何が発表されたか

ノバルティスは2026年10月23日(バーゼル)、第III相NATALEE試験の6年フォローアップ解析の結果を公表した。再発高リスクのステージII・IIIのHR陽性/HER2陰性早期乳がん(eBC)患者を対象に、Kisqali(ribociclib)と内分泌療法(ET)の併用は、ET単独と比較して死亡リスクを19.1%、ほぼ20%低減した(HR=0.809、95%CI: 0.661-0.989)。全生存期間(OS)のベネフィットは主要なサブグループ全体で一貫していたとされる。今回のレイトブレイキング結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026年年次総会で発表される。

対象となったのは、高リスクのリンパ節転移陰性(N0)患者と、すべてのリンパ節転移陽性患者を含む、早期乳がんとして最も広い患者集団である。

数字で見る6年データ

今回の解析時点で、患者はKisqaliの投与を終えてから中央値3年(38カ月)が経過しており、プロトコルで規定された5年間のET期間も経過している。それにもかかわらず、各評価項目の差は時間とともに拡大した。

浸潤性無病生存期間(iDFS)の絶対ベネフィットは5年時点の4.1%から6年時点で5.3%へ拡大。OSの絶対差も5年時点の1.2%から6年時点では2.1%へと広がった。遠隔転移再発を経験した患者は、Kisqali併用群の方がET単独群より少なかった。乳がん特異的生存(BCSS)はOSのベネフィットを支持する結果で、乳がんによる死亡リスクを約30%低減した(HR=0.709、95%CI: 0.559-0.890)。

主要評価項目のハザード比と絶対ベネフィット(5年/6年)は以下の通り。

評価項目 ハザード比 95%CI 5年 6年
全生存期間(OS) 0.809 0.661-0.989 1.2% 2.1%
乳がん特異的生存(BCSS) 0.709 0.559-0.890 1.5% 2.6%
浸潤性無病生存(iDFS) 0.741 0.646-0.849 4.1% 5.3%
遠隔無病生存(DDFS) 0.744 0.646-0.858 3.7% 4.9%
遠隔無再発生存(DRFS) 0.738 0.631-0.846 3.5% 4.4%

安全性については、追跡期間が延びても従前の解析と一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。二次原発がん(SPM)の発現率はKisqali併用群3.0%、ET単独群3.3%。死亡に至ったSPMは両群とも0.2%だった。

UCLA医学部血液・腫瘍部門チーフのDennis J. Slamon氏は「NATALEEの6年データは、ribociclibとETの併用による臨床的に意義あるOSの改善を明確に示している」とコメントしている。

試験の枠組みとこれまでの経緯

NATALEEは、ステージII・IIIのHR陽性/HER2陰性早期乳がんにおいて、術後補助療法としてのKisqali+ETをET単独と比較する国際多施設共同・無作為化・非盲検の第III相試験で、TRIOとの協働で実施されている。両群の補助内分泌療法は非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(アナストロゾールまたはレトロゾール)で、該当する場合はゴセレリンを併用した。主要評価項目はSTEEP基準によるiDFS。20カ国で計5,101人の成人患者が無作為化された。

KisqaliはCDK4/6を阻害する選択的阻害薬で、米FDAや欧州委員会を含む100カ国超で乳がん治療薬として承認されている。米国では、再発高リスクのステージII・IIIのHR陽性/HER2陰性早期乳がんに対するAI併用の術後補助療法として、またHR陽性/HER2陰性の進行・転移乳がんの初回内分泌療法として承認。欧州でも再発高リスク早期乳がんの補助療法としてAIとの併用が承認されている。早期乳がんでの各国規制当局の承認手続きは継続中で、直近では中国NMPAの承認を取得した。

転移乳がんでは、MONALEESA-2、MONALEESA-3、MONALEESA-7の3つの無作為化比較試験で統計学的に有意なOSベネフィットを示している。

業界にとっての意味

今回のポイントは、投与終了後も差が開き続けているという点にある。患者はKisqaliを中央値38カ月前に終えており、規定の5年間のETも終えている。その状態でOSの絶対差が1.2%から2.1%へ、iDFSが4.1%から5.3%へと広がったことは、補助療法としてのCDK4/6阻害薬の価値を、投与期間中の効果だけでは測れないことを示している。追跡を重ねるほど評価が変わりうる領域だということだ。

また、対象集団の広さも論点になる。NATALEEは高リスクN0患者とすべてのリンパ節転移陽性患者を含む設計であり、ノバルティスのオンコロジー開発責任者(暫定)Andrea Myers氏は「再発高リスクの最も広い患者集団において、CDK4/6阻害薬と内分泌療法を組み合わせる価値を示すもの」と位置づけている。NCCNガイドラインでは、早期乳がんにおいてKisqaliは、すべてのリンパ節転移陽性例に加え、腫瘍径5cm超などの高リスク因子を持つリンパ節転移陰性例についても、カテゴリー1の推奨(preferred)とされる唯一のCDK4/6阻害薬とされている。

評価尺度の面では、KisqaliはESMO-MCBSで早期乳がんにおける最高スコア(A)を獲得している。患者団体Living Beyond Breast CancerのCEO、Jean A. Sachs氏は、長期のOSデータが医療チームとの意思決定の共有に役立つとコメントしており、再発リスクの説明と治療選択の場面で参照される材料が一つ増えたことになる。