何が発表されたか

バイオジェン(Nasdaq: BIIB、本社マサチューセッツ州ケンブリッジ)は2026年10月28日、2026年第3四半期の決算を発表した。総売上高は28億400万ドルで前年同期の25億3500万ドルから11%増(恒常為替ベースで10%増)、GAAPベースの希薄化後EPSは(0.14)ドル、Non-GAAPベースでは2.62ドルだった。前年同期はGAAP 3.17ドル、Non-GAAP 4.81ドルで、Non-GAAPは46%の減少となる。

GAAPがマイナスに転じた主因は取引関連費用である。第3四半期のGAAP・Non-GAAPいずれにも、RayThera Inc.の買収を中心とする取得仕掛研究開発(IPR&D)・一時金・マイルストン費用2億8400万ドルが含まれる。前年同期の同費用は200万ドルだった。GAAP実効税率が(128.5)%となったのも、RayThera株式取得に伴うIPR&D費用が損金算入できないことによる。Non-GAAP実効税率は20.0%である。

成長製品群(Growth Portfolio)の売上は12億6000万ドルで49%増となり、コア医薬品売上の63%を占めた。製品別では、SPINRAZAが4億6100万ドル(23%増)、LEQEMBIが2億200万ドル(67%増、うち米国市場売上1億700万ドル)、SYFOVREが1億9100万ドル(27%増)、SKYCLARYSが1億7800万ドル(34%増)、ZURZUVAEが8400万ドル(53%増)、EMPAVELIが5200万ドル(92%増)、QALSODYが3800万ドル(42%増)。一方、VUMERITYは1億9200万ドルで11%減となり、会社は米国のフォーミュラリー動向の影響を挙げている。領域別では多発性硬化症が9億1900万ドル(13%減)、希少疾患が6億7600万ドル(27%増)、専門免疫領域が2億4300万ドル、バイオシミラーが1億6600万ドル(16%減)だった。

背景にあるApellis買収

今回の数字を読むうえでの前提は、2026年5月に完了したApellis Pharmaceuticalsの買収である。SYFOVREとEMPAVELIはこの買収で取得した製品で、第3四半期は買収後はじめて丸ごと1四半期分が寄与した。前年同期の比較値はApellisの2025年第3四半期10-Qに基づく。

費用面にも買収の影響が出ている。GAAPの研究開発費は5億7400万ドルで前年同期から32%増加した。felzartamab、salanersen、litifilimabの臨床試験費用の増加に加え、Apellisの営業費用の取り込み、Royalty Pharmaから受け取る研究開発資金の減少が理由として挙げられている。GAAPの販売管理費は7億5200万ドルで26%増。Apellisの商業・管理部門の取り込みと、米国および海外での製品上市を支える販促活動への支出増による。売上原価(無形資産の償却・減損を除く)はGAAPで7億4800万ドル、総売上高比27%で、ReataおよびApellis買収に伴う棚卸資産の時価評価差額の償却増加などが影響した。

財務面では、第3四半期の営業キャッシュフローが約6億4100万ドル、設備投資が約4000万ドルで、フリーキャッシュフローは約6億ドル。2026年9月30日時点で現金・現金同等物は約13億ドル、総有利子負債は約77億ドルで、ネット負債は約64億ドルとなっている。

通期見通しと今後12カ月

通期のNon-GAAP希薄化後EPS見通しは、公表ベースで下限を12.00ドルから12.20ドルへ引き上げ、12.20〜13.00ドルとした。会社は事業の堅調さと、Apellis買収による希薄化が想定より小さいことを理由としている。見通しの内訳は、基礎となるレンジが15.95〜16.75ドル(7月時点は15.85〜16.85ドル、2月時点は15.25〜16.25ドル)、取得IPR&D・一時金・マイルストン費用の影響が約(3.20)ドル、Apellis買収による希薄化が約(0.55)ドルである。通期の総売上高は2025年比で1桁台半ばの伸びを見込み、Non-GAAPの研究開発費と販売管理費の合計は約49億5000万ドルを想定する。為替は2026年10月23日時点のレートが年末まで続く前提である。

パイプラインでは、全身性エリテマトーデスを対象としたlitifilimabの第3相TOPAZ-1およびTOPAZ-2のトップラインデータを2026年12月上半期に公表する予定。さらに皮膚エリテマトーデスのlitifilimabと抗体関連型拒絶反応のfelzartamabが2027年上半期、ドラベ症候群のzorevunersenが2027年第3四半期に第3相の結果を予定している。

意味するもの

今回の決算は、成長製品群がコア医薬品売上の6割超を占めるところまで来たことを数字で示した。多発性硬化症領域が13%減、バイオシミラーが16%減と既存事業の縮小が続くなかで、買収で取得した製品と希少疾患領域がそれを上回って全体を押し上げた構図である。Christopher A. Viehbacher社長兼CEOは「バイオジェンは成長に回帰した」と述べ、今後12カ月に複数の第3相の結果が控えていることに言及した。

同時に、この成長は買収費用と負債を伴っている。GAAP EPSのマイナス、ネット負債約64億ドル、通期見通しにおける約(3.20)ドルのIPR&D影響は、いずれも事業開発を積み重ねた結果が損益に表れたものだ。基礎となるEPSレンジの下限が7月から10月にかけて15.85ドルから15.95ドルへ切り上がった一方、上限は16.85ドルから16.75ドルへ下がっており、公表ベースでの引き上げが下限に限られた点も含め、収益の振れ幅は今後の第3相データと統合の進捗に左右されることになる。