決算の事実
アストラゼネカは2026年10月30日、2026年1〜9月(9M 2026)および第3四半期(Q3 2026)の業績を公表した。9カ月累計の総収益(Total Revenue)は468億8,100万ドルで、実績ベースで前年同期比8%増、固定為替レート(CER)ベースで7%増となった。第3四半期単独の総収益は162億900万ドルで、実績・CERともに7%増である。
内訳を見ると、9カ月累計の製品売上(Product Sales)は439億6,200万ドルで実績7%増・CER5%増。アライアンス収益(Alliance Revenue)は28億600万ドルで実績33%増・CER32%増と、製品売上を大きく上回る伸びを示した。製品売上とアライアンス収益を合わせた製品収益(Product Revenue)は467億6,800万ドル、実績8%増・CER6%増。コラボレーション収益(Collaboration Revenue)は1億1,300万ドルで実績22%増・CER23%増だった。第3四半期単独では、製品売上150億6,600万ドル(実績・CERともに5%増)、アライアンス収益11億700万ドル(同36%増)、コラボレーション収益3,600万ドル(実績・CERともに3倍超)となっている。
利益面では、9カ月累計の報告ベースEPSが5.62ドルで実績10%増・CER11%増、コアEPSは8.00ドルで実績・CERともに14%増。第3四半期単独の報告ベースEPSは2.02ドルで実績23%増・CER26%増、コアEPSは2.79ドルで実績17%増・CER19%増だった。コア営業利益とコアEPSは、9カ月累計でいずれも14%増(CER)と開示されている。
通期ガイダンスは再確認された。2026年通期の総収益はCERベースで「mid-to-high single-digit(中〜高一桁)パーセント」の増加、コアEPSは「low double-digit(低い二桁)パーセント」の増加、コア税率は18〜22%の見通しとされる。2025年を通じた平均為替レートを前提としたもので、2026年10〜12月の為替が2026年9月の平均レートで推移した場合、通期総収益はCERベースの実績に対して低一桁パーセントのプラス影響を受け(従来見通しから変更なし)、コアEPSの成長率はCERベースの成長率とおおむね同程度(同じく変更なし)になると見込んでいる。
成長の中身と、それまでの経緯
9カ月累計の業績について同社は、オンコロジー、R&I(呼吸器・免疫)、希少疾患の各領域が二桁成長し、これがFarxiga(フォシーガ)とBrilinta(ブリリンタ)の独占販売期間満了(loss of exclusivity)および中国における数量ベース調達(volume-based procurement)という逆風を相殺した、と説明している。つまり、総収益7%増(CER)という数字は、特許切れと中国の薬価政策という二つのマイナス要因を抱えたうえでの伸びということになる。
パイプラインと承認の動きも開示された。2025年第4四半期決算の発表以降、主要地域で47件の承認を取得。このうち4つの新薬(Etcamah、Baxfendy、Klygefa、Amlypave)については初回承認となった。また、3つの新規有効成分(NME)——tozorakimab、efzimfotase alfa、sonesitatug vedotin——について初のフェーズIIIデータが報告されている。
パスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は、9カ月間で総収益が7%、コアEPSが14%伸びたことを「多様な治療領域とグローバルな展開に支えられた強い商業モメンタム」と総括。そのうえで、4つの新薬の承認と12件のフェーズIII試験の良好な結果(positive Phase III programme readouts)に言及し、これら12件が合計で「ピーク時年間売上100億ドルを優に超える」潜在力を持つとした。さらに2027年に予定されている一連の試験結果については「200億ドル超の潜在力がある」と述べ、後期開発段階の複数のブロックバスター候補と急速にスケールする技術により「2030年の目標達成と次の10年にわたる成長の持続は軌道に乗っている」とコメントしている。
業界にとっての意味
今回の開示で注目すべきは、収益の伸びよりも利益の伸びが大きいという構図である。9カ月累計で総収益がCERベース7%増であるのに対し、コア営業利益とコアEPSはともに14%増。通期ガイダンスでも総収益が中〜高一桁増に対しコアEPSは低二桁増と、同じ関係が維持されている。収益の伸びを上回るペースで利益が拡大する形がガイダンス段階から織り込まれていることになる。
もう一点は、アライアンス収益の存在感だ。9カ月累計で32%増(CER)、第3四半期単独でも36%増と、製品売上(それぞれ5%増)を大きく上回る。金額としては28億600万ドルと製品売上の439億6,200万ドルに比べれば小さいが、伸び率の差は収益構成の変化を示す数字として読める。
特許切れと中国の調達制度という既存製品側の逆風が明示されている一方で、同社はフェーズIIIの読み出しと新薬承認を成長の柱として前面に出している。12件の良好なフェーズIII結果で100億ドル超、2027年の読み出しで200億ドル超という規模感は、同社自身がピーク時年間売上の潜在力として示した数字である。既存品の減少分をどの程度のスピードで新規品が埋められるかという、製薬企業に共通する課題への同社の回答が、今回の数字と見通しに表れている。