何が発表されたか
ジョンソン・エンド・ジョンソン(NYSE: JNJ)は2026年10月22日(米カリフォルニア州アーバイン)、韓国・釜山で開かれたアジア太平洋不整脈学会(APHRS)2026年次学術集会のレイトブレイキングセッションで、心房細動(AF)治療に関する2つの臨床試験「VARIPURE」と「Omny-IRE」の新データを発表したと公表した。両試験の結果は、それぞれ学術誌EuropaceとHeart Rhythmに同時掲載された。
同社エレクトロフィジオロジー部門のChief Medical and Scientific Officerであるグレゴリー・ミショー氏は、「APHRSで発表されたデータは、当社のパルスフィールドアブレーション(PFA)のパイプラインとポートフォリオ全体で進展していることを示す」とコメント。VARIPULSE Proの急性期の安全性・効率性の結果と、治験段階のOMNYPULSEプラットフォームの12カ月成績が、技術を支える臨床エビデンスを強化すると述べている。
VARIPURE:VARIPULSE Proの多施設初データ
VARIPUREは、欧州19施設で治療を受けた225例を評価した試験。対象は発作性AFが65.8%、持続性AFが34.2%だった。VARIPULSE Proプラットフォームは3.8秒の新しいアブレーションパルスシーケンスを導入しており、現在、欧州、日本、その他のアジア太平洋地域およびラテンアメリカ市場で提供されている。米国では現時点で承認されていない。
主な結果は以下のとおり。
- 有効性・安全性:登録患者の急性期手技成功率は100%。主要有害事象は1件(0.4%)で後遺症なく回復し、脳卒中、冠攣縮、急性腎障害、死亡の報告はゼロ。
- ワークフロー:平均アブレーション時間は17.9分。マッピングとアブレーションを単一カテーテルで実施した症例は88.9%。
ドイツ・Herzzentrum Bad Segebergのエレクトロフィジオロジー部門長レオン・イーデン氏は「VARIPUREはVARIPULSE Proに関する初のリアルワールドデータだ」とし、安全性、急性期手技成功、カテーテルの汎用性と短いアブレーション時間が、PFA手技の効率化につながる可能性を示すと述べた。なお同氏は試験の治験医師であり、同社のコンサルタントを務めている。
VARIPUREは、SECURE試験のサブスタディとして実施された欧州の前向き・観察・多施設の市販後フォローアップ試験。手技前に患者同意を取得し、全データを電子的に収集する設計で、後ろ向きのデータ収集に比べて科学的質が高いとしている。
Omny-IRE:治験段階のOMNYPULSEで12カ月成績
Omny-IREは、症候性の発作性AF患者136例を欧州13施設で評価した試験。治験段階のOMNYPULSEプラットフォームは、接触力センシングを備えた大型チップのフォーカル型PFAカテーテルを特徴とする。
- 有効性:厳格なモニタリング下で、12カ月時点のAF・心房粗動(AFL)・心房頻拍(AT)の記録された再発からの回避率は82.5%。標準治療下のモニタリングでは90.1%。
- 安全性:有害事象発生率は2.9%で、すべての安全性イベントは回復した。
- QOL・医療資源:AFEQTスコアは平均25.5ポイント改善し、抗不整脈薬の使用と心血管関連入院が減少した。
ベルギー・OLV Hospital(アールスト)のトム・デ・ポッター氏は「新しいPFA技術を評価する医師にとって、12カ月時点で持続する有効性は、良好な急性期成績が時間を経て意味ある転帰につながるかを測る重要な指標だ」と述べた。同氏も治験医師であり同社のコンサルタントである。
Omny-IREは、欧州とカナダで実施されている前向き・多施設・非無作為化のピボタル試験で、主要構成要素はOMNYPULSEカテーテルとTRUPULSEジェネレータ。手技後7日以内の主要有害事象の発生率も評価している。
マッピングシステムの比較データと、業界にとっての意味
ポスター発表では、1,000を超える病院のデータを含むPremier Databaseの12カ月解析が示された。CARTO 3システムの使用は、EnSiteと比較してAF関連の長期的な急性期医療利用が低いことと関連し、EnSiteで治療された患者はAF/AFL/AT関連の入院再入院または救急外来受診のリスクが31%高かった。
今回のAPHRS 2026での発表は、2つの異なるPFAプラットフォームについて350例超の患者から得られたリアルワールドおよび多施設の臨床エビデンスにあたる。注目されるのは、すでに日本で提供されているVARIPULSE Proについて、多施設の前向きデータが初めて公表された点だ。平均17.9分というアブレーション時間と、88.9%で単一カテーテルによるマッピング・アブレーションが完結したという数字は、手技の標準化と効率化を評価する際の具体的な比較対象になる。
一方のOMNYPULSEは治験段階であり、12カ月時点の有効性に加え、AFEQTの改善幅や抗不整脈薬・心血管関連入院の減少といった、急性期成績の外側にある指標が示された。PFA領域の競争軸が、急性期の手技成功から長期転帰と医療資源の使用へと移りつつあることを示す発表と言える。CARTO 3とEnSiteの比較解析も、カテーテル単体ではなくマッピングを含むシステム全体で評価する視点を提示している。