2026年後半に注目されるべき臨床試験についてBioPharma Diveが記事を出している。
RNAコンジュゲート、CRISPR、二重特異性抗体、マルチアゴニストといった次世代モダリティが、超希少疾患のエリアを超え、巨大市場における既存ブロックバスターを脅かすフェーズに入っていると論述されている。
- オンコロジー
a. ivonescimab(Akeso/Summit Therapeutics)|Harmoni-3
中国初発のPD-1/VEGF二重特異性抗体が、KeytrudaやOpdivoを超えうるかどうかの試験。Harmoni-3は、従来の中国限定試験と異なり初のグローバル第Ⅲ相であり、ivonescimab+化学療法を一次治療のKeytruda+化学療法と直接比較している。前線非小細胞肺がんでの優越が示せればエポックメイキングとなる。ただし中国限定試験は75歳超(米国のKeytruda患者の33%)を除外し、65〜75歳でのベネフィットが不明瞭であったことから懐疑的な見方もある。
b. intismeran(Moderna/Merck)|Interpath-001
個別化がんワクチン(mRNA)とKeytrudaの併用を、術後補助のメラノーマでKeytruda単独と比較する。第Ⅱ相では5年時点で再発・死亡リスクをおよそ半減させた。Merckにとっては、最量販品Keytrudaの特許切れに備える次の柱の一つであり、Modernaにとっては腫瘍事業の浮沈を左右することになる。

- 循環器・代謝
c. retatrutide(Eli Lilly)|Triumph-1/-2/-3
GLP-1・GIPに加えグルカゴンも標的とする三重作動薬。膝痛の第Ⅲ相では平均で最大約29%、一部で35%超という劇的な減量を示した。今回のTriumphの3試験(肥満/肥満+糖尿病/肥満+心血管疾患)がポジティブな結果を出せば、Lillyの王座はますます強固なものとなる。

d. milvexian(BMS/J&J)|Librexia-AF/Librexia-Stroke
第XI因子阻害薬であり、出血リスクの低い次世代抗凝固薬として期待される。昨年は急性冠症候群で第Ⅲ相に失敗したが、計3万人超の心房細動・脳卒中予防の2試験が控えている。心房細動ではEliquisに対し非劣性かつ出血低減を、二次脳卒中予防では上乗せ効果を狙う。
e. aficamten/Myqorzo(Cytokinetics)|Acacia-HCM
心筋ミオシン阻害。先行のCamzyos(BMS)は非閉塞性肥大型心筋症(HCM)の試験に失敗した。Cytokineticsは非閉塞性HCM約500人で運動耐容能の改善を検証し、HCM全域をカバーしうる唯一の薬の上市を狙う。

f. pelacarsen(Novartis)|Lp(a) Horizon
Lp(a)を下げるアンチセンス(RNA)医薬。8,000人超で、Lp(a)低下が心血管イベントを実際に減らすかを検証する。成功すれば、LDL・中性脂肪に並ぶ新たな治療標的としてLp(a)が確立することとなる。
g. eplontersen/Wainua(AstraZeneca/Ionis)|Cardio-TTRansform
トランスサイレチン心アミロイドーシスの領域に第4の薬として参入を狙う。Pfizerの首位品Vyndamaxは昨年60億ドル超を売り上げている。Alnylam Amvuttraと同じくTTR産生を抑えるが、異なる核酸医薬。安定化薬併用例での上乗せを示せるかどうかが鍵。

3. 中枢神経・精神
h. Cobenfy/KarXT(BMS)|ADEPT-2
BMSは2023年、この薬剤のためにKarunaを140億ドルで買収している。だが統合失調症での売上は低調(2025年通年1.55億ドル)で、ADEPT-2はアルツハイマー病に伴う精神症状という巨大市場への挑戦となるため、買収の正否を占うことにもなる。
i. psilocybin(Compass Pathways)|COMP005/COMP006
治療抵抗性うつに対する薬剤であり、COMP005は主要評価項目を達成済みとなっている。585人を組み入れているCOMP006の結果が、待たれており、承認は2027年半ばとの見方もある。

- ワクチン
j. VAX-31(Vaxcyte)|Opus-1
31価の次世代肺炎球菌ワクチン。PfizerのPrevnar(昨年60億ドル超)に挑み、Prevnar20とMerckのCapvaxiveに対する非劣性を狙っている。
k. CD388(Merck/Cidara)|Anchor
長時間作用型のインフル予防薬(抗ウイルス薬)。Merckは2025年11月、90億ドル超を投じてCidaraを買収しており、中期試験では約3/4で発症を予防している。約6,000人のANCHOR試験の結果が注目されている。

- 免疫疾患
l. zasocitinib(武田)|IBD第Ⅱ相
経口TYK2阻害薬。先行のSotyktu(BMS)に対して乾癬では直接比較でポジティブな結果を示している。武田はエンタイビオの後継品として約40億ドルを投じて本剤を取得しているため、炎症性腸疾患(IBD)でいい結果が出れば会社全体として大きな影響がある。
m. barzolvolimab(Celldex)|Embarq-CSU1/CSU2
慢性特発性蕁麻疹を対象に、約2,000人を対象とした試験結果がで第四半期に出る予定。マスト細胞を減らす作用で、既存の抗ヒスタミン薬やXolairに対し、より強力・速効・持続的でありうると示唆されてきた。
n. litifilimab(Biogen)|TOPAZ-1/TOPAZ-2
神経科学偏重からの脱却を進めるBiogenの次世代主力品候補。全身性エリテマトーデス(SLE)1,100人超で、プラセボに対する症状改善を検証している。既存のBenlysta(GSK)・Saphnelo(AZ)でも多くの患者で十分に制御できておらず、ポジティブな結果が出れば大型化する可能性。

6. 希少・遺伝子
o. del-desiran(Novartis〔Avidity買収〕)|Harbor
Novartisは120億ドルでAvidityを買収しており、筋強直性ジストロフィー1型を対象に、RNAを抗体に結合させて筋細胞へ送り込むdel-desiranを評価する試験となっている。ピーク60億ドルの見込み。
p. RGX-202(Regenxbio)|Affinity Duchenne
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療。先行Elevidys(Sarepta)とは異なるウイルスを用い、より正常に近いミクロジストロフィンを産生する。ただしElevidysの肝不全死を受けた使用制限や、遺伝子治療に批判的なPrasad氏のFDA着任など、規制環境の不確実性がある。
q. SRP-1001/SRP-1003(Sarepta/Arrowhead)
SareptaはArrowheadとの提携で得たRNA医薬群の開発を進めている。本試験では顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(SRP-1001)と筋強直性ジストロフィー(SRP-1003)の初期データが、苦境の同社の命運を分けるとされている。
r. lonvo-z(Intellia)|Haelo
体内CRISPR編集による遺伝性血管性浮腫(HAE)治療。機能的治癒をうたっており、別プログラムでの被験者死亡を経て株価は低迷しているものの、lonvo-zでは肝毒性の問題が出ていないとされる。
s. povetacicept(Vertex〔Alpine買収〕)|Rainier
BAFF/APRIL阻害薬を、IgA腎症対象に行う試験。Vertexは約50億ドルでAlpineを買収して本剤を取得しており、日本では小野薬品が地域販売権利を持つ。
t. Sionna Therapeutics|Precision CF ほか
嚢胞性線維症(CF)でVertexの牙城(Trikafta、年100億ドル超)に挑む。Trikaftaへの上乗せと、自社配合剤の両輪で拡大する予定。
