何が発表されたか

メルク(米国・カナダ以外ではMSD)とモデルナは2026年10月23日、両社が共同開発する個別化ネオ抗原療法(INT)「イントイスメラン・オートジーン(intismeran autogene、V940/mRNA-4157)」と抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の併用を評価した第3相INTerpath-001試験の詳細結果を公表した。対象は完全切除されたステージIIB〜IVのメラノーマ患者。結果はESMO Congress 2026のPresidential Symposium I(演題番号LBA1)で初めて発表され、ESMOの公式プレスブリーフィングにも選ばれた。The New England Journal of Medicineへの掲載も決まっている。

主要評価項目は無再発生存(RFS)。事前規定のintention-to-treat解析で、追跡期間中央値24.6カ月時点において、併用群はキイトルーダ単剤群に比べ再発または死亡のリスクを42%低減した(HR=0.58[95% CI, 0.45–0.75]、両側p<0.001)。副次評価項目の遠隔転移無発生生存(DMFS)でも、遠隔転移または死亡のリスクを38%低減した(HR=0.62[95% CI, 0.45–0.85]、両側p=0.002)。2年RFS率は併用群82.2%(95% CI, 79.3%–84.8%)に対し単剤群70.0%(95% CI, 65.0%–74.5%)、2年DMFS率は併用群88.5%(95% CI, 86.0%–90.6%)に対し単剤群80.2%(95% CI, 75.6%–84.0%)。RFS中央値、DMFS中央値はいずれの群も未到達だった。

全生存期間(OS)のデータはまだ成熟しておらず、併用群で良好な傾向が観察されているとされる。試験はOSなどの評価を続けるため継続中である。安全性プロファイルは併用療法の既報と概ね一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。両社は「これらのデータに基づき規制当局と協議している」としている。

効果は6カ月を境に分かれた

今回の発表で特徴的なのは、時間経過による効果の違いが明示された点だ。最初の6カ月間は、再発または死亡のリスク(HR=0.99[95% CI, 0.66–1.49])、遠隔転移または死亡のリスク(HR=1.01[95% CI, 0.58–1.79])ともに、併用群とキイトルーダ単剤群で同等だった。一方、イントイスメランの免疫化レジメンを終えた6カ月以降を対象とした事前規定の感度解析では、再発または死亡のリスクが58%低減(piecewise HR=0.42[95% CI, 0.30–0.58])、遠隔転移または死亡のリスクが半減(HR=0.50[95% CI, 0.34–0.73])した。

また、イントイスメランまたはプラセボを予定どおり1回以上投与されなかった被験者を除いたmITT集団の事前規定感度解析では、再発または死亡のリスクが49%低減(HR=0.51[95% CI, 0.39–0.67])、遠隔転移または死亡のリスクが45%低減(HR=0.55[95% CI, 0.40–0.77])した。

安全性については、治療関連有害事象(TRAE)が併用群で95.8%(755例中723例)、単剤群で90.0%(380例中342例)に発現。グレード3〜5のTRAEはそれぞれ14.2%(n=107)と13.4%(n=51)だった。併用群で最も多かった有害事象は発熱(52.2%)、注射部位疼痛(51.0%)、疲労(38.5%)である。

試験設計と、ここに至るまで

INTerpath-001(NCT05933577)は、高リスク(ステージIIB〜IV)の切除皮膚メラノーマ患者1,137例を登録した無作為化二重盲検の国際第3相試験で、プラセボと実薬の両方を対照に置く設計。完全切除後、2対1で割り付け、併用群にはイントイスメラン1mgを3週ごと最大9回、キイトルーダ400mgを6週ごと最大9サイクル(約1年間)投与した。対照群はプラセボとキイトルーダを約1年間、疾患再発または許容できない毒性が生じるまで、もしくは総治療期間約56週のいずれか早い方まで投与した。主要評価項目のRFSは、無作為化から治験医師評価による局所・所属領域・領域・遠隔のいずれかの再発、または全死因死亡までの期間と定義されている。主な副次評価項目はDMFS、OS、安全性、忍容性、QOL。

イントイスメランは、患者の腫瘍検体から各患者固有の変異シグネチャーを同定して設計・製造されるmRNAベースのINTで、first-in-classとなる可能性がある治験薬。腫瘍と正常DNA由来の情報から「設計図」を作り、最大34のネオ抗原をコードする合成mRNAで構成される。投与後、体内で翻訳されたネオ抗原配列が免疫系に提示され、がん細胞に対するT細胞応答を誘導する仕組みだ。

今回の結果は、アジュバントメラノーマを対象とした第2b相KEYNOTE-942/mRNA-4157-P201試験の既報データ(2026年ASCO年次総会で発表された5年追跡データを含む)の上に積み上がったものだ。両社はINTerpath開発プログラムとして、現在9本の第2相・第3相試験を複数のがん種・病期で進めており、うち3本は非小細胞肺がん(NSCLC)の第3相である。このほか、アジュバント膵管腺がん(Abstract #3151P)、周術期胃がん、周術期NSCLCを探索する第1相試験もある。

何が変わるのか

切除後メラノーマにおけるキイトルーダ単剤は、KEYNOTE-054およびKEYNOTE-716の結果に基づき、ステージIIB・IIC・IIIの術後補助療法として確立した選択肢となっている。今回、その標準治療に上乗せしてRFSとDMFSの改善を示した第3相試験が出たことの意味は小さくない。メルク・リサーチ・ラボラトリーズのDean Y. Li社長は、切除メラノーマでキイトルーダ単剤を上回るRFSとDMFSの臨床的に意味のある改善を示した初の第3相試験であり、術後補助療法で新たなベンチマークを設定したと述べている。

治験責任医師でメラノーマ・インスティテュート・オーストラリア医療ディレクターのGeorgina Long教授は、がん治療は長年、腫瘍がどこで生じたかによって規定されてきたとしたうえで、本試験の知見は患者固有の変異シグネチャーに治療を合わせる個別化アプローチを支持するものだと説明した。モデルナのStéphane Bancel最高経営責任者は、mRNA技術によって患者ごとの腫瘍に合わせたがん治療が可能になるという当初からの考えを裏づける結果だとコメントしている。

資料によれば、メラノーマは2024年に世界で33万8,000件超が新たに診断され、米国では2026年だけで約11万2,000件の新規診断と8,500人超の死亡が見込まれる。切除後の再発は術後2年以内に起きることが多く、再発患者の半数超が1つ以上の遠隔転移を生じる。この再発リスクの窓に対して、何を上乗せできるかが問われてきた領域だといえる。承認の可否は今後の規制当局との協議次第であり、OSを含む主要エンドポイントの評価も継続中である。