売上収益7,200億円、営業利益2,300億円に引き上げ
塩野義製薬は2026年10月29日、2026年5月12日に公表していた2027年3月期(2026年4月1日~2027年3月31日)の連結業績予想を上方修正し、あわせて年間配当予想を引き上げると発表した。配当については同日開催の取締役会で決議している。
修正後の通期予想は、売上収益7,200億円(前回予想7,000億円、+200億円、+2.9%)、営業利益2,300億円(同2,200億円、+100億円、+4.5%)、税引前利益2,205億円(同2,200億円、+5億円、+0.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,125億円(同2,100億円、+25億円、+1.2%)。基本的1株当たり当期利益は246.79円から249.67円となる。売上収益とすべての利益項目を引き上げた形だ。
前期実績(2026年3月期)と比べると、売上収益は4,996億7,700万円から+46.1%、営業利益は1,703億600万円から+35.1%。一方で税引前利益は2,424億9,700万円から△9.1%、当期利益は2,092億4,400万円から+1.6%となる。
配当は、中間配当を従来予想から1株当たり2円増やし、前期比7円増の40円に決定。期末配当は従来予想から8円増の46円とする。年間では前回予想の76.00円に対して86.00円となり、前期実績71.00円(同社は2024年10月1日付で1対3の株式分割を実施)から15円の増配。同社はこれにより15期連続の増配になるとしている。
2025年度からの成長投資が数字に表れた
上方修正の理由として同社が挙げたのは、中間連結会計期間に売上収益とすべての利益項目が業績予想を上回ったこと、そしてその主因が2025年度に実施した一連の成長投資の成果が着実に業績として表れたことである。
参照されている成長投資は4件。2025年5月7日に合意書締結を発表した日本たばこ産業の医薬事業の会社分割およびShionogi Inc.によるAkros Pharma Inc.の株式譲受、同日発表の鳥居薬品に対する公開買付けの開始、2025年12月22日発表の田辺ファーマからのエダラボン事業の買収、2026年1月20日発表のViiV Healthcare Ltd.への追加出資による持分法適用関連会社化である。
具体的な寄与としては、海外事業でALS治療薬RADICAVAに関する事業承継が円滑に進み、希少疾患の事業基盤構築が進展。感染症領域では欧米でのセフィデロコルの販売が順調に推移した。国内事業では不眠症治療薬クービビック、鳥居薬品関連製品、ALS等治療薬ラジカットといったQOL疾患領域の製品が伸長。COVID-19の流行が想定を下回るなかでも、これらの伸長により「感染症の流行に左右されにくい安定的な収益基盤の構築が進んだ」と説明している。
HIV事業では、ヴィーブ社で経口2剤配合剤のDovatoに加え、長時間作用型注射製剤のCabenuvaとApretudeの販売が引き続き好調で、ロイヤリティー収入と持分法投資利益が増加した。通期予想についても、親会社であるGSK社がヴィーブ社の業績予想を引き上げたことに伴い、同社が受領するロイヤリティー収入および持分法投資利益が増加する見通しだとしている。
費用面では、2026年10月5日に発表した米国IntraBio社の完全子会社化に伴う無形資産の償却費、および米国事業の成長に向けた積極投資の継続により、販売費・一般管理費が増加する見込み。研究開発費は開発パイプラインの厳格な優先順位付けにより選択と集中を進める計画とした。
感染症依存からの転換と、次期中計での説明責任
今回の発表で注目されるのは、増収増益の理由として同社が挙げた顔ぶれが、COVID-19関連ではないという点だ。むしろ「COVID-19の流行が想定を下回る中でも」と明記したうえで、クービビック、鳥居薬品関連製品、ラジカットといったQOL疾患領域と、RADICAVAを軸とする希少疾患、そしてHIVのロイヤリティーを収益の柱として並べている。感染症流行という外部要因に業績が振れる構造からの脱却が、予想修正という形で数字に表れた格好である。
希少疾患についても、米国のRADICAVAに続き、IntraBio社の買収により欧州を含めた事業基盤の構築を目指すとした。買収取引完了後には、ニーマン・ピック病C型(NPC)に伴う神経学的症状および毛細血管拡張性運動失調症(A-T)の治療薬AQNEURSAの販売開始を予定している。
還元方針について同社は、DOE 4%以上を目安とした安定的な配当を基本方針としており、成長投資と株主還元の最適なバランスを保つと説明。2025年度からの成長投資の成果が業績に反映され、収益基盤およびキャッシュ創出力が大幅に強化されたことを、増配決定の根拠に挙げた。
ただし、キャピタルアロケーションと株主還元の方針そのものについては、「今後の成長戦略や資本効率、財務規律を踏まえ」たうえで、来年度公表予定の次期中期経営計画で改めて示すとしている。相次ぐ買収で広げた事業領域と、その原資配分をどう筋道立てて説明するか。今回の上方修正と増配は、その前段に置かれた一手ということになる。