何が起きたか
イーライリリー・アンド・カンパニー(リリー)は2026年10月19日(米国現地時間)、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の小児患者(6〜17歳)を対象としたオンボー®(一般名:ミリキズマブ)の第III相SHINE-2試験について、1年時点の肯定的な結果を発表した。52週時の臨床的寛解という主要評価項目を達成した。日本イーライリリーは同リリースの日本語版を2026年10月26日に公表している。結果は、欧州消化器病週間(UEGW 2026)のレイトブレイキング口頭発表で報告された。
リリーによれば、オンボーはIL-23p19阻害薬として初めて、小児の潰瘍性大腸炎を対象とした第III相試験で1年時点の結果を示した薬剤となる。
試験の設計と数字
SHINE-2試験は、多施設共同の単群非盲検試験である。4〜17歳の患者63例が参加し、導入療法として体重に応じた用量(体重40kg超は300mg、40kg以下は5mg/kg)のミリキズマブを4週ごとに3回静脈内投与した。12週時に臨床的改善に到達した52例が維持療法期に移行し、52週時まで体重に応じた用量を4週間隔で皮下投与された。
導入療法を受けた患者の81%が12週時に臨床的改善に到達。改善がみられた患者(N=52、6〜17歳)における52週時の達成率は次の通り。
- 臨床的寛解(主要評価項目):50%
- 手術なしのステロイドフリー寛解:50%
- 臨床的改善:73.1%
- 症状寛解:71.2%
- 内視鏡的改善:53.8%
- 内視鏡的寛解:44.2%
主要評価項目は、成人を対象とした第III相LUCENT-2試験のプラセボ群の寛解率に基づくベンチマークを超えた場合に達成と判断する設計だった。小児の52週時寛解率の80%信用区間の下限(42.8%)が、LUCENT-2試験のプラセボ投与時の寛解率の90%信用区間の上限(32.6%)を上回った。なお小児の52週時臨床的寛解率は、LUCENT-2試験で12週時に臨床的改善が得られた成人の成績(50.7%)と近い値だったが、リリーはこれを記述的観察であり、2試験の直接比較として解釈すべきではないとしている。
安全性については、52週までの期間中、小児と青年における安全性プロファイルは成人で確立されているものと一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。比較的高頻度の有害事象は上気道感染、注射部位反応、潰瘍性大腸炎、頭痛、上咽頭炎、貧血で、大部分は軽度〜中等度。重篤な有害事象は4例(6.3%)に現れたが、いずれもミリキズマブとの因果関係はないとされた。2例(3.2%)が潰瘍性大腸炎の再燃により投与を中止した。死亡、悪性腫瘍、日和見感染、成長に関連する安全上の懸念の報告はなかった。
背景──小児潰瘍性大腸炎のアンメットニーズ
リリーの資料によれば、米国で潰瘍性大腸炎に苦しむ小児と青少年は26,000人を超える。小児期発症の潰瘍性大腸炎は成人発症より頻度は低いものの、病変部の範囲が広く重症度も高い場合が多く、ステロイド治療を受けた小児患者では最大で半数にステロイド依存が生じ、最大で3分の1が1年以内に手術を必要とするとされる。
SHINE-2試験の参加者は、54%が生物学的製剤で効果が得られなかった患者で、半数は小児潰瘍性大腸炎活動性指数(PUCAI)で疾患活動性が「重度」と判定されていた。リリーの自己免疫疾患開発部門シニアバイスプレジデントのMark Genovese氏は、再発時に子どもらしい日常が手の届かないものに感じられる現状に触れ、規制当局と連携して適応拡大を目指すと述べた。マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMarla C. Dubinsky氏は、改善がみられた小児の半数が1年時点で手術なしのステロイドフリー寛解に達した点を、参加者の多くが高度な治療で効果の得られなかった患者だったことを踏まえ「大きな意味を持つ」と評価している。
今回の1年時結果に先立ち、12週時の臨床・症状・内視鏡評価の改善は、アメリカ消化器病学会(ACG)2026年次総会のレイトブレイキング口頭発表で報告されていた。
業界にとっての意味
オンボーは現在、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎および中等症から重症の活動期クローン病の成人患者を適応として世界47カ国で承認されており、潰瘍性大腸炎では米国、EU、カナダ、日本などで月1回1本を投与する維持療法としての承認も取得している。一方、小児における安全性と有効性は確立されていない。リリーは今回のデータを各国の規制当局に提出し、小児適応の取得を目指す方針を示した。承認されれば、小児の潰瘍性大腸炎を適応とする初めてのIL-23p19阻害薬となる。
試験が単群非盲検で、52週時の有効性が12週時に改善した52例に限って報告されている点は、結果を読む際の前提として押さえておく必要がある。主要評価項目の判定も、プラセボ群との同時比較ではなく、成人試験のプラセボ寛解率に基づくベンチマークとの比較で行われている。
リリーは炎症性腸疾患の小児患者を対象とした臨床試験を継続しており、潰瘍性大腸炎とクローン病の長期継続投与試験(NCT04844606)、クローン病の小児を対象とする第III相試験(NCT05509777)が進行中。SHINE-2試験を完了した患者は、長期継続投与試験であるSHINE-ON試験で投与を続けられる。さらに導入療法の有効性向上を狙い、eltrekibart(NCT06598943)やzotemtegrast(NCT07186101)との併用、クローン病でのFXR作動薬併用(NCT07483099)、肥満などを合併した成人を対象にインクレチンベース治療と併用するCOMMIT-UC/COMMIT-CD試験も進めている。小児適応と併用療法の両面で、IL-23p19阻害薬の使われ方を広げる動きが並行している。