2026年9月8日、ノバルティスが直近1週間で2つ目の臨床試験失敗を発表し、株価が一時10%を超えて下落した。時価総額にして約240億スイスフラン(296億ドル)が失われたこととなり、上場来最悪の下落率となっている。
https://endpoints.news/novartis-sinks-after-second-disastrous-trial-failure-this-time-of-avidity-acquired-drug/
https://www.cnbc.com/2026/09/08/novartis-novn-del-desiran-drug-trial.html

9月1にはCD19標的CAR-T療法のrapcabtagene autoleucel(rap-cel、YTB323)について、3例の死亡事例が確認されたことで自己免疫疾患を対象とする8試験を停止することが発表された。(試験の中止そのものは8月24日)。死亡理由はいずれも免疫エフェクター細胞関連血球貪食症候群(IEC-HS)の重篤例に起因する合併症によるものでCAR-T療法の既知のリスクとされる。
この動きを受けて、ブリストル マイヤーズ スクイブも自社のCAR-T療法であるzolacabtagene autoleucel(zola-cel)について、自己免疫疾患を対象とする試験への組み入れを自主的に停止している。

その後、9月4日にはIonisと共同開発するpelacarsenが、第3相Lp(a)HORIZON試験で主要評価項目を達成しなかったことが発表された。
この試験は2019年12月に開始され、対象はLp(a)が70mg/dL以上の確立した心血管疾患を有する患者8,323例で、主要評価項目は、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、入院を要する緊急冠血行再建術の複合エンドポイントとしていた。
pelacarsenによりLp(a)の低下は達成されたが、それが心血管イベントの減少にはつながらなかった。具体的な数値は開示されておらず、今後の学会で公表するとしている。
https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-announces-lpahorizon-phase-iii-topline-results-pelacarsen-patients-elevated-lpa-and-established-cardiovascular-disease-cvd

この結果の発表後、競合品を開発するAmgen株は時間外取引で約5%、Ionis株は10%下落している。
https://www.cnbc.com/2026/09/08/novartis-cholesterol-setback-drug-race-eli-lilly-amgen.html
そして9月8日、del-desiranが第3相HARBOR試験で主要評価項目を達成しなかった。
del-desiran(delpacibart etedesiran)はAvidity Biosciencesを120億ドルで買収して取得した資産で、これ以外にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)向けのdel-zota(delpacibart zotadirsen)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)向けのdel-brax(delpacibart braxlosiran)がある。
第3相HARBOR試験(NCT06411288)は、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)の患者を対象に、主要評価項目をビデオで測定する手を開く時間(video hand opening time、vHOT)として実施されたがプラセボに対して有意な改善を示せなかった。ノバルティスは具体的なデータを開示しておらず、副次評価項目と探索的解析では臨床活性の兆候が見られたとしており、完全なデータセットを評価したうえで規制当局と開発の道筋を協議するとしている。
https://www.biospace.com/drug-development/novartis-12b-avidity-acquisition-hits-phase-3-speedbump-as-dystrophy-drug-disappoints
https://www.clinicaltrialsarena.com/news/novartis-12bn-avidity-bet-falters-del-desiran-flop/
ノバルティスは買収を発表した際、外部予測としてピーク時の年間売上が最大60億ドルに達しうるとする資料を提示しており、その中でもDM1はAvidity買収で得られる機会の中で最大と位置づけていた。Barclaysは第2相の良好な結果を受けて、ピーク年間売上を31億ドル、成功確率を60%としていた。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/novartis-centerpiece-12b-avidity-buyout-flunks-crucial-phase-3-test

アナリスト達はこの結果を受けて「120億ドルの失望」「重大なパイプラインの後退」「Avidityで得た他の治療薬に対する我々の確信も損なわれた」「技術プラットフォームだけでなく、ノバルティスのディールメイキング戦略そのものへの疑念を生みうる」などと評している。
会社側はガイダンスを維持しており、2025年から2030年まで年平均5%から6%の売上成長という目標に変更はないと説明しているが、さらなるM&Aを行わずに達成することは難しくなる可能性があるという見方もされている。
https://www.biospace.com/drug-development/novartis-12b-avidity-acquisition-hits-phase-3-speedbump-as-dystrophy-drug-disappoints
https://www.biopharmadive.com/news/novartis-rna-drug-failure-dm1-avidity-del-desiran/829778/