何が発表されたか

HUYABIO Internationalは2026年10月23日(マドリード/サンディエゴ発)、切除不能または転移性の悪性黒色腫(メラノーマ)を対象としたグローバル第3相試験で、経口剤HBI-8000と静注ニボルマブの併用が、ニボルマブ単独(+プラセボ)に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意かつ臨床的に意味のある水準で改善したと発表した。病勢進行または死亡のリスクは27%低減した。

データは同日、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)Congress 2026のProffered Paperセッション(10月23日金曜 16:15–17:45 CET、バルセロナ・オーディトリアム Hall 9)で、H Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute皮膚腫瘍科のNikhil I. Khushalani医師により口頭発表された。演題番号はLBA54「Primary Analysis of HBI-8000-303: A Randomized Phase 3 Trial of Nivolumab plus HBI-8000 or Placebo in Advanced Melanoma」。

数字で見る結果

試験(HBI-8000-303、NCT04674683)は15カ国404例が参加した多施設共同・無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験。ITT集団における判定では、HBI-8000+ニボルマブ群の全生存期間中央値ならぬPFS中央値は11.7カ月(95%CI:7.3–21.1)、ニボルマブ+プラセボ群は7.4カ月(95%CI:4.5–10.1)だった。ハザード比は0.73(96%CI:0.56–0.95、p=0.014)で、リスク低減率27%に相当する。PFSの結果は、あらかじめ規定されたサブグループの大半で併用群に有利だった。全生存期間(OS)のデータは未成熟で、追跡は継続中である。

安全性については、併用に伴う有害事象は各薬剤の既知のプロファイルと一致した。Grade 3・4の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、HBI-8000+ニボルマブ群で54.8%、ニボルマブ+プラセボ群で17.9%。主な有害事象は下痢、悪心、血球減少、倦怠感で、TRAEは概ね管理可能とされ、併用群で高い発現率はHDAC阻害のクラス効果と整合的だと説明されている。HBI-8000の減量を要した患者は38%。一方、不可逆的になりやすく二重チェックポイント阻害で発現率が高いとされる副腎不全と下垂体炎について、増加は認められなかった。

これまでの経緯

HBI-8000(tucidinostat/chidamide)は、経口のクラスI選択的ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤。エピジェネティックな修飾を通じて抗腫瘍活性を示すとともに、免疫学的に「コールド」な腫瘍微小環境を「ホット」に変え、抗PD-1抗体などチェックポイント阻害剤への反応性を高める作用機序を持つとされる。

同剤はすでに、中国ではEpidaza®、日本ではHIYASTA®としてT細胞リンパ腫の単剤療法で承認されているほか、中国・台湾では乳がんでアロマターゼ阻害剤との併用、中国ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でR-CHOPとの併用が承認されている。これまでに他がん腫で11万2000例を超える患者に処方されており、今回の試験で得られた安全性プロファイルはその経験と一致すると説明されている。

今回の第3相試験はすでに登録を完了しており、トップラインの結果は2026年7月に公表されていた。今回のESMOでの発表は、その主要解析の詳細にあたる。

業界にとっての意味

ポイントは、本併用が二重免疫チェックポイント阻害に依拠しない一次治療の選択肢になりうる点にある。HUYABIOは、承認されれば進行期メラノーマにおける新たなフロントライン併用療法となりうるとしている。週2回の経口薬と静注抗PD-1抗体という組み合わせは、重複毒性が問題となりうる二重チェックポイント阻害と比べ、免疫関連有害反応のリスクを抑えられる可能性がある。実際、Grade 3・4のTRAEは併用群で高かったものの、副腎不全・下垂体炎の増加は見られなかった。効果と忍容性のトレードオフをどう評価するかが、今後の議論の軸になる。

開発企業としての次の一手も示された。HUYABIOは新データを米食品医薬品局(FDA)と共有する計画で、世界の患者に届けるために商業パートナー候補との協議も進める意向だという。第3相の全結果をまとめた論文は査読に向け投稿中である。HUYABIOは中国発の医薬品シーズを国際市場で開発することを掲げ、米国・日本・欧州・中国に拠点を持つ。中国と日本ですでに承認実績のある経口HDAC阻害剤が、グローバルの固形がん領域へ適応を広げられるかどうかが焦点となる。