何が発表されたか
ノバルティスは2026年10月23日(バーゼル)、再発型多発性硬化症(RMS)を対象とした第III相REMODEL-1試験およびREMODEL-2試験の結果を発表した。高選択的な経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるレミブルチニブが、対照薬テリフルノミドに対して再発抑制で優越性を示し、障害進行の遅延についても臨床的に意味のある結果を示したとしている。肝臓に関する安全性シグナルは認められなかった。
結果は、第10回ACTRIMS-ECTRIMS合同会議「MSToronto2026」のレイトブレイキングセッションで発表され、同時にThe Lancet誌に掲載された。
主要評価項目である年間再発率(ARR)は、REMODEL-1でレミブルチニブ0.073対テリフルノミド0.112、REMODEL-2で0.080対0.116。相対リスク減少はそれぞれ35.2%、31.2%で、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある差とされ、おおよそ13年に1回の再発に相当するという。
6カ月確認障害進行(6mCDP)のリスクは29.2%低下し(名目上の有意差)、3カ月確認障害進行(3mCDP)でも20.5%の低下という一貫した傾向がみられた。レミブルチニブ群では24カ月にわたり92%超の患者が6mCDPによる進行なしを維持した。
画像指標と安全性の数字
主要な副次評価項目では、両試験ともテリフルノミドに対する優越性が示された。慢性的な疾患負荷の指標である年間T2病変活動は、REMODEL-1で0.94対2.71、REMODEL-2で0.82対2.77(それぞれ65%、70%の減少)。活動性炎症の指標であるスキャンあたりGd+ T1病変は、REMODEL-1で0.08対0.24、REMODEL-2で0.07対0.21(両試験で66%減少)だった。血清ニューロフィラメント軽鎖(NfL)は、REMODEL-1で9.0%(11.57対12.73)、REMODEL-2で7.0%(12.05対13.00)改善した。
事前に計画された統合解析では、レミブルチニブ群は全体的な疾患コントロール達成のオッズがテリフルノミド群の約3倍だった。再発・障害進行・MRI活動の3領域で疾患活動性の証拠がない状態(NEDA-3)を達成した患者は55.0%対32.1%で、名目上の有意差が認められた。
安全性では、Hy's Law該当例を含め肝臓の安全性シグナルは観察されなかった。ALTが正常上限の3倍を超えた患者は2.0%で、テリフルノミド群の7.4%を下回り、過去のRMS試験のプラセボ群と同程度の範囲だったとしている。統合解析では有害事象による治療中止が3.1%対5.8%と、約半数に減少した。有害事象の発現率は79.5%対81.5%、重篤な有害事象は6.0%対7.0%といずれも数値上少なかった。レミブルチニブ群で2例の死亡(一酸化炭素中毒による事故死、および自殺既遂)が報告されたが、いずれも治験責任医師により治験薬との関連なしと評価された。
REMODEL-1/-2は同一デザインの多施設・無作為化・二重盲検・実薬対照試験で、最近の疾患活動性があり拡大障害度スケール(EDSS)0.0〜5.5の成人約2,000人が、レミブルチニブ100mgまたはテリフルノミドに1対1で割り付けられた。二重盲検コア期間は最長30カ月、その後に最長5年のオープンラベル延長期間が続く。
位置づけと今後
レミブルチニブはノバルティスが創製した高選択的・共有結合型の経口BTK阻害薬で、BTK経路を遮断してB細胞と自然免疫細胞の活性化を抑え、免疫調節ネットワークと関連する神経炎症を調節する。慢性的なB細胞枯渇を伴わない設計である点が特徴とされ、前臨床試験では試験されたBTK阻害薬の中で最も高いBTK選択性を示したという。
同薬は25mgが慢性特発性蕁麻疹(CSU)を対象に2025年9月にFDA、2026年4月に欧州医薬品庁から「Rhapsido」の商品名で承認され、2026年10月には症候性皮膚描記症に対する初の治療薬としてFDA承認を取得している。RMS以外にも、二次性進行型MSを対象とする第III相REMASTER試験のほか、化膿性汗腺炎や食物アレルギーでも開発が進む。
発表では、フライブルク大学医療センターのHeinz Wiendl教授が「MSの治療目標が再発抑制だけにとどまらず進化を続けるなか、今回の有効性の結果と良好な安全性プロファイルは、差別化された選択肢となる可能性を示す」と述べた。ノバルティスのShreeram Aradhye開発部門プレジデント兼最高医学責任者は、慢性的なB細胞枯渇を伴わない長期疾患管理を支える可能性に言及している。
業界にとっての論点は、肝障害が課題となってきたBTK阻害薬クラスにおいて、Hy's Law該当例なしという安全性データが提示された点にある。MSは世界で約300万人が罹患し、RMSはその最も一般的な病型である。ノバルティスはRMSを対象に世界各国で承認申請を行う計画を示しており、既存の注射剤中心のB細胞標的療法と経口薬の選択肢をめぐる競争環境が次の焦点となる。