2026年7月9日、AstraZenecaはIonisと共同開発する薬剤Wainua(一般名エプロンテルセン)の第III相試験CARDIO-TTRansformが、主要評価項目を達成できなかったと発表した。対象はトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)。発表を受けてAstraZeneca株は約9%下落し、時価総額でおよそ190億ポンド(約3.8兆円)が消失した。
Endpoint newsなどはこれを“AstraZeneca sinks on unexpected heart drug trial failure”と題してBreaking newsで報じている。https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2026/update-cardio-ttransform-phase-iii-trial.html
https://endpoints.news/astrazeneca-sinks-on-unexpected-heart-drug-trial-failure/

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CARDIO-TTRansformは、1,432例を20カ国130施設で組み入れた、ATTR-CMとして過去最大の第III相試験だった。エプロンテルセンは、肝臓でのトランスサイレチン産生を抑えるRNA医薬で、既に遺伝性ATTRの多発神経障害では20カ国以上で承認されている。今回はそれを心アミロイドーシスへ広げるための試験だったが、主要評価項目である“140週までの心血管(CV)死とCV再発イベントの複合エンドポイント”で、プラセボに対する統計的に有意な差を示せなかった。安全性は良好で、全データは8月の欧州心臓病学会(ESC)で公表される。
https://www.stocktitan.net/news/IONS/update-on-cardio-tt-ransform-phase-3-trial-of-eplontersen-in-adults-b8cvgp6ldlgr.html

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この結果を受けAstraZeneca株はロンドン市場で約9%下落し、FTSE100(ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100社)の最大の下げ銘柄となった。メディアCitiによると、アナリストはWainuaのATTR-CMでのピーク売上を60億ドル超と見積もっており、AstraZenecaの企業価値の約2.8%に相当すると試算していた。ちなみにCitiはこの試験の成功確率を59%と見積もっていた。
https://www.investing.com/news/stock-market-news/why-is-astrazeneca-stock-plunging-today-93CH-4783068

CARDIO-TTRansformは、Wainuaを標準治療への上乗せで評価しているが、この疾患ではその標準治療が試験の進行中に急速に普及したとされている。組み入れ時点で両群とも57%が安定化剤(スタビライザー)を使用し、さらに24%が試験中に開始した結果、最終的には約81%が安定化剤を併用していた。結果として、すでに安定化剤の恩恵を受ける患者にWainuaを足しても、複合イベントに有意な上乗せ効果は出なかったとされる。IonisのモニアCEOも、この結果は現代のATTR-CM患者が広く安定化剤で治療されるという治療環境の急変を反映したものだと説明している。
https://www.stocktitan.net/news/IONS/update-on-cardio-tt-ransform-phase-3-trial-of-eplontersen-in-adults-b8cvgp6ldlgr.html
一方で安定化剤を使っていない単剤のサブグループでは有意な効果が観察されている。
https://ng.investing.com/news/stock-market-news/ionis-eplontersen-fails-primary-endpoint-in-heart-disease-trial-93CH-2592159

ATTR-CMは世界で30〜50万人と推定され、進行性で致死的な心不全の一因となっている。治療剤として用いられているのは第一に安定化剤で(TTRの構造を安定させて崩れを防ぐ)、ファイザーのタファミジス(ビンダケル)が2019年に世界で初めて承認されている。2024年11月にはBridgeBioの経口薬アコラミジス(Attruby)が加わった。第二にサイレンサー (肝臓でのTTR産生を源流で止める薬)で今回のWainuaもここに属する。第三が、一回投与を狙うゲノム編集(Intelliaのnexiguran ziclumeranが第III相試験中)となっている

同じサイレンサーの中でもAlnylamのVutrisiran (Amvuttra)は、第III相試験で主要・副次の10項目すべてを達成し、全体集団で複合リスクを28%低下、42カ月で死亡を36%低下させて、2025年にATTR-CMで承認されている。かつ、単剤でも、タファミジスへの上乗せでも有効性を示している。
https://www.healio.com/news/cardiology/20250321/fda-approves-vutrisiran-for-attr-amyloidosis-with-cardiomyopathy
https://www.fiercepharma.com/pharma/alnylams-rna-interference-med-amvuttra-wins-key-approval-attr-cm-teeing-showdown-pfizer

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同社は今回の試験以外にも他疾患で大型の注目試験が(SERENA-4やAVANZAR)走っている。当面の焦点は8月のESCで示される今回の試験の発表であり、その内容が注目される。