何が起きたか
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、2026年10月22日~23日に東京都内で開催された「Asia Pacific Societies for Extracellular Vesicles 2026/第13回日本細胞外小胞学会学術集会(APSEV2026/JSEV2026)」において、沖縄の微細藻類「パブロバ」由来のエクソソーム様ナノベシクル(藻類由来フィトエクソソーム)に関する研究成果をポスター発表し、JSEV奨励賞を受賞した。同社が2026年10月28日に発表した。
発表タイトルは「Development of Sustainable Pavlova-Derived Exosome-Like Nanovesicles and Evaluation of Their Effects on Skin Aging(持続可能なパブロバ由来エクソソーム様ナノベシクルの開発と皮膚老化への影響の評価)」。発表者は髙木康平氏、木村駿氏、廣瀬望氏、林裕也氏(いずれもロート製薬)で、当日の発表は髙木氏が行った。
学会は、JPタワー ホール&カンファレンス(東京)を会場に、大会長を落谷孝広氏(JSEV理事長・東京医科大学特任教授)が務め、アジア太平洋地域の細胞外小胞研究者らが集う「APSEV2026」と「JSEV2026」が同時開催された。細胞外小胞に関する基礎研究から応用まで、幅広い成果が発表・議論されたという。
研究の中身
発表された研究は、沖縄の地域資源から得られるエクソソーム様ナノベシクルに着目し、新たなスキンケア素材としての可能性を探る取り組みである。
対象となった微細藻類「パブロバ」は沖縄に生息し、DHAやEPAなど健康に有用な成分を豊富に含むことで知られる。ロート製薬は今回、このパブロバが持つ新たな可能性に着目し、その培養上清からエクソソーム様ナノベシクルを精製することに成功した。
そのうえで、得られたパブロバ由来のエクソソーム様ナノベシクルについて、脂質組成や粒子の安定性などの特性を評価。さらに皮膚に対する機能性を評価した結果、皮膚細胞に取り込まれることに加え、表皮のバリア形成の促進、炎症の抑制、真皮細胞における細胞老化指標の改善が確認されたとしている。
これらの結果から同社は、パブロバ由来のエクソソーム様ナノベシクルが、肌の健やかさを保ち、加齢に伴う肌悩みにアプローチする新たな素材としての可能性を持つと位置づけている。
「フィトエクソソーム」という枠組み
今回の発表で使われている「藻類由来フィトエクソソーム」とは、藻類パブロバギランス由来の細胞外小胞、すなわち細胞が放出する微小な膜の小胞を指す。ロート製薬は、植物や微生物、藻類由来の細胞外小胞に着目した「フィトエクソソーム」研究を進めていると説明しており、今回のパブロバ研究はその一環にあたる。
細胞外小胞そのものは、APSEV2026/JSEV2026でも基礎から応用まで幅広く議論されたテーマである。その学術集会の場で、化粧品・スキンケア素材としての応用を見据えた企業発表が奨励賞の対象となった点は、研究領域の裾野を示すものといえる。
業界にとっての意味
今回のリリースから読み取れるポイントは三つある。
第一に、原料の出どころである。ヒト細胞や動物由来ではなく、微細藻類の培養上清という供給源を選んでいる点は、発表タイトルに「Sustainable(持続可能な)」という語が入っていることと符合する。培養上清から精製できるのであれば、原料確保の考え方は、採取に依存する素材とは異なる設計になる。
第二に、評価の組み立て方である。脂質組成や粒子の安定性といった素材そのものの特性評価と、皮膚細胞への取り込み、バリア形成促進、炎症抑制、細胞老化指標の改善という機能評価が、同じ発表のなかに並んでいる。素材を「作れた」だけでなく「どう働くか」まで示す構成は、学会発表を通じた素材開発の進め方として一つの型を示している。
第三に、地域資源との結びつきである。沖縄に生息する藻類という地域資源に着目した取り組みであると同社は明記しており、素材開発が特定地域の生物資源と紐づく形になっている。
なお、今回の発表内容は学術集会でのポスター発表と受賞に関するものであり、製品化の時期や具体的な商品については、今回の資料には記載されていない。