何が発表されたか

バイオンテック(BioNTech SE、Nasdaq: BNTX)とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS、NYSE: BMY)は2026年10月25日、進行非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とするグローバル第2相試験「ROSETTA Lung-107」(NCT06841055)の初回データを公表し、ポミタミグ(pumitamig、BNT327/BMS986545)とドセタキセルの併用で確定奏効率(cORR)36.7%、無増悪生存期間(PFS)中央値6.9カ月が得られたと発表した。

対象は、1次治療の免疫療法+化学療法中または治療後に病勢進行した転移性NSCLC患者。データはスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026において、レイトブレイキングのラピッドオーラル発表(抄録番号LBA76)として同日公表された。

数字をみる

試験はポミタミグ1400 mgとドセタキセルを3週ごとに投与する用法を評価している。2026年7月10日のデータカットオフ時点で50例が組み入れられ、追跡期間中央値は12.2週、33例が治療を継続していた。

有効性評価可能な30例において、cORRは36.7%、病勢コントロール率(DCR)は90.0%。PD-L1発現レベル別のcORRは、TPS<1%で42.9%、TPS 1〜49%で33.3%、TPS≥50%で40.0%。組織型別では扁平上皮がん57.1%、非扁平上皮がん30.4%で、いずれのサブグループでもDCRは80%を超えた。奏効までの期間中央値は1.4カ月だった。治療を受けた全集団(n=50)でのPFS中央値は6.9カ月(95%CI:4.2〜未到達)、6カ月PFS率は63.3%。リリースは、免疫療法+化学療法後の標準治療であるドセタキセルのPFS中央値が、非扁平上皮で約3.6カ月、扁平上皮で約3.9カ月であるとの既報(Ahn MJ et al. J Clin Oncol. 2025;43(3):260–272)を引用している。

安全性評価対象の50例では、新たな安全性シグナルは認められなかった。ポミタミグによる治療関連有害事象(TRAE)はいずれかのグレードで52.0%、グレード3以上が18.0%に報告され、4例(8.0%)が治療中止に至った。免疫関連有害事象は11例(22.0%)、うちグレード3以上は5例(10.0%)。VEGF関連事象は13例(26.0%)で、グレード3は2例(4.0%)とまれで、グレード4・5はなかった。出血事象は8例(16.0%)で、いずれもグレード1または2にとどまった。ポミタミグに関連する死亡および用量制限毒性(DLT)は報告されていない。

試験の設計と、これまでの経緯

ROSETTA Lung-107は、1次治療の免疫療法+化学療法後に進行したステージIVの扁平上皮・非扁平上皮NSCLCを対象とする、グローバル・非盲検・単群の第2相試験。PD-L1発現レベルは問わない一方、抗VEGFモノクローナル抗体やPD-(L)1×VEGF二重特異性抗体の投与歴がある患者は除外されている。パート1(安全性導入)ではポミタミグ1400 mgまたは2000 mgとドセタキセル75 mg/m²を3週ごとに投与し、パート2(用量拡大)では、パート1と肺がんプログラム全体のエビデンスを踏まえて社内審査委員会が推奨した1400 mgが用いられた。主要評価項目はDLT(パート1のみ)、安全性、および治験医師評価によるORR(RECIST 1.1)。副次評価項目はDCR、奏効期間、奏効の深さ、奏効までの期間、PFS、全生存期間、薬物動態、抗薬物抗体の発現率。オーストラリア、韓国、スペイン、トルコ、英国、米国の施設で59例が登録された。

ポミタミグは、PD-L1とVEGF-Aに協調的に結合するよう設計された治験段階の二重特異性免疫調節薬で、両社が共同開発している。これまでに臨床試験で4,000例を超える患者に投与されている。今回のデータについて両社は、肺がんにおける3件目のグローバル第2相データセットであり、PD-L1発現レベルを問わず一貫した活性を示すものだと位置づけている。

試験医師である延世大学医科大学・延世がんセンターのByoung Chul Cho氏は、免疫療法+化学療法後の患者では長年ドセタキセルが標準治療であり続けてきたと述べ、今回の結果は「ポミタミグが前治療後の患者で抗腫瘍免疫を再活性化しうることを示唆する」とコメントした。バイオンテック共同創業者兼最高医学責任者のÖzlem Türeci氏は、1次治療NSCLCおよび進展型小細胞肺がんでの知見と合わせ、幅広い肺がん領域での開発戦略を支えるものだとした。BMSのCristian Massacesi氏は、2次治療NSCLCにおける今後の開発方針を定めていくと述べている。

業界にとっての意味

リリースの範囲で読み取れるのは、ポミタミグの開発が1次治療から2次治療へと広がったという点である。免疫チェックポイント阻害薬+化学療法が1次治療の標準となった結果、その後に進行した患者群という新しい未充足ニーズが生まれており、本試験はそこを正面から狙っている。PD-L1低発現例(TPS<1%)でcORR 42.9%が観察された点は、チェックポイント阻害薬が効きにくいとされる集団への示唆という意味で注目される。

ただし本試験は単群・非盲検であり、比較対照を置いていない。ドセタキセル単剤との差は、同一試験内での比較ではなく既報の数値との対比として示されている。追跡期間中央値も12.2週と短く、PFS中央値の95%信頼区間の上限は未到達である。評価の確定には今後のデータが必要となる。

なお、プレスリリース本文のBMSコメントでは「4件の進行中のグローバル第3相試験」と述べられている一方、ポミタミグの概要欄では承認申請につながりうる7件のグローバル第3相試験(小細胞肺がん、NSCLC、切除不能ステージIII NSCLC、PD-L1≥50%のNSCLC、トリプルネガティブ乳がん、マイクロサテライト安定の大腸がん、胃がん)が進行中と記載されている。加えて、ADCなどの新規モダリティとの併用試験が10件以上検討されているとされる。