事実:減収と営業損失、通期予想の達成を目指す
JCRファーマ株式会社(証券コード4552)は2026年10月29日、2027年3月期第2四半期の決算説明会資料を公表した。
第2四半期累計の売上高は19,974百万円で、前年同期(2026年3月期Q2累計)の21,362百万円から減少した。年間進捗率は43.7%。販売費及び一般管理費は17,726百万円(前年同期14,659百万円)で、年間進捗率は52.2%。このうち研究開発費は10,230百万円(同7,835百万円)、進捗率は52.7%となっている。営業損益は3,504百万円の損失で、前年同期は2,429百万円の利益だった。資料によれば営業利益の年間計画は1,100である。
減収の要因として会社側が挙げているのは契約金収入である。資料では、契約金収入を除く売上高について、グロウジェクト®の年間進捗率がやや低いものの、イズカーゴ®が好調に推移し、全体では計画通りに進捗しているとしている。契約金収入はQ2での計上がなく年間進捗率が低いが、Q3以降の計上により通期予想の達成を目指すとした。
販管費は主に開発費の増加により前年同期比で大幅増となった。研究開発費は進捗率が高く通期予想を上回る可能性があるものの、販管費全体では計画に近づけるよう努めるとしている。
なお資料の数字は百万円未満切り捨て、パーセンテージは任意の位で四捨五入して表示されており、合計に差異が生じる場合があるとの注記がある。
背景:3つの収益の柱と、進行中の個別案件
説明会資料で代表取締役会長の芦田透氏は、2030年代に売上高1,000億円企業となることを掲げ、その実現に向けた3つの成長ドライバーを示している。すなわち、国内製品の販売拡大と導入品の積み上げによる「国内売上(導入品を含む)」、プラットフォーム技術の導出によるライセンス収入拡大を指す「技術ライセンス収入」、そしてLSD(ライソゾーム病)パイプラインの導出による海外からの収益拡大を指す「海外収益」である。
個別案件では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象とするHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤givinostatの導入が示された。givinostatは既存の治療薬とは異なる作用機序を持ち、患者の遺伝子変異に依存せず使用可能で、プラセボ対照の第III相試験で主要評価項目を達成し、海外の複数国ですでに承認済みだが、日本ではドラッグラグが生じているとされる。資料の時系列では、2024年3月に米国承認、同6月にEU承認(条件付)、2025年12月にItalfarmaco社から導入し国内開発をスタート、2026年9月に希少疾病用医薬品指定(優先審査対象)とある。2026年内に製造販売承認申請、2027年内に承認・販売を予定し、海外の臨床データを基に申請する計画で順調に進捗しているという。2026年10月には、歩行可能10名・歩行不能10名の組入れを予定する20名のDMD患者を対象とした国内臨床試験を開始した。
技術導出では、血液脳関門通過技術J-Brain Cargo®の抗体医薬品への応用が進む。2025年7月に米国Acumen社とオプション権付のライセンス契約を締結し、全世界での開発・製造・販売に関する独占的オプション権を付与、最大5億5,500万米ドルのマイルストーンフィーを受領する内容である。AβO(アミロイドベータオリゴマー)選択的抗体にJ-Brain Cargo®を適用した血液脳関門通過型アルツハイマー病治療薬を開発中で、2026年6月にAcumen社がオプション権を行使、2027年中ごろにIND申請を予定する。
海外展開では、J-Brain Cargo®を適用したムコ多糖症II型治療酵素製剤イズカーゴ®(開発番号JR-141)が、Taiba Middle East FZ LLCとの販売委託契約に基づき、2026年7月にアラブ首長国連邦、同10月にクウェート(条件付承認)で製造販売承認を取得した。今後もMENA(中東・北アフリカ)地域の各国で承認を取得し、Taiba社が販売を行う予定としている。イズカーゴ®は2021年に日本国内で製造販売承認を取得し販売を開始している。
意味:費用先行の局面、評価軸は下期の収入計上
今回の数字が示すのは、売上高の進捗率43.7%に対し、販管費52.2%、研究開発費52.7%という費用先行の構図である。会社側の説明に沿えば、損失は事業の縮小ではなく、契約金収入の計上タイミングと開発投資の積み増しという二つの要因が同じ半期に重なった結果ということになる。したがって通期の評価は、Q3以降に契約金収入が計画どおり計上されるかどうかに大きく左右される。
同時に、この半期に示された個別案件は、会社が掲げる3つの柱それぞれに対応している。givinostatは導入品による国内売上、Acumen社案件は技術ライセンス収入、イズカーゴ®の中東承認は国内承認を活用した海外収益にあたる。givinostatについて会社は、海外での適用対象を踏まえ「歩行可能な6歳以上の患者」が国内1,000人以上、治療コスト5,000万円/年(海外の治療コストを参考に算出した自社調べ)とし、対象患者の70%が使用すると想定した場合の売上高を約350億円と算出している。これはあくまで同社の前提に基づく試算値だが、2030年代1,000億円という目標に対し、導入品一つが占めうる規模感を示す数字として提示された形だ。
研究開発費が通期予想を上回る可能性に自ら言及しつつ、販管費全体では計画に近づけるとした点は、投資と収益計上のバランスをどこで取るかという課題が社内で意識されていることを示している。下期は、申請・承認・ライセンスという非連続なイベントが収益にどう反映されるかが見どころとなる。