることで「試験が臨床実践に、そして最終的には患者の治療判断に資する最大の機会を得られる」と説明。pumitamigを基盤(バックボーン)として、ADCなど相補的なモダリティと組み合わせることが同社の治療アプローチの中心にあると述べた。
pumitamigは現在、登録申請の可能性を持つ7本の国際第3相試験で評価されている。一次治療の小細胞肺がん(ROSETTA Lung-01、NCT06712355)、一次治療の非小細胞肺がん(ROSETTA Lung-02、NCT06712316)、切除不能なステージIII非小細胞肺がん(ROSETTA Lung-201、NCT07361497)、一次治療のPD-L1≥50%進行非小細胞肺がん(ROSETTA Lung-202、NCT07361510)、一次治療TNBC(ROSETTA Breast-01)、一次治療のマイクロサテライト安定型大腸がん(ROSETTA CRC-203、NCT07221357)、一次治療の胃がん(ROSETTA Gastric-204、NCT07221149)である。加えて10本以上の新薬同士の併用試験が進む。
TNBCは、ホルモン受容体(エストロゲンまたはプロゲステロン)とHER2タンパクを欠くことで定義され、浸潤性乳がん全体の約10〜15%を占める。進行が速く予後が悪い侵襲性の高いタイプで、転移性TNBCの5年生存率は15%にとどまる。
意味:ADC併用の「最初の第3相」
ROSETTA Breast-01は、pumitamigとADCを組み合わせる初めての国際第3相試験となる。比較試験の対照群・併用相手を、試験開始後の標準治療の変化に合わせて組み替えるという判断は、第3相を走らせながら治療環境の移り変わりに追随する設計運用の一例といえる。実施にあたっては規制当局の承認が前提であることが明記されている。
また、BioNTechとBMSは、両社の広範な腫瘍領域パイプラインを活用し、複数の固形がんでpumitamigの併用第3相を追加検討するとともに、他社との提携可能性も探るとしている。今回のギリアドとの供給契約は、自社・提携先以外のモダリティを試験に取り込む枠組みとして位置づけられる。
なお、一次治療のPD-L1陰性転移性TNBCにおけるpumitamigとサシツズマブ ゴビテカンの使用は研究段階であり、この併用の安全性と有効性は確立していない。