何が発表されたか

GSK plc(LSE/NYSE: GSK)は2026年10月23日、ロンドン発で、B7-H4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)mocertatug rezetecan(Mo-Rez、開発コードGSK5733584)について、グローバル第I相試験「BEHOLD-1」の更新データを公表した。対象はプラチナ抵抗性卵巣がん(PROC)で、13カ月超の追跡時点の結果である。同社は米証券取引委員会(SEC)にForm 6-K(Commission File Number 001-15170)として提出している。

数字は以下のとおり。第III相で採用した用量5.8mg/kgにおいて、確定奏効率(cORR)は62%(n=28/45、95%信頼区間46.5〜76.2%)。奏効期間(DoR)の中央値は12.2カ月(95%CI 7.0〜12.7)、無増悪生存期間(PFS)の中央値は11.1カ月(95%CI 8.3〜13.9)だった。これらのデータは、スペイン・マドリードで開かれる欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026のレイトブレイキング口演セッションで発表される。

安全性は既報と整合的とされる。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は71%(n=32/45)に認められ、主に血液学的なものだった。選択された第III相用量では、TRAEによる治療中止は2%(n=1/45)、間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は2%(n=1/45)。データカットオフ時点でBEHOLD-1に登録されたPROC患者は計136例で、PROCで最も多かった有害事象は消化器系および血液系。TRAEによる投与中断は51%、減量は47%の患者で生じた。主要評価項目は、第Ia相が用量制限毒性の発現率、第Ib相が治験医師判定・RECIST 1.1によるcORRである。

経緯と薬剤の中身

BEHOLD-1は二部構成の非盲検第I相試験で、PROCまたは進行・再発子宮体がん(EC)を対象にMo-Rez注射剤の安全性・忍容性・有効性を評価する。第Ia相では進行固形がん患者で最大4用量を3週ごと静脈内投与し、第Ib相の用量拡大では、PROCは3用量、ECは2用量に無作為割り付けされた(前治療1〜3ライン)。PROCでの初回データは2026年4月のSGO年次会議で発表されており、今回はその延長線上の長期追跡結果にあたる。選択された第III相用量で治療されたEC患者は追跡が継続中で、データは将来発表される予定とされる。

Mo-Rezは、完全ヒト抗B7-H4モノクローナル抗体にトポイソメラーゼ阻害剤ペイロードを共有結合させたADCで、薬物抗体比(DAR)は6。GSKはHansoh Pharmaから、中国本土・香港・マカオ・台湾を除く全世界での独占的権利を取得している。B7-H4は免疫チェックポイントで、婦人科がんで広く発現する一方、正常組織での発現は低いと説明されている。

5本の第III相と、この領域の意味

GSKは婦人科がん領域で第III相開発を加速し、現在5本の主要試験が進行中だとしている。内訳は、プラチナ抵抗性卵巣がんのBEHOLD-Ovarian01(NCT07286266)、プラチナ感受性卵巣がんのBEHOLD-Ovarian02(NCT07684612)、相同組換え修復欠損のない卵巣がんの一次維持療法を対象とするBEHOLD-Ovarian03(NCT07694427)、二次治療としての進行・再発子宮体がんを対象とするBEHOLD-Endometrial01(NCT07286331)、ミスマッチ修復機能が保たれた子宮体がんの一次維持療法を対象とするBEHOLD-Endometrial02(NCT07684599)。BEHOLD計画にはこのほか単剤のBEHOLD-1(NCT06431594)と併用のBEHOLD-2(NCT06796907)が含まれる。ESMOではBEHOLD-1のバイオマーカー探索解析(B7-H4発現レベルの幅広い範囲で奏効が観察された)と、第III相2試験の試験デザインも発表される。

R&Dオンコロジー責任者のHesham Abdullah氏は「プラチナ抵抗性卵巣がんの治療選択肢は限られ、持続的な奏効を得ることは依然として難しい」としたうえで、奏効と持続性が多くの患者で維持され、管理可能な安全性プロファイルを伴っていると述べた。治験責任医師のVanda Salutari氏(ローマ・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCS)も、この領域で長期の病勢コントロールが難しいことを踏まえ、DoRとPFSは「特に励みになる」とコメントしている。

解釈として言えるのは二点だ。第一に、第Ib相の段階で5.8mg/kgという第III相用量が固まり、単剤から併用、後治療から一次維持療法まで同時に5本の第III相を走らせる設計になっていること。これは、バイオマーカーで患者を絞り込むより、B7-H4発現の幅を許容して適応を広く取りにいく開発戦略を示している。第二に、この資産が中国企業Hansoh Pharmaからの導入品であり、GSKが中国本土・香港・マカオ・台湾を除く地域の権利を持つ点である。卵巣がんは843,000人が罹患し、年間240,000人が新たに診断されるとされ、70%が進行期で見つかる。プラチナ抵抗性に至った患者の選択肢が限られるという前提は、資料自身が繰り返し強調するところであり、第III相の読み出しがこの前提をどこまで変えるかが次の焦点になる。