何が発表されたか

ジョンソン・エンド・ジョンソン(NYSE:JNJ)は2026年10月24日、米ニュージャージー州ニューブランズウィックで、第3相PROTEUS試験の副試験(サブスタディ)の新たな結果を公表した。高リスク限局性または局所進行前立腺がんの患者を対象に、手術の前後6カ月ずつ投与するアパルタミド+アンドロゲン除去療法(ADT)と、根治的前立腺全摘除術単独とを直接比較したもので、アパルタミド+ADT群は手術単独群に比べ、病勢再発または死亡のリスクを62%低減した。転移なし生存(MFS)でも数値上の改善がみられ、転移または死亡のリスクは51%低かった。

この結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)Congress 2026のproffered paperセッションでレイトブレイキング抄録(#LBA53)として発表された。関連論文はEuropean Urology誌に受理されている。なお、高リスク限局性・局所進行前立腺がんに対するアパルタミド+ADTは、規制当局の承認を得ていない。

試験デザインと数値

副試験は無作為化非盲検試験で、新たに診断された非転移性の高リスク限局性または局所進行前立腺がんで、手術と全身療法に適格な患者408例が対象。102例がアパルタミド+ADT群、306例が根治的前立腺全摘除術単独群に割り付けられた。アパルタミドは1日1回240mgを経口投与し、骨盤内リンパ節郭清を伴う手術の前に28日サイクルを6サイクル、手術後にも6サイクル投与。手術の2週間前に休薬し、術後4週間で再開する設計である。比較群は手術後、各施設の標準的診療または経過観察とされた。

主要評価項目は無イベント生存(EFS、生化学的再発、局所・領域再発、遠隔転移または死亡までの期間)。追跡期間中央値37.8カ月の時点で、アパルタミド+ADT群はEFSを有意に改善した(ハザード比0.38、95%信頼区間0.26〜0.55、p<0.0001)。EFS中央値は併用群で未到達、手術単独群では19.1カ月だった。3年時点で無イベントを維持していた患者は併用群63%、手術単独群41.4%である。

副次評価項目のMFSはハザード比0.49(95%CI 0.26〜0.90、名目p=0.0193)、探索的評価項目である後続治療開始までの期間はハザード比0.29(95%CI 0.20〜0.43、名目p<0.0001)で、後続治療を要するリスクが71%低かった。3年時点で後続治療を受けていない患者は併用群64.6%、手術単独群32%。全生存期間については追跡が継続中である。

安全性プロファイルはPROTEUS本試験の結果と一貫していた。グレード3または4の治療下発現有害事象は併用群31%、手術単独群22%。いずれの群でも死亡に至った治療下発現有害事象は報告されていない。アパルタミドで最も多かった有害事象はほてり(64%)と尿失禁(63%)だった。

背景

高リスク限局性・局所進行前立腺がんでは、根治を目的とした手術が長く標準治療とされてきた。しかし患者のおよそ半数でがんが再発し、追加治療を要する。実臨床データでは、前立腺全摘除術を受けた患者の約半数が5年以内に再発、転移または死亡を経験するとされる。米国では年間約33万人が前立腺がんと診断され、最大40%が高リスクに分類される。2026年には3万6,000人超が前立腺がんで死亡すると推計されている。

アパルタミドはアンドロゲンが受容体に結合するのを阻害する薬剤で、現在は転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)および非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に承認されている。ERLEADAは2018年2月にnmCRPCで、2019年9月にmCSPCで米FDAの承認を取得し、これまでに世界で38万人超の患者に投与されている。

PROTEUS本試験の結果は2026年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のプレナリーセッションで発表されており、今回の副試験は、長年の標準治療である手術単独との直接比較という残された臨床的疑問に答える位置づけだ。

意味するところ

ミラノのIRCCSサンラファエレ病院のアルベルト・ブリガンティ教授は、手術単独群のEFS中央値が19.1カ月だったことを挙げ、根治を目指した治療後も患者が直面する課題を示すと述べた。その上で、アパルタミド+ADTでみられた再発・転移リスクの低下は「手術の上に積み上げる」可能性を示すとした。

米国の患者支援団体ZERO Prostate CancerのコートニーバグラーCEOは、手術を終えても再発の不安は残るとし、追加治療を回避または遅らせられる可能性の意義を強調した。J&Jのオンコロジー領域グローバル責任者ユスリ・エルサイード氏は、本副試験を標準治療との比較によって証拠を一歩進める目的で設計したと説明している。

実務的に注目されるのは、後続治療開始までの期間で71%のリスク低減が示された点だ。高リスク前立腺がんの治療設計は、手術後に再発を待って対処する流れから、周術期に全身療法を組み込む方向へと検討対象が広がることになる。一方、グレード3・4の有害事象は31%対22%と併用群で高く、ほてりと尿失禁がいずれも6割を超えている。適応はまだ未承認であり、全生存期間のデータも追跡中であることから、評価は今後の追加データを待つ段階にある。