米国の医療技術評価機関ICER(Institute for Clinical and Economic Review)は2026年10月20日、West Healthと共同で「2026 Launch Price and Access Report」を公表した。2022〜2025年に米国食品医薬品局(FDA)が承認した新薬202品目の上市価格の推移と、発売1年目の患者アクセスをまとめたもので、ICERが過去に価値を評価した26品目に限るとネット価格がICERの「価値に見合う価格」の範囲内だったのは8品目のみだった。

米業界紙BioPharma Diveはこれを以て、新薬の大半は依然として上市時に高すぎる(Most new drugs are still too costly at launch)という見出しで報じている。

https://icer.org/wp-content/uploads/2026/10/ICER_2026_Launch-Price-and-Access-Final-Report_ForPublication-1.pdf
https://www.biopharmadive.com/news/icer-new-drug-launch-prices-report-2022-2025/833468/

ICERは個別の薬について、患者が生涯に得る健康上の利益に見合う価格の範囲を”Health Benefit Price Benchmark(HBPB)”として定義しており、基準は質調整生存年(QALY)1年当たり10万ドルと、ICER独自の指標である均等価値生存年(evLY)1年当たり15万ドルの2つとなっている。ネット価格がこの範囲内か下回っていれば適正な価格と定義される。

2022〜2025年に承認された202品目のうち、ICERが評価済みでHBPBがある品目は26品目で、うち範囲内だったのは8品目(31%)のみであった。品目としては膀胱がんのAdstiladrin、アトピー性皮膚炎のCibinqo、血友病B遺伝子治療のHemgenix、2型糖尿病のMounjaro、βサラセミア遺伝子治療のZynteglo、統合失調症のCobenfy、MASHのRezdiffra、急性疼痛のJournavx。

残りの18品目が範囲に入るために必要な追加値引きの中央値は、evLY基準で63%、QALY基準で71%となっており、最も大きいのはインスメッドの非嚢胞性線維症気管支拡張症治療薬Brinsupriの94.6〜95.5%で、次いでメルクの肺動脈性肺高血圧症治療薬Winrevairは82.7〜91.2%となっている。

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202品目全体では、インフレ調整後の年間ネット価格の中央値は2022年の190,553ドルから2025年の257,369ドルへと35%上がっている。一方、リスト価格の中央値は237,149ドルから293,304ドルへ24%上がっている。上昇の大半は2022年から2023年(ネット価格で+32%)。

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2025年に承認された47品目では、11品目のネット価格が年50万ドルを超え、16品目(34%)が20万〜50万ドルだった。200万ドルを超えたのは、表皮水疱症の遺伝子治療Zevaskyn(314.7万ドル)と、脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療Itvisma(258.7万ドル)の2品目。

2025年の価格が-2%でわずかに下がった理由として、高額になりやすい品目の割合が減ったことが述べられている。2025年承認品野中では遺伝子・細胞治療が9%(2022〜2024年は10〜13%)、バイオ医薬品が40%(同50〜58%)、超希少疾病の薬が11%(同18〜25%)となっており、高額品の割合が低かった。

カテゴリー別にみると、2022年から2025年にかけてネット価格の中央値は、希少疾病用医薬品で33%、バイオ医薬品で25%、がん領域で6%、低分子薬は114%、がん以外の薬は169%上がっている。一方、遺伝子・細胞治療は235.3万ドルから152.3万ドルへ35%下がっている。

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低分子薬の価格上昇について、レポートではインフレ抑制法(IRA)の影響の可能性を挙げている。IRAでは、売上の大きい薬がメディケアの価格交渉の対象となり価格を引き下げられる。交渉対象に選ばれうるのは低分子薬が承認から7年後である一方、バイオ医薬品が11年後のため企業が自由に価格を決めて研究開発費を回収できる期間が短い。業界ではこの差を、低分子薬が不利に扱われるpill penaltyと呼んでおり、結果企業は価格を上昇させている可能性がある。

また、2025年承認品のうち米国で世界最初に承認された品目は83%で、前年までの65%から増加している。MFN価格により多くの新薬は米国で先に発売され、他国での発売をさらに遅らせるという専門家の指摘も紹介されている。