何が発表されたか
医薬品の売上予測・事業性評価、薬価・マーケットアクセス戦略を専門とする株式会社e-Projection(代表:長手寿明)は、2026年10月23日、米国のMFN(Most Favored Nation:最恵国待遇)政策が日本の薬価制度と新薬上市判断に与える影響を分析した緊急調査レポート「米国MFNが日本の薬価・上市判断に与える影響」を発表した。
レポートの基になったのは、専門家9名へのデプスインタビューである。内訳は薬価・政策専門家5名と、製薬業界の実務経験者・アドバイザー4名。インタビューは各60分で、調査時期は2026年8〜9月とされている。分析手法は定性分析に加え、薬剤類型別シナリオの半定量評価が用いられている。
提供形式は、本編レポートおよび別冊インタビュー記録集の日本語版PDF計2点。販売価格は日本語版が495,000円(税込)、日英セットは国内法人向け825,000円(税込)。6ページの無料サンプルが同社サイトで公開されている。
収録内容として挙げられているのは、次の5項目である。
- 日本市場とドラッグラグ・ドラッグロスの構造
- 当局の値ごろ感と薬価形成の参照軸
- MFN政策のドラッグラグ・ロスへの影響
- MFN政策の薬価水準・価格認識への影響
- 2027年・2030年の展望と戦略的示唆
誰が、どういう経緯で出したのか
同社代表の長手寿明は医学博士、MBAを保有し、武田薬品工業でフォーキャスティング・ディレクターを務めるなど、グローバル製薬企業での実務経験を持つ。著書『医薬品の売上予測とプロジェクトの事業性評価』を通じて、医薬品の投資判断や開発戦略に関する専門知識を発信してきたと説明されている。
e-Projection自体は、日本の医薬品市場に関する薬価・マーケットアクセス、事業性評価、市場分析、戦略立案等を支援するコンサルティング企業である。医薬品市場と薬価制度に関する専門知見を活用し、製薬企業等の意思決定を支援することを事業としている。
今回の調査が「緊急」と位置づけられた背景について、同社は米国中間選挙を控える中で、MFN政策が日本の薬価形成、ドラッグラグ・ドラッグロス、製薬企業の日本市場への参入判断に及ぼす可能性を検討した、と説明している。つまり、米国の価格政策の動向が、日本国内の薬価と上市判断という二つの論点に波及しうる、という問題設定である。
この切り口が意味するもの
注目したいのは、このレポートが扱う論点の組み合わせ方である。MFNはあくまで米国の政策だが、同社が立てた問いは「それが日本の薬価形成の参照軸にどう作用するか」「ドラッグラグ・ドラッグロスにどう影響するか」という、日本市場の側の構造に向けられている。
収録内容に「当局の値ごろ感と薬価形成の参照軸」という項目が置かれていることは示唆的だ。日本の薬価が何を基準に決まるのか、その参照の枠組み自体が外部の政策動向によって揺らぎうる、という見方が前提に置かれている。もしそうであれば、個別品目の価格交渉の話にとどまらず、製薬企業が日本をどの順番で、そもそも上市対象に含めるのかという判断の層に影響が及ぶ。「製薬企業の日本市場への参入判断」が検討対象に明記されているのは、その含意だろう。
また、展望の年次として2027年・2030年という二つの時点が設定されている点も、レポートの設計を示している。直近の制度改定への対応と、中期的な市場構造の変化とを分けて論じる構成と読める。
手法面では、9名という限られた人数への60分のデプスインタビューを、定性分析と薬剤類型別シナリオの半定量評価で処理している。薬剤の類型ごとに影響の出方を分けて評価するアプローチは、MFNの影響が品目の性格によって一様ではないという想定に立つものだ。
米国の価格政策を日本の事業判断にどう翻訳するか——その作業を、公開情報ではなく実務家への聞き取りという形で試みた点に、この商品の位置づけがある。