何が発表されたか

ジョンソン・エンド・ジョンソン(NYSE:JNJ)は2026年10月25日、再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)を対象とした第1b/2相試験「OrigAMI-4」のコホート5の新たな結果を公表した。皮下注のアミバンタマブ・ヒアルロニダーゼ(RYBREVANT FASPRO)と PD-1 阻害薬、および期間固定のカルボプラチン化学療法を併用した一次治療で、深く持続的な奏効が得られたとしている。データは欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026でラピッドオーラル発表された(Abstract #1539RO)。

コホート5は、PD-L1 の CPS が1以上で未治療の再発・転移性 HNSCC 患者を対象に、3週ごとの皮下注アミバンタマブとペムブロリズマブ、最大6サイクルのカルボプラチンを併用した。投与時間は5分以下。主要評価項目は RECIST v1.1 に基づく治験医師判定の奏効率(ORR)である。

30例が投与を受け、1例が不適格と判断され29例が有効性解析に組み入れられた。解析は、HPV 関連中咽頭扁平上皮がん(OPSCC)の7例と、それ以外の HNSCC の22例に分けて行われた。EGFR 標的二重特異性抗体に対する反応性がこの2集団で異なることが知られているためである。

数字で見た結果

HPV 関連 OPSCC 以外の HNSCC 22例では、確定 ORR は77%(95%信頼区間 55〜92)。内訳は完全奏効14%、部分奏効64%。評価可能な全例で腫瘍縮小が観察された。奏効までの期間の中央値は9.4週で、追跡期間中央値10.6カ月の時点で奏効の65%が継続していた。安定(SD)は4例(18%)、進行(PD)は1例(5%)。全生存期間の中央値は未到達で、1年時点で77%が生存していた。一方、HPV 関連 OPSCC の7例の ORR は29%(95%信頼区間 4〜71)だった。

安全性プロファイルは各薬剤の既知のものと一致した。主な有害事象は貧血(73%)、低アルブミン血症(63%)、血小板減少(63%)、口内炎(57%)。皮下注アミバンタマブに関連する投与関連反応は13%に発生し、グレード3以上の事象は報告されなかった。

背景にある未充足ニーズ

資料によれば、HNSCC は頭頸部がんの中で最も多い病型で、世界の全がんの約4.5%を占め、発生数は世界で7番目に多い。主なリスク因子はたばこ・アルコールと高リスク型 HPV 感染である。再発・転移性 HNSCC の約80%は HPV が原因ではなく、予後不良で治療反応性も低い傾向にあるとされる。

一次治療の選択は、進行が速く予後不良になりやすい疾患における重要な分岐点となる。現行の標準治療で恩恵を受ける患者がいる一方、多くは病勢進行を経験し、食べる・飲み込む・話すといった日常生活に深く関わる症状に直面する。約60%の患者が次治療に進まないという点が、初回治療から意味のある腫瘍縮小と持続的な奏効を得る必要性を裏づけている。

皮下注アミバンタマブは EGFR と MET を同時に標的としつつ免疫系にも働きかける二重特異性抗体で、EGFR と MET の過剰発現は HNSCC 腫瘍の80〜90%でみられ、腫瘍進展と治療抵抗性への関与が指摘されている。今回のコホート5の結果は、ペムブロリズマブ併用を評価したコホート2の一次治療データ(Clinical Cancer Research に掲載)を踏まえたものだ。

業界にとっての意味

RYBREVANT FASPRO は2025年12月に米 FDA 承認を取得し、EGFR 変異非小細胞肺がん(NSCLC)で複数市場において承認されている。EGFR/MET 二重標的というアプローチは肺がんで確立されてきたが、今回の発表はそれを頭頸部がんの一次治療へ広げる動きを示す。会社側は、既に後治療ラインでの頭頸部がん適応申請が FDA の優先審査下にあり、第3相 OrigAMI-5 が進行中であることを示している。

もう一つの論点は投与形態である。5分以下の投与時間と3週ごとの投与は、ENHANZE(rHuPH20)技術を用いた皮下製剤ならではの特徴として資料に明記されている。なお今回は第1b/2相のコホート単位のデータであり、HPV 関連 OPSCC では ORR 29%と差が出ている点を含め、評価は第3相の結果を待つことになる。