何が発表されたか

GSK(LSE/NYSE: GSK)は2026年10月24日、ロンドンで、PD-1阻害抗体Jemperli(一般名ドスタルリマブ)の単剤療法を評価した第II相AZUR-1試験の良好な中間結果を公表した。対象は、未治療のステージII・IIIのMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)/dMMR(ミスマッチ修復欠損)局所進行直腸がんの成人患者である。結果は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)congressのレイトブレイキング口頭発表セッションで報告される。

探索的解析では、評価可能患者の76%(110/144、95%CI: 69%、83%)がドスタルリマブ単剤で完全奏効を達成した。その内訳は、手術なしで12カ月以上持続する臨床的完全奏効(cCR12、治験責任医師評価)を得た68%(98/144、95%CI: 60%、76%)と、手術後の組織解析でがんの残存が確認されなかった病理学的完全奏効(pCR)の12例である。奏効が得られた患者では、2年を超える追跡期間の中央値の時点で再発の報告はない。

主要評価項目である独立中央判定によるcCR12については、データはなお成熟途上にある。解析時点で評価可能患者の47%(54/116、95%CI: 37%、56%)がcCR12を達成した。これに加え38例がすでに臨床的完全奏効に到達しているが、12カ月時点の評価には至っておらず、経過観察が続いている。GSKは、臨床的に意義のある割合の患者がcCR12を達成したとして、試験は主要目的を達成したとしている。

試験の設計と安全性

AZUR-1は、グローバルで実施された非盲検・単群の登録用第II相試験で、患者数は154例。ドスタルリマブ単剤により、患者が化学療法・放射線治療・手術を回避できるかを検証する設計となっている。投与は500mgの静脈内点滴を3週ごと、6カ月間で計9サイクル。追加の有効性評価項目として、治験責任医師評価によるcCR12と、最良総合効果としてcCR、臨床的near-complete response、臨床的部分奏効のいずれかを得た患者と定義される奏効率(ORR)が置かれている。

安全性プロファイルは、固形がん領域で確立されたドスタルリマブの既知のプロファイルとおおむね一致した。重篤な副作用は投与患者の20%に発現。主な副作用は疲労(32%)、発疹(22%)、下痢(18%)、そう痒症(17%)で、副作用による永続的な投与中止は3%だった。

背景──標準治療の負担と、承認の動き

直腸がんのうちMSI-HまたはdMMRのものは5〜10%程度とされる。これらの腫瘍はDNA損傷を適切に修復できない遺伝学的特徴を持ち、変異が蓄積する。この生物学的特性が、ドスタルリマブのような免疫療法への高い反応性につながるとされる。同バイオマーカーは大腸がん、子宮体がんなどの消化器がんで多くみられるが、他の固形がんでも認められる。

局所進行直腸がんの現在の標準治療は化学療法、放射線治療、手術を含むが、これらは排便・排尿・性機能の障害、二次がん、不妊といった長期的な影響を残しうる。今回の試験は、こうした負担を伴う治療を回避できるかという問いに正面から答えようとしたものだ。

GSKのOncology R&Dグローバルヘッド、Hesham Abdullah氏は「AZUR-1のデータは、適格な患者の治療を一変させうるJemperli単剤の可能性を示している。一部の患者では化学療法、放射線治療、手術を回避することが可能になるかもしれない」と述べた。試験の治験責任医師であるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏は、2年を超える追跡で再発が報告されていないことが「臓器温存アプローチに対する医師の確信を支えるはずだ」とコメントしている。

本データは、同適応症における米国での最近の承認を支持した。参加各国では、FDA腫瘍学卓越センター(OCE)が各国規制当局の同時審査を促すために設けたProject Orbisを通じ、規制審査が進行中である。

業界にとっての意味

今回の結果が示すのは、バイオマーカーで絞り込んだ集団において、免疫療法単剤が「手術を含む集学的治療そのものを置き換えうる」という治療体系上の位置づけだ。奏効率の高さに加え、手術を行わないまま12カ月以上奏効が持続したという指標(cCR12)が主要評価項目に据えられている点は、評価軸が腫瘍縮小から臓器温存の持続性へと移っていることを示す。

一方で、主要評価項目の独立中央判定によるcCR12は解析時点で47%にとどまり、38例が12カ月評価を待っている段階にある。探索的解析の76%という数字と、成熟途上の主要評価項目の数字は性質が異なり、今後のデータ更新が位置づけを左右する。

流通の観点では、Project Orbisによる各国同時審査が進む点が実務上の焦点となる。Jemperliは2014年3月の契約でAnaptysBioが創製しTESAROにライセンスされた抗体で、現在はGSKが研究開発・商業化・製造を担う。同社は婦人科がん、大腸がん、頭頸部がんで単剤および併用の開発を続けており、今回の直腸がんでの結果はその開発計画の中に位置づけられる。