何を発表するのか

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は2026年10月30日、2026年11月16日から19日まで米国ボストンおよびオンラインで開催される第19回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)で、アルツハイマー病(AD)に関する新たな研究成果を発表すると発表した。

発表の中心は、同社が創製した抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブである。内訳は、Clarity AD試験における5年間の投与から得られた新たな知見、米国の多様な診療環境における実臨床のLEADER研究のデータ、安全性・バイオマーカー・AD関連の併存病理に関する研究成果。CTAD 2026での発表は、LEADER研究に関するシンポジウム1件、口頭発表5演題、ポスター発表19演題を予定する。

主要な口頭発表は、Clarity AD試験のコア試験と長期継続試験(LTE)を含む5年間投与の結果(演題名「早期ADにおけるレカネマブの長期アウトカム:Clarity AD試験長期継続投与における60カ月までの第一報」、OC6、11月16日午後6時00分~6時15分・米国東部時間)。リリースは、この結果がADに対して承認された抗アミロイド療法として「これまでに報告された最長期間の追跡データの一つとなる」としている。

このほかの口頭発表では、複数国の実臨床におけるARIA発現率と安全性プロファイルのメタ解析(OC13、11月17日)、α-シヌクレイン併存病理がレカネマブ治療に与える影響を調べたClarity AD試験の脳脊髄液サブスタディ(OC50、11月19日)を取り上げる。プレクリニカルADでは、AHEAD国際スクリーニングコホートにおける血漿p-tau217、Aβ、タウPETの性差(OC10)、AHEAD 3-45試験スクリーニングコホートの海馬容積と認知機能(OC36)を発表する。

実臨床データの比重

エーザイ主催のシンポジウム(11月18日午前11時~11時40分・米国東部時間)は「承認から3年後のレカネマブ」と題し、米国の多様な医療機関での早期ADに対する使用実態を検討した多施設共同リアルワールド・レトロスペクティブ(LEADER)研究の新たな解析結果を紹介する。内容は、初期療法から維持療法までの使用実態と治療成績、性別による治療成績、在宅皮下投与の3点である。

ポスター19演題のうち、レカネマブ関連は14演題を占める。継続投与とアミロイドプラーク除去までの期間限定投与を比較したレカネマブとドナネマブの横断的マッチング解析(P001)、10年間の治療による中等度への進行遅延の可能性を扱う予測解析(P002)、皮下注射と静脈内投与の時間削減と当事者様の選好(P149)、日本における製造販売後観察研究の最新結果(P153)、投与中止後のバイオマーカー効果の持続性推定(P319)などが並ぶ。ニューイングランドADセンター、コロラド州の神経内科クリニック、老年医学診療といった個別の施設・診療場面でのレトロスペクティブ症例集積研究も複数含まれる。バイオマーカー関連では、血液バイオマーカーが抗アミロイド療法開始までの期間に及ぼす影響(P248)、血液バイオマーカー検査の臨床導入に関する12カ国調査(P294)がある。

チーフクリニカルオフィサーのLynn Kramer, M.D.は「長期的な治療成績から実臨床での経験、診断や治療の提供に関する新たな知見に至るまで、これらの研究成果は、当事者様、ご家族、医療関係者の皆様にとって意義ある進歩に向けた当社の取り組みを示しています」とコメントしている。

承認の広がりと今回の位置づけ

レカネマブ(製品名「レケンビ」)は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、53の国と地域で承認を取得し、6カ国で申請中。18カ月間の隔週投与による初期治療後の4週に1回の静注維持投与は、米国、中国、英国等、9の国と地域で承認、11の国と地域で申請中である。皮下注射製剤は、米国で2025年8月に維持療法(360mg)の「LEQEMBI IQLIK」が承認され、初期療法(500mg)は2026年7月に米国、同年9月に中国と日本で承認を取得、4カ国で申請中となっている。

こうした経緯を踏まえると、今回のCTADでの発表構成は、承認取得の段階から、実際に使われた後の成績を示す段階へと重心が移っていることを示している。Clarity AD試験のLTEによる60カ月までのデータは、承認時の18カ月のコア試験データの延長線上で長期の治療成績を問うものであり、LEADER研究や各施設の症例集積研究、日本の製造販売後観察研究は、治験と異なる診療環境での有効性・安全性・治療継続状況を扱う。皮下投与に関する演題がシンポジウムとポスターの双方に置かれている点も、投与経路の選択肢が増えた直後の時期と対応している。

レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行う。バイオアークティックとは2005年以来の協力関係があり、エーザイは2007年12月のライセンス契約で全世界におけるADを対象とした権利を取得している。