何が承認されたか
アッヴィ(NYSE: ABBV)は2026年10月23日、米国食品医薬品局(FDA)が、中等症から重症の活動期クローン病(CD)の成人を対象に、スキリージ(リサンキズマブ-rzaa)の皮下注(SC)による導入レジメンを承認したと発表した。発表はイリノイ州ノースシカゴから行われた。
承認された導入用法は、スキリージ720mgをオンボディインジェクター(OBI)の導入パックにより、0週、2週、4週、8週に投与するというもの。患者は12週目から、OBIによる8週に1回の維持投与へ移行する。導入を静脈内投与で開始する選択肢も引き続き残されており、その場合は600mgを0週、4週、8週に投与する。
これにより患者は、治療の開始時点から自宅で投与を始め、維持期まで同じデバイスで治療を続けられることになる。
FDAは同時に、米国添付文書(Prescribing Information)の警告・使用上の注意の記載について、承認されている全適応症にわたる更新も承認した。改訂後の記載は、治療開始前の結核(TB)評価を臨床的判断に基づいて検討するよう医療従事者に求めるもので、スキリージ開始前の結核検査は必須ではなくなった。
根拠となった第3相AFFIRM試験
今回の承認は、中等症から重症の活動期クローン病患者を対象に、皮下注スキリージとプラセボを比較した第3相AFFIRM試験の良好な結果に支えられている。AFFIRMは、成人クローン病患者における皮下注リサンキズマブの導入治療としての有効性と安全性を評価する、グローバルな無作為化・プラセボ対照・二重盲検試験である(NCT06063967)。主要評価項目は12週時点の臨床的寛解(CDAI)と内視鏡的奏効の2つで、皮下注スキリージはいずれもプラセボに対する優越性を達成した。
全体集団では、12週時点の臨床的寛解がプラセボ30%(N=94)に対しスキリージSC 56%(N=180)、内視鏡的奏効がプラセボ15%に対し43%、内視鏡的寛解がプラセボ11%に対し26%だった。
試験に組み入れられたのは主に治療抵抗性の集団だったが、結果は先行する先進治療(advanced therapy)の失敗歴がない患者(AT naïve)で特に強かった。AT naïve集団では、12週までに74%(N=65)が臨床的寛解に至り、プラセボの27%(N=33)を上回った。内視鏡的奏効はプラセボ15%に対し60%と4倍の割合に達し、内視鏡的寛解はプラセボ9%に対し43%だった。先進治療に失敗した経験のある患者(プラセボN=61、スキリージSC N=115)でも、臨床的寛解45%対31%、内視鏡的奏効33%対15%と、プラセボを上回る反応がみられた。
副次評価項目についても、12週時点の内視鏡的寛解とFACIT疲労スコアでプラセボを上回った。導入期における皮下注スキリージの安全性プロファイルは、クローン病で既に確立されたプロファイルとおおむね一致し、新たな安全性リスクは認められなかった。
アッヴィの研究開発担当執行副社長兼チーフ・サイエンティフィック・オフィサーであるRoopal Thakkar氏は「皮下注導入の承認により、スキリージの強力な有効性の上に、治療開始方法の柔軟性を患者と医師に提供する」と述べている。AFFIRMの治験責任医師であるノースカロライナ大学チャペルヒル校消化器・肝臓部門長のMillie D. Long氏は、患者が知りたいのは「効くのか」と「生活に合うのか」の2点だとし、今回の承認が後者に答えるものだと説明している。
デバイスの実績と、業界にとっての意味
スキリージのOBIは2022年にクローン病の維持治療向けに初めて導入された経緯がある。クローン病患者186人を対象とした実臨床調査では88%がOBIを「使いやすい」と回答し、IBD患者352人を対象とした患者報告調査では、OBIへの満足度(満足または非常に満足)が87%と、オートインジェクターの71%を上回った。
つまり今回の承認は、維持期で評価の定まったデバイスを、導入期にまで前倒しして使えるようにしたものだと整理できる。クローン病の導入治療では点滴での通院が前提になりやすいが、720mg×4回の皮下注で導入まで在宅完結できる選択肢が加わった意味は小さくない。静脈内投与の選択肢も残されているため、医療機関は患者の状況に応じて導入経路を選べる形になる。
もう一点、添付文書の結核関連記載の変更は、クローン病だけでなく既承認の全適応症(尋常性乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎を含む)に及ぶ。開始前の結核検査が一律の要件ではなくなることは、処方前の手順に関わる変更であり、実務上の影響範囲は広い。
アッヴィは、対象となる民間保険加入者の自己負担を月額0ドルまで抑えうるコペイカードや患者支援プログラム、無保険・保険が限られる人向けにスキリージを無償提供するmyAbbVie Assistを提供しているとしている。会社側は、今回の皮下注での結果が今後の臨床試験の基盤になるとも位置づけており、投与経路の設計そのものが競争の材料になりつつあることがうかがえる。