何が発表されたか
GSKは2026年10月28日、ロンドンで2026年第3四半期(Q3)決算を発表した。売上高(Turnover)は8,887百万ポンドで、AERベースで4%増、CERベースで5%増。年初来では24,925百万ポンド、同じく4%増(AER)/5%増(CER)となった。
成長をけん引したのはSpecialty Medicinesで、売上は39億ポンド(+15%)。内訳はHIVが21億ポンド(+10%)、Respiratory, Immunology & Inflammationが11億ポンド(+21%)、Oncologyが6億ポンド(+23%)である。
一方、Vaccinesは26億ポンドで2%減。Shingrixが8億ポンド(-5%)、Arexvyが2億ポンド(-24%)と減少し、髄膜炎ワクチンが6億ポンド(+12%)で伸びた。General Medicinesは24億ポンドで横ばい(stable)、このうちTrelegyが8億ポンド(+8%)だった。
利益面では明暗が分かれた。Total営業利益はAERで18%減、CERで16%減の2,127百万ポンド、Total EPSは38.5ペンスでCER21%減。GSKはこの減益要因として、Accelerate Growthプログラムに関連する3億2,800万ポンドのMajor restructuring charges(大規模再編費用)と、その他営業純収益の減少を挙げている。これに対してCore営業利益は3,076百万ポンドでCER5%増、Core EPSは54.6ペンスでCER1%増。Core営業利益率は34.6%だった。増益要因は売上増、製品・地域ミックスの改善、ロイヤルティ収入の増加で、R&Dおよび新規製品の上市への投資増と金融費用の増加が一部相殺した。
営業活動によるキャッシュ創出は31億ポンド、フリーキャッシュフローは21億ポンド。Q3配当は17ペンスを宣言し、2026年通期では70ペンスを見込む。
日本に関わる承認が2件
パイプラインの進捗では、日本市場に直接関わる項目が2つ示された。
1つはHibsagoで、米国と日本で承認された。GSKは慢性B型肝炎について「unprecedented functional cure rates(前例のない機能的治癒率)」を示すデータがあるとし、治療を再定義する可能性があるとしている。
もう1つはShingrixのプレフィルドシリンジ製剤で、日本で承認された。投与手技が簡便になる。Shingrix自体のQ3売上は5%減だが、剤形追加は接種現場での使い勝手に関わる変更にあたる。
このほか米国ではJemperliが、dMMR/MSI-Hの局所進行直腸がんの成人に対する初のimmunotherapyとして承認された。JideytroはROS1陽性非小細胞肺がんの一次治療で良好な登録試験データが得られており、同剤は7月に米国で二次治療として承認済みである。初期段階では、Ris-Rezの肺がんにおける最初のグローバルデータ、Mo-Rezの卵巣がんにおける第I相データがいずれも良好だったとする。mRNA季節性インフルエンザワクチンは、良好な第II相データを受けて第III相試験を開始した。GSKは2026年に22本の第III相試験を開始する計画で、現時点で18本が始まっている。
見通しと、業界にとっての意味
2026年通期ガイダンスは据え置かれた。売上3〜5%増、Core営業利益7〜9%増、Core EPS7〜9%増である。また2031年に売上400億ポンド超という中期見通しも維持し、ドルテグラビルの独占権喪失(loss of exclusivity)が発生する2028〜2030年の期間を通じて営業利益率は「stable to improving(安定ないし改善)」とする。
Luke Miels最高経営責任者(CEO)は、主要な成長ドライバーと新規上市品が好調だとした上で、「オペレーションの遂行、実行、R&Dの加速に引き続き注力する」と述べ、直近数カ月で米国においてHibsago、Jideytro、Jemperliの3つのspecialty medicineの承認を得たことに言及した。
今回の数字が示すのは、ワクチン事業の減速をSpecialty Medicinesが補う構図である。Vaccinesが2%減、General Medicinesが横ばいのなかで全社が増収を確保できたのは、HIV、呼吸器・免疫・炎症領域、オンコロジーの2桁成長によるものだ。同時に、Total利益とCore利益の方向が逆を向いた点は、Accelerate Growthに伴う一時的な再編費用が当期の表面上の利益を押し下げたことを意味する。
日本市場の観点では、Hibsagoの日米同時期の承認が目を引く。慢性B型肝炎は国内でも治療対象となる疾患であり、GSKが機能的治癒を前面に掲げる製品が国内承認に至ったことは、今後の治療選択肢の議論に関わってくる。Shingrixのプレフィルドシリンジ承認も、接種のオペレーションに影響する実務的な変更といえる。
なお、本稿で示した見通しや数値目標は、GSKが決算資料で示した前提と注意喚起(forward-looking statements)に基づくものであり、為替変動、マクロ経済、規制や政府の方針変更、関税を含む通商政策、知的財産保護、開発・承認の状況、競合の動向などによって実際の結果が異なり得るとされている。