何が発表されたか

Genmab A/S(ナスダック:GMAB、本社コペンハーゲン)は2026年10月25日、転移性大腸がん(mCRC)患者を対象としたペトセムタマブの第2相試験について、追跡期間を延長した解析結果を発表した。データはスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)Congress 2026で発表された。

ペトセムタマブは、上皮成長因子受容体(EGFR)とロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)を標的とする、開発中のIgG1二重特異性抗体である。今回の解析は、FOLFOXまたはFOLFIRIとの併用療法を評価したもので、1次治療(1L)での追跡期間中央値は5.9カ月、2次治療(2L)では7.1カ月。確定・未確定を合わせた客観的奏効率(ORR)は1Lで75%、2Lで67%だった。1Lのうち左側原発腫瘍の患者では81%のORRが観察されている。追跡期間が延びたことで、それまで未確定だった奏効の多くがその後に確定したとされる。

数字の内訳と安全性

2026年5月15日時点で、ペトセムタマブ併用療法を受けた患者は79人。内訳は1Lが45人、2Lが34人である。予後不良因子とされる肝転移を有する患者を含む主要なサブグループでも奏効が確認され、肝転移例のORRは1Lで76%、2Lで67%だった。病勢コントロール率は1Lで95%、2Lで93%。データカットオフ時点で治療を継続していた患者の割合は、1Lで76%、2Lで74%にのぼる。

安全性については、ペトセムタマブに関連する治療下発現有害事象(TEAE)によるペトセムタマブの投与中止が、ペトセムタマブ+mFOLFOX6群で42人中2人(5%)、ペトセムタマブ+FOLFIRI群で37人中1人(3%)。死亡に至ったTEAEの報告はなかった。インフュージョンリアクション(IRR)はFOLFOX併用で48%、FOLFIRI併用で43%の患者に発現し、グレード3のIRRはそれぞれ42人中3人(7%)、37人中1人(3%)だった。

試験(NCT03526835)は進行中の単群・非盲検・多施設共同試験で、複数の固形がんを対象にペトセムタマブの単剤および標準治療との併用を評価している。mCRCの対象は、左側および/または右側原発、RAS/BRAF野生型、抗EGFR抗体未治療の患者で、ペトセムタマブ1500mgを2週ごとに投与し、FOLFOXまたはFOLFIRIを併用。病勢進行または許容できない毒性が生じるまで継続する設計だ。1Lまたは前治療1レジメン後の2Lで治療された。主要評価項目は治験医師評価によるORRと安全性である。

背景──mCRCの治療選択とLGR5

リリースによれば、大腸がんは世界で3番目に多く診断されるがんで、年間推定190万人の新規患者が発生する。高齢者での診断が典型的だが、多くの国で若年層の罹患が増えている。転移性大腸がんでは、RASおよびBRAFの変異状況、原発巣の左右(サイドネス)、前治療歴といった分子・臨床的特徴に基づいて治療選択が行われるようになっている。RAS/BRAF野生型のmCRC患者は、左側腫瘍では1L、左右いずれでも2LでEGFR標的治療の対象となりうる。後期の転移性大腸がんの5年生存率は推定15%とされる。

試験医師であるナバーラ大学病院腫瘍内科のRuth Vera医師は、転移性大腸がんの治療は進歩したものの、標準的な化学療法と分子標的治療の後に選択肢が限られるRAS/BRAF野生型の患者を含め、転移後の転帰は依然として不良だと指摘。1Lと2Lの双方で得られた奏効率と、時間経過に伴うデータの成熟は、ペトセムタマブと化学療法の併用が新たなアプローチとなりうる可能性を示唆するとコメントしている。

ペトセムタマブは、EGFR上の特異な部位に結合してリガンド結合を阻害することでEGFRシグナル伝達を抑制するほか、EGFRとLGR5の双方を発現するがん幹細胞様細胞でEGFRの分解を誘導し、さらにマクロファージやNK細胞を介した自然免疫活性を高めるよう設計されている。Genmabは、上皮性がんの再発・転移を駆動するLGR5陽性の幹細胞様がん細胞を標的とする三重の作用機序を持つ唯一の薬剤だと説明する。

業界にとっての意味

今回の発表は、単群の第2相データであり、比較対照を伴う検証はこれからの段階にある。それでも、未確定だった奏効が追跡の延長によって確定に転じたという点は、奏効の持続性に関する初期の不確実性が一つ減ったことを意味する。GenmabのTahamtan Ahmadi最高医学責任者も、確定への転化が治療ラインを超えた奏効の持続性を裏づけ、進行中の第3相の根拠を強めるとしている。

ペトセムタマブの臨床開発は、この第1/2相試験に加えて4本の第3相LiGeR試験で構成される。頭頸部扁平上皮がんでは1L PD-L1陽性の再発・転移例を対象とするLiGeR-HN1(NCT06525220)と、2L/3LのLiGeR-HN2(NCT06496178)。大腸がんでは、RAS/BRAF野生型・左側の切除不能または転移性CRCの1Lを対象とするLiGeR-CRC1(NCT07702032)と、RAS/BRAF野生型の再発・切除不能・転移性CRCの2Lを対象とするLiGeR-CRC2(NCT07775287)が走る。mCRCの第3相は現在、患者登録が進行中とされる。

RAS/BRAF野生型・左側という、既存のEGFR標的治療が使われてきた集団をそのまま第3相の対象に据えている点は、開発戦略として明確だ。二重特異性抗体を、既存の標的治療が置かれてきた同じ土俵でどう位置づけるかが、今後の読みどころになる。Genmabは10月28日午後5時(CET)/正午(EDT)に投資家向けアップデートを開催する予定としている。