上期は売上収益2兆4,070億円、営業利益は+60.4%
武田薬品工業(東証:4502/NYSE:TAK)は2026年10月29日、2026年度上期(2026年4月1日~2026年9月30日)の業績を公表した。売上収益は2兆4,070億円(前年同期2兆2,195億円)で、実勢為替レート(AER)ベースで前年同期比+8.4%。一方、恒常為替レート(CER)ベースでは同△1.0%となった。
財務ベースの営業利益は4,067億円(前年同期2,536億円)でAERベース+60.4%、利益率は11.4%から16.9%へ5.5ポイント改善した。同社はこの増加について、VYVANSE®の無形資産に係る償却期間満了および減損損失の減少を反映したものと説明している。当期利益は3,056億円(同1,124億円)で+171.8%、EPSは193円(同72円)で+169.0%となった。
Coreベース(IFRSに非準拠)では、Core営業利益が7,106億円(同6,392億円)でAERベース+11.2%、CERベース+0.7%。Core EPSは308円(同279円)でAERベース+10.5%、CERベース△1.2%だった。Core営業利益率は29.5%で、前年同期の28.8%から0.7ポイント上昇した。同社はCore営業利益の増加を、成長投資の原資確保にもつながるトランスフォーメーション・プログラムによる節減効果に支えられたものとしている。
キャッシュ・フローは減少した。営業活動によるキャッシュ・フローは4,319億円(同5,937億円)で△27.2%、調整後フリー・キャッシュ・フロー(IFRSに非準拠)は3,257億円(同5,254億円)で△38.0%となった。
通期予想を上方修正、配当は204円を据え置き
同社は主に為替の影響を反映し、2026年5月13日に公表した2026年度の業績予想およびマネジメントガイダンスを上方修正した。売上収益は4兆6,400億円から4兆7,000億円へ、営業利益は4,200億円から4,530億円へ、Core営業利益は1兆1,600億円から1兆1,900億円へ引き上げた。当期利益は1,660億円から2,090億円、EPSは104円から131円、Core EPSは472円から482円となる。調整後フリー・キャッシュ・フローのレンジは6,500~7,500億円から7,000~8,000億円に引き上げられた。1株当たり年間配当金は204円で据え置かれている。
CERベースでのCore増減率を示すマネジメントガイダンスでは、Core売上収益が「一桁台前半%の減少」で当初公表から変更なし。Core営業利益は「5%~8%の減少」から「一桁台半ば%の減少」へ、Core EPSは「10%台半ばの減少」から「10%台前半の減少」へと、いずれも減少幅の見通しが縮小した。
3つの新製品が上市・審査の段階へ
同社は成長戦略の最初の段階である「Horizon1」の優先事項として、3つの新製品の上市成功、後期開発パイプラインの推進、既存主力製品の持続的な安定性の確保、トランスフォーメーション・プログラムの実行を挙げている。上期はこのうち新製品の部分で進展があった。
ナルコレプシータイプ1(NT1)を対象とするORZEYFUL(オベポレクストン)は、米国、日本、中国で製造販売承認を取得。10月15日に日本および中国で成人のNT1患者を対象に上市した。米国では麻薬取締局(DEA)による規制薬物区分の分類手続き完了後、11月初旬に上市予定としている。同剤はオレキシン欠乏に対処するよう設計された、初めての作用機序を有するオレキシン受容体作動薬で、第3相臨床試験結果はNew England Journal of Medicine誌に掲載された。
真性多血症(PV)に伴う赤血球増加症を対象とするMIMRYLO(rusfertide)は、ファーストインクラスのヘプシジン模倣薬として米国FDAの承認を取得し、2026年8月に米国で上市した。承認の根拠となった第3相VERIFY試験では、20~32週目に患者の76.9%が臨床的奏効を達成している。NCCNの骨髄増殖性腫瘍に関するガイドラインで、低リスク・高リスク双方のPVでカテゴリー1として推奨されている唯一の治療薬だという。
3つめのザソシチニブは、中等症から重症の尋常性乾癬の成人患者を対象とするNDAが米国FDAに優先審査として受理され、EMAも販売承認申請(MAA)を受理して審査を開始した。第3相臨床試験では主要評価項目およびすべての主要な副次評価項目でデュークラバシチニブに対する統計学的有意性を示し、皮膚症状の完全消失を達成した患者の割合はデュークラバシチニブの2.5倍超となった。
オンコロジー領域では、ESMOで進行胃がんを対象としたarcotatug tavatecan(TAK-921)の第3相試験結果が発表され、OSおよびPFSで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示された。同社はこの結果が2027年度の日本での承認申請を支持するとしている。ELAHERE®は日本でFRα陽性のプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんの承認を取得した。
増益の中身をどう読むか
今回の数字で目を引くのは、AERベースとCERベースの開きである。売上収益はAERで+8.4%だがCERでは△1.0%、Core EPSもAERで+10.5%、CERでは△1.2%。通期見通しの上方修正も、同社自身が「主に為替の影響を反映」したものと明記している。CERベースのマネジメントガイダンスが依然として減少を見込んでいることと合わせて読めば、事業そのものの局面は転換点の手前にあると整理できる。
その中で、Core営業利益がCERベースでも+0.7%とプラスを確保し、利益率が0.7ポイント上昇した点は注目に値する。同社はこれをトランスフォーメーション・プログラムによる節減効果と説明しており、古田未来乃CFOも「節減効果を活用し、新製品の上市やパイプラインの進展など、将来の成長に向けた投資を進めている」と述べている。コスト削減で原資を作り、新製品に振り向ける構図である。
一方、営業キャッシュ・フローが△27.2%、調整後フリー・キャッシュ・フローが△38.0%と大きく減少している点は、上市局面にある企業の資金の出入りとして押さえておく必要がある。通期の調整後フリー・キャッシュ・フロー見通しは7,000~8,000億円へ引き上げられており、下期での回復を前提とした計画になっている。
ジュリー・キム社長CEOは、ORZEYFULとMIMRYLOの上市、ザソシチニブの優先審査指定と直接比較第3相試験の結果を「2つの成長段階(Horizon)からなる成長戦略における大きな前進」と位置づけた。同社は2026年12月11日にCAPITAL MARKETS DAYの開催を予定しており、成長戦略と中核疾患領域でのリーダーシップ確立の道筋を示すとしている。Horizon1の進捗がHorizon2の数字にどうつながるのか、その説明が12月の焦点になる。